薬剤師国家試験では、物理、衛生、薬剤、実務を中心に多くの計算問題が出題されます。直近3年間の回数別の計算問題出題数は、107回国試26題、108回国試25題、109回国試22題（うち問330は採点除外）です。109回では若干減少しましたが、毎年20題以上が出題されています。
計算問題の平均正答率は、107回国試56.1％、108回国試67.0％、109回国試53.8％と3年間の比較でも109回はやや難易度が高いことが伺えます。ただし、下のグラフに示す通り、正答率60％以上の比較的得点しやすい問題も含まれているため、110回国試に向け勉強を始める方は、まずは既出問題で正答率60％以上の問題から解けるようにしていきましょう。
109回国試の科目別計算問題の傾向
計算問題を克服するためには、既出問題を暗記して解くだけでなく、式や問題の内容を理解しながら学修しましょう。特に計算問題の出題が多い物理、薬剤、実務について、薬ゼミの科目責任者が109回国試の具体的な出題について解説します（各問題の解答番号は問327解説の最後に記載）。110回国試に向けて、早い段階で計算問題を解くためのポイントを確認してみてください。
物理
109回国試 問5（参考正答率56.5％）
物理の計算問題を頻出範囲と新傾向の範囲に分類して紹介します。頻出範囲としては、「束一的性質」「酸と塩基」「反応速度」が挙げられ、この範囲の演習を行う際は、解法の三つのプロセスとして、[1]使う公式を思い出す[2]指数対数の計算[3]単位変換――を意識してみてください。
新傾向の範囲では、[1]問題文から求められるものが何かを見つける[2]必要な情報を抜き出す[3]計算する――という力が必要となります。これらのステップを意識して、既出問題集や模擬試験などを活用して演習を繰り返し、自力で解説の再現ができることを目標に学修してみましょう。
薬剤
109回国試 問172（参考正答率63.0％）
薬剤では主に、線形1－コンパートメントモデル、投与計画、腎クリアランス、溶解速度、粒子粉体に関する計算問題が出題されます。例年、1～2題ほど難易度の高い出題がありますが、他は難易度が平易から中等の出題であり、既出問題と同様の式で解答が可能です。
本設問は既出問題で頻出の腎クリアランスの式を用いて解答します。ただし、問われているパラメーターは血漿タンパク非結合率であるため、与えられた糸球体ろ過速度（GFR）というパラメーターより、腎クリアランスの式を活用できると判断し、解答する必要があります。このように、既出問題で活用した式を把握しておくことが重要となります。既出問題を繰り返し解くことで様々なパターンに慣れましょう。
また、範囲としては投与計画が例年複数題出題されるため、薬剤の計算対策として優先して取り組みましょう。
実務
109回国試 問327（参考正答率61.1％）
実務では主に、散剤、液剤、消毒薬、注射剤、輸液に関する計算問題が出題されます。例年、難易度は平易から中等であり、ほとんどは既出問題の解法を応用することで解答が可能です。
本設問も第100回国試（問329）に出題された浸透圧の計算の類題ですが、浸透圧計算は他の計算問題に比べて出題頻度が低く、受験生の学修頻度に影響したためか、正答率は約60％に留まりました。
ただし、本設問を考えるにあたり、5％ブドウ糖注射液の浸透圧が血漿の浸透圧とほぼ等しいこと（浸透圧比：約1）と、浸透圧が溶液の濃度に比例することが理解できていれば、50％ブドウ糖注射液の浸透圧比は約10であることが分かります。計算手法を覚えるだけではなく、本質を理解することも近年の国試において非常に重要です。
解答番号（問5＝2、問172＝4、問327＝4）
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