【各業界の動向と展望をチェック!】国内医薬品市場、上向き予想~製薬産業~

2024年11月15日 (金)

薬学生新聞

 製薬産業は、リストラ報道が気になるだろうが、実は新薬開発を行う製薬企業にとって事業環境はむしろ上向きだ。米IQVIAは8月、今後5年の日本の医療用医薬品市場見通しについてマイナス含みだった予想をプラス成長へ上方修正した。これに、今回の予想にはまだ反映されていない、新薬の薬価算定を引き上げた2024年度薬価制度改革の影響や、その後の政府の創薬支援策を加味すれば、さらなる上方修正が見込まれる。

 一連の制度改革を受けて、日本への投資を活発化し、海外同時申請・承認の方針を表明する外資系製薬企業も増えている。建前と見られがちだった「患者中心の医療」を事業に取り込む動きも加速化しており、臨床を知る薬学生がその知識を生かせる機会も増えるはずだ。

 今年、田辺三菱製薬、住友ファーマ、協和キリン、武田薬品と大手・準大手製薬で希望退職者の募集発表が相次いだ。各社それぞれに課題がある。住友ファーマは巨額損失、田辺三菱は海外成長強化などの事業改革、協和キリンは続いた開発品の失敗、武田は海外主力品の特許切れに伴う営業利益率の低下といった事情を抱えており、これらは前年度の決算発表時から想定されていたこと。むしろ、薬学生にとっては、新たな事業体制の中で働けるポジティブな面もある。

 医薬品市場は、低分子医薬品からバイオ医薬品に軸足が移り、創薬をはじめとする事業に必要な人員、組織、事業展開の手法が大きく変わってきている。それによる人員の集約、人材の入れ替え、組織の見直しは、今回例示した企業以外でも同様に迫られる。リストラは常に起きうることと冷静に構えたい。

 むしろ明るさが出ている。伸びが停滞していた日本の医療用薬市場だが、米IQVIAは8月、今後5年間の平均成長率予測について1月時点のマイナス2%~プラス1%から、プラス0.5%~1.5%に引き上げた。海外に比べれば低いが、24年度薬価制度改革、今後の政府による創薬支援策を反映すれば、さらに引き上げられる見通しだ。

 実際、日米欧製薬団体が6~7月にかけて実施した調査では前向きな動きがうかがえる。外資系20社、内資系10社を対象に行った調査では、薬価制度改革を受け、国内開発計画に前向きな変更があったとの回答は8社、「現時点はないが近い将来ある可能性」は16社。日本市場の投資優先度も「上がる可能性がある」が18社と、多くの外資系がそう回答したと示唆する結果となった。薬価を含め制度改革は途上であり、当面の後退はないはずだ。

 各社の将来性は、各企業ウェブサイトのIRページ(「株主・投資家の皆さま」などとメニュー表示されている)の開発パイプライン数が重要なヒントになる。第III相試験の多さはポイント。長期成長には第I相、第II相も重要だが、第II相で7割の開発品が失敗するため留意が必要だ。

 気になる年収の水準は高い。転職サイトdodaの調査(23年8月までの1年のサービス登録者約63万人データ)によると全業種平均414万円に対し、製薬企業は647万円。MRは732万円。業種別、職種別のトップ10圏内だ。



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