【日本薬学生連盟】野草茶の開発や販売に注力‐なかよし薬局代表 中山智津子さんに聞く

2024年6月15日 (土)

薬学生新聞

中山智津子さん

中山さん提供

 日本薬学生連盟広報部は、大学院在学中から薬局の経営に関わり、野草茶の開発や販売などを手がける岡山市の薬剤師、中山智津子さん(なかよし薬局代表)にお話を伺いました。塚本有咲(大阪医科薬科大学薬学部3年生)、萩原希光(北里大学薬学部3年生)、佐藤匠真(日本薬科大学3年生)、古賀庸倫(帝京大学薬学部5年生)、伊藤恵一(城西国際大学薬学部5年生)が聞き手となり、自身の体験談や考え方について語っていただきました。(原稿は東京薬科大学薬学部2年生の庄司春菜が執筆しました)

異なる分野の専門家が協力‐健康食品活用し処方薬削減

 ――中山さんは自身の薬局で、処方箋の調剤だけでなく、野草や漢方薬、アロマの相談や販売に力を入れておられます。それぞれ異なる分野を専門とする薬剤師の方々と一緒に働く体制を作っていますが、どのようなことを感じますか。

 猟師をしている漢方に詳しい薬剤師さんがやっていることを見聞きして学んだり、漢方セミナーに一緒に参加して勉強したりしました。成果として、一人ひとりに適した漢方薬を選ぶことができるようになりました。野草は漢方薬の中にもたくさん使われており、野草と漢方のつながりなども合わせて学ぶことができています。

 アロマ専門の薬剤師さんは森の中の植物について非常に詳しく、私も共に学んでいます。個人の求める効能や好みの香りに合わせたブレンドのアロマオイルを調合して販売することもできています。自然の力に頼って身体を良くしていく方法を論文や薬学を基にして作り上げていくことは、異なる分野を専門とするこの3人だからこそ、より説得力を持ったものができあがるのではないかと期待しています。

 ――中山さんは処方薬の削減も重視されていますが、その活動において、これからどうしていこうと考えていますか。

 患者様の薬の処方を減らすために、まずは薬局に置いた身体に良い食べ物を買ってもらい、徐々に症状を良くしていってもらおうと考えました。しかし困難であったことは、ほとんどの75歳以上の方々の医療費の自己負担割合は1割負担であり、通常の医療で対応した方が負担は小さいため、薬局で健康食品などを買ってもらえないことです。患者さん側の意見として、症状に対して効果が高いのは薬であるのに、なぜ食品を薬よりも高い値段で購入しなければならないのかということが挙げられます。また、サプリメントや健康食品などを摂取することで健康になるという考え方に否定的な医師が非常に多いことも挙げられます。その結果、それらは身体に良くないものだと思われてしまったり、怪しいものだと捉えられてしまったりすることもありました。

 このことを受け、セミナーを開催するようになりましたが、若い方々は自分の家族のために勉強しようと来てくださる一方で、高齢者の方々の参加が少ないという懸念点がありました。本当に話を聞いてもらいたい人に、こちら側の意図を伝えるのは難しいと感じました。

 これからの課題として、現在扱っている野草茶がいかに身体に良いのかをどのように伝えていくか、そしてそのために情報を発信したり、つながりを増やしたりして野草に興味をもってもらいたいと考えています。

大学院在学中に薬局継ぐ‐ゼロからの研究は楽しい

 ――大学院在学中に薬局の経営に関わるようになった経緯を教えてください。

 急に親族の体調が悪くなって、薬局を受け継ぐことをお願いされたことがきっかけです。当時薬局を継ぐことになった際、岡山大学の大学院を辞めなければならないことを教授に相談しました。すると、辞めずに空いた時間で研究を行い、後輩とも共同で研究したら良いのではとおっしゃってくださったので、頑張りたいと思いました。

 薬局はアルバイトの方にたくさん来ていただけるようお願いし、私は子供を連れて保育園に向かい、薬局と大学院の行き来を1日に何度も繰り返す生活をしていました。隙間時間を見つけてはパソコンで論文を書いたり、データの確認をしたりしました。また、時間がかかる微生物の成長を上手にコントロールすることで研究の合間に時間を作るなど、様々な工夫をしました。研究室の後輩に作業を手伝ってもらうこともありました。

 とても忙しかったですが、家族の協力も得て、日々をこなしていました。このようにして博士論文を無事に書ききることができました。

 ――大学卒業後に大学院に進学したのはなぜでしょうか。

 私は附属高校から武庫川女子大学薬学部に進学し、当初から大学で薬学部に入るのであれば将来は研究者になりたいと思っていたので、卒業後は大学院に進学しました。環境問題に関しての研究をしたかったため、岡山大学の大学院で、病原微生物を扱う研究室に所属しました。自分でゼロから研究テーマを考え、論文を読んで調べ、世界ではどこまで研究が行われているのかを知り、研究の方針を立てて提示するというところから始まりました。

 このように、大学院ではただ研究するだけでなく、ゼロから物事を作っていくことを初めて経験させてもらいました。研究生の生活は本当に楽しく、仲間とレクリエーションをしたり遊びに行ったりもしました。学生時代の友達は今でも仲が良く、研究生の生活を通して仲間意識ができたと思っています。

やりたいことに焦点当てる‐薬学の知識で社会に貢献を

 ――仕事や日々の生活において様々な挑戦をされる中で、大切にしていることを教えてください。

 やりたいことだけに焦点を当ててやるということと、自分の行動の全てに責任を持つことを大切にしており、それは学びを大きくすることにつなげられると考えています。たとえ中途半端になってしまっても良いので、やりたいと思った時に手をつけることが大事で、それによって人脈を広げることができます。

 一つのことにのめり込む必要は特になく、様々な物事に関して広く浅く知っていると、どんな方と出会っても共通点を見つけて質問することができ、上手なコミュニケーションを成立できます。もし失敗してしまった際には責任を持ってその原因を深く考え、想定していなかったり、足りていなかったりした部分を知り、反省を次に生かせるように理解をすることも大事だと思います。

 ――進路に悩む薬学生にメッセージをお願いします。

 今後、薬剤師という肩書きのみで生きていくことは難しい時代になるだろうと私は考えています。例えば薬剤師1人が応需する処方箋は1日40枚までという枠が取り払われる可能性があり、そうなると薬局はインターネットで処方箋を応需し、ロボットが大量に調剤し、薬剤師は1日に数百枚の処方箋の監査のみを行えば良いということになるかもしれません。

 その結果、皆さんの薬剤師としての仕事が減ってしまう可能性が高いです。その時に自分たちは何ができるかを考えると、持っている知識を生かすことが重要になってきます。近年はヘルスケアも注目されており、超高齢化の世の中をいかに健康に生きていくかということに関心が移行してきています。

 皆さんは大学で学ぶ6年間、様々な場面で役立つ知識を勉強すると思います。薬学だけに囚われず、今の時代に対する問題点を指摘するような薬剤師になるのも良いですし、薬剤師になるために得た知識を生かして世の中にどのように貢献できるかを、働きながらでも考え続けていくのが良いと思います。ですので、考えることをやめないでください。そして、薬剤師の資格だけ取れたら良いと思う人にはならないでほしいです。



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