【医薬品卸編】流通改善に一定の成果‐震災被災地でも社会的使命果たす

2014年1月1日 (水)

薬学生新聞

 医薬品卸業界は、流通改善に取り組んでいる。

 医薬品においては「価格未妥結・仮納入」なる商取引が現在も行われており、価格を決めずに納品された商品を消費するという不可思議な状況がまかり通っている。また、つい最近までは「総価取引」も普通に行われていた。薬価が品目ごとに設定されているのに、全ての取引を丸めて金額を決めていた。これでは品目ごとの市場実勢価格を把握する薬価調査の信頼性に疑問を抱かせる。そこで「単品単価取引」を励行し、今は定着してきた。

 このため、かなり以前から流通近代化、流通改善と名前を変えつつも、何とか通常の商取引にしようと努力してきたが、一向に成果を上げられずにいた。しかし、ここ数年は医薬品卸業の存在意義を示すため不退転の決意で取り組み、成果も見え始めた。

 東日本大震災も大きく影響した。

 未曾有の大地震は、経験したことのない巨大な津波を発生させ、数百kmにわたる広範囲の沿岸部を呑み込んだ。さらに、福島では原発も被害を受け、先の見えない苦難の道が始まった。瓦礫がふさぐ道や放射線の恐怖に物怖じすることなく、医薬品の安定供給という使命を完遂した。有名大手物流企業が配送を止めた被災地でも、医療が行われ、必要とされる医薬品がある限り、どのような手段を使ってでも卸は必ず届けたのである。このことは多くのマスコミにも取り上げられ、それまで黒子に徹していた卸業の役割と社会的使命を果たした姿が広く国民に知られた。

 大手卸4社の売上高は8兆円を超えているが、各社の利益率は対売上比で小数点以下という散々な経営状況である。災害時にも医薬品を安定して現場へ届けるためには、常に最新の物流機能と設備への投資が求められる。卸企業側は適正な利益1%を目指して、自らの効率化も進めつつ取り組んでいる。

 最近では、国際化の潮流に乗った動きや、オーファンドラッグ、スペシャリティドラッグの配送にも対応できる体制を整えた会社も出てきた。単に医薬品をローコストで運ぶ外国のディストリビューターとは違う日本の『医薬品卸』各社は、それぞれが多種多様な卸機能とサービスを発揮して、日本の医療に貢献している。

 医薬品を扱うので、当然のごとく薬剤師も多数が勤務している。安心・安全・安定した医薬品流通を担う卸社員に高度で的確な情報を提供し、また教育するのも薬剤師の仕事である。薬が医療現場に届かなければ、現代の医療は成り立たない。薬と情報を届ける医薬品卸は、今後も社会に必要とされ続ける仕事である。



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