ニュースダイジェスト 「薬事日報」の紙面から

2024年9月15日 (日)

薬学生新聞

創薬貢献の薬学人材拡大へ‐次期改訂コアカリに反映

 政府は7月30日、創薬構想会議の中間取りまとめを踏まえた政策目標を公表し、アカデミアやスタートアップの絶え間ないシーズ創出に向け、薬学部・薬系大学院修了者のうち、創薬関連の仕事や研究に就く人を現状より増やす成果指標を示した。2026年度から検討が開始される次期薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に向け、創薬につながる薬学人材養成のための教育内容を検討し、薬学教育のあり方を見直すと踏み込んだ。臨床薬剤師の養成を進める大学薬学部・薬科大学における教育の方向性にも影響を与えそうだ。

 現在、薬系大学院修了者のうち、創薬関連の仕事・研究等に就く人は薬学6年制課程導入後も一定程度増えており、修士課程では11年3月に修了した908人が23年3月修了では1033人、博士課程では15年3月に修了した128人が192人と推移している。

 しかし、創薬分野におけるトップ10%論文数の国際シェア順位は1995~97年の平均では2位、05~07年は5位、15~17年は8位と低下している状況にある。

 今回の施策では、創薬に貢献するための医療人材養成に向け、大学の教育プログラムの充実について検討し、新たな臨床試験や創薬のあり方を踏まえた人材育成や教育内容を見直す。構想会議の議論でも、構成員から薬学教育の段階から新たな臨床試験や創薬のあり方など教育内容の見直しも検討されるべきとの指摘や、薬剤師等の医療職を志す学生に対し、治験・臨床試験の実施意義、臨床開発の方法論に関する教育を強化することが重要との声が出ていた。中間取りまとめでも、「新たなモダリティの研究開発やスタートアップ創出に貢献できる人材を確保・育成するためには薬学の変化に迅速に対応した人材を育てていく必要がある」と指摘されている。

 施策の工程表では、今年度から次期薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に向け、創薬につながる薬学人材養成のための教育内容について検討し、26年度から改訂の検討作業へと進める計画を打ち出した。薬学部・薬系大学院修了者のうち、創薬に携わる人材を現状の1225人から増加を目指す。

 22年度の改訂コアカリでは、大学と医療現場が連携して教育に当たる「臨床薬学」が追加されるなど医療人養成の側面が強かったが、今回の施策ではコアカリにも言及し、国策として薬系大学を創薬人材を養成する教育機関に位置づけたとも言える。今後、大学側には、医療に貢献する薬剤師の養成だけではなく、創薬に携わる人材育成という課題への対応も求められることになる。

(2024年8月2日掲載)

【人事院】公務員薬剤師、初任給2万1700円増‐民間賃上げ反映し大幅増

 人事院は8月8日、2024年度の国家公務員給与である月例給(基本給)を2.76%増、ボーナスを0.10月分引き上げるよう国会と内閣に勧告した。若年層に特に重点を置きつつ、全ての職員を対象に全俸給表を引き上げ改定し、ボーナスに当たる特別給の支給額を増額した。病院等に勤務する公務員薬剤師は医療職俸給表(二)が適用され、6年制薬剤師の初任給(2級15号俸)は24万4400円となり、昨年に比べて2万1700円の大幅アップとなった。

 国家公務員の給与勧告を行うため、全産業をカバーする全国約1万1700の民間事業所の事務・技術関係22職種の約42万人、研究員・医師等54職種の約4万人を対象とし、民間給与を調査した。

 その結果、月例給では国家公務員給与が民間給与を1人当たり平均1万1183円(2.76%)下回っており、民間給与との均衡を図るため、月例給を引き上げた。人材確保の観点等を踏まえ、30歳台後半の若年層に重点を置いて俸給を引き上げる方針。

 ボーナスは直近1年間の民間の支給状況を調査して官民比較を実施した結果、民間の支給月数が4.60カ月となったのに対し、公務員の支給月数は4.50カ月とわずかに0.10カ月分下回っていたため、昨年と同様に0.10カ月の引き上げとなった。

 公的病院に勤務する薬剤師は、栄養士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士等と共に医療職俸給表(二)が適用される。薬剤師の初任給は24万4400円となり、2万1700円の大幅アップとなった。

 22年度は前年比3100円増、23年度は9100円増と増額幅が大きくなる傾向にあったが、今年度は民間給与の状況を反映して高水準のベースアップとなった。

 一方、民間の医療関係職種を対象とした給与調査では、23年度中に資格免許を取得し今年4月までに採用された「準新卒薬剤師」の初任給(時間外手当や家族手当などは除く)が24万4517円で、企業規模別に見ると「500人以上の企業」は23万7539円、「100~500人の企業」は26万3711円だった。

