【薬局・ドラッグストアの薬剤師の未来予想図】最終回 将来の薬剤師に向けた期待

2015年1月1日 (木)

薬学生新聞

サンキュードラッグ代表取締役社長
平野 健二

薬剤師業務の中身をより明確に

平野健二氏

 ベルトコンベアの周りに錠剤の自動計数機がズラリと並び、1日1万処方が整然と処理されていく……筆者が何度か訪れたメールオーダーによる調剤処理工場の模様である。そこでは、薬剤師の仕事は処方箋監査と患者からの問い合わせへの回答のみである。薬剤の管理や補充は、すべてバーコード確認の下、テクニシャンの仕事である。ワシントン大学病院で無菌調剤を行うのもテクニシャンