【これから『薬』の話をしよう】機能性表示食品と薬剤師の役割

2024年6月15日 (土)

薬学生新聞

医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 医薬品と食品は、法律上の定義に違いはあっても、両者を区別する厳密な境界線が存在するわけではありません。私たちの食卓になくてはならない食塩(塩化ナトリウム)でさえ、医薬品として使用されることがあります。

 生活習慣を是正することで健康状態を管理できるという考え方が普及した現代社会において、食品に求められる機能性は、栄養素の補給や味覚の享受だけでなく、健康の維持や増進にまで広がっています。その意味でも、医薬品と食品の間に明確な境界線が存在しないと言えるかもしれません。

 このような健康意識の高まりを受け、2015年4月より機能性表示食品制度が開始されました。機能性表示食品とは、「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収を抑える」など、健康状態に対する機能性を表示した食品群です。

 同制度において、食品の製造販売を行う事業者は、機能性を裏付けるエビデンス(科学的根拠)を消費者庁に届け出ることで、食品パッケージに機能性を表示できるようになりました。エビデンスと言っても、既存の研究報告を網羅的に評価したシステマティックレビュー(SR)の結果を添付すればよく、新規にランダム化比較試験を実施する必要はありません。

 機能性表示食品の市場規模は急速に拡大し、24年5月時点の届け出件数は8000を超えています。一方、届け出に添付されたSRの質は必ずしも高いとは言えません。機能性表示食品の届け出に関する40件のSRを評価した研究(PMID:37432186)によれば、信頼性の高いSRは皆無でした。SRの質が著しく低下した原因として、網羅的な論文検索が行われていないことや、バイアスに対する評価を適切に反映していないことがあげられています。

 24年3月、紅麹を原料に含む機能性表示食品を摂取した人が、腎障害を発症したと報道されました。5月上旬時点で、同食品と腎障害の因果関係については明らかにされていません。しかし、機能性を裏付けるエビデンスの脆弱性が指摘されている以上、機能性表示食品制度の仕組みには、改善すべき問題点が多々存在するように思います。

 そのような中で薬剤師は、機能性表示食品を含む健康食品やサプリメントの安全性および有効性を適切に評価し、消費者が食品の機能性を安全に享受できるよう、様々な情報支援を行う役割を担っていると私は考えます。



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