(2024年8月19日掲載)

アマゾンファーマシー開始‐大手薬局チェーン9社参加

 インターネット通信販売最大手のアマゾンは7月23日から、薬局によるオンライン服薬指導から処方薬の配送まで利用できるサービス「アマゾンファーマシー」の提供を国内で開始したと発表した。同社のプラットフォームを活用し、患者と接点を持ちたい大手チェーン薬局9社がサービスを導入した。薬局現場からは「患者が店舗に行かずに薬の受け取りから服薬指導までを受けられる」とのメリットが挙げられる一方、医療機関や薬局で電子処方箋の導入率が低い現状では、利用はそれほど進まないのではないかと懐疑的な声もある。

 アマゾンファーマシーでは、利用者は電子処方箋の処方内容(控え)、引き換え番号の写真を撮ってアマゾンアプリ上の自身のアカウントにアップロード。登録されている薬局で予約した日時に薬剤師によるオンライン服薬指導を受けた後、処方薬を自宅など指定の住所に配送、または薬局の店舗での受け取りが可能になる。電子処方箋対応医療機関で診療を受けるか、患者向け総合医療アプリ「クリニクス」を導入している医療機関でオンライン診療を受けて処方箋の交付を受ける必要がある。

 同社が自前で薬局を持つのではなく、利用者が選択した薬局がオンライン服薬指導から処方薬の配送まで行い、処方箋に関する疑義照会もその薬局が対応する。服薬指導を行う店舗は▽アインホールディングス▽ウエルシアホールディングス▽クオールホールディングス▽新生堂薬局▽中部薬品▽トモズ▽ファーマみらい▽薬樹▽ユニスマイル――の9社2500店舗。

 薬局が処方箋を応需した場合における同社と薬局の売上配分や、薬局から同社に支払う手数料などは明らかにしていない。ターゲット層は、慢性疾患などで定期的に処方薬が必要とされている利用者や移動や待ち時間を減らしたい現役世代などだ。患者の利便性や医薬品アクセスを高めると共に、伸び悩んでいるオンライン服薬指導や処方薬配送サービスの普及を目指す。

 服薬指導を行う薬局店舗は順次拡大も検討する。電子処方箋やオンライン服薬指導、患者宅への処方薬配送への対応が求められるため、中小薬局にはハードルが高いと見られる。

 日本薬剤師会幹部は、「電子処方箋の導入がサービスの前提となり、米国のように処方箋全体の3分の1程度まで電子処方箋が広がらないと難しいのではないか」と懐疑的な見方をした。

(2024年7月26日掲載)

【東京商工リサーチ】薬局倒産件数が過去最高‐負債総額、初の100億円超

 東京商工リサーチは、今年1~7月期の調剤薬局の倒産状況を公表し、倒産件数が過去最多の22件に上ることを明らかにした。7月に関連企業も含めた9社の倒産が件数を押し上げ、負債総額は135億6500万円で初めて100億円を超えた。現状のペースで推移した場合、年間件数も過去最多を更新する見込みとし、同社は「ビジネスモデル変革の波に乗れない調剤薬局は、さらなる淘汰にさらされる可能性が高まる」と分析した。

 今年1~7月の調剤薬局の倒産件数は前年同期比266.6%増の22件で、前年同期の3.6倍に急増。21年同期の20件を上回り過去最多となった。負債総額は135億6500万円で、前年同期から422.1%増加。中堅規模の倒産が増加したことで、初めて100億円を超えた。現状のペースで推移した場合、年間件数でも21年の27件を超え、同様に過去最多を更新する見込みとしている。

 今年上半期(1~6月)の倒産件数は12件で、21年の18件に次ぐ2番目の水準だったが、7月に寛一商店(京都府)と関連8社が倒産したことが件数の急増につながった。形態別に見ると、「破産」が11件(前年同期比5件増)、「民事再生法」が2件(2件増)のほか、初めて「会社更生法」が9件確認された。

 原因別では、「販売不振」と「他社倒産の余波」が各9件だった。地区別では、関東が最多の11件、近畿4件、北海道3件、東北と九州が各2件だった。

 セブンイレブン・ジャパンが首都圏1000店舗で処方箋医薬品を受け取れるサービス、アマゾンジャパンがアマゾンファーマシーのサービス提供開始を発表するなど、異業種からの大手参入でさらにシビアな環境となることを予想。そのため、「デジタルシフトなどビジネスモデルの変革の波に乗れない調剤薬局はさらなる淘汰にさらされる可能性が高まる」とした。

(2024年8月21日掲載)



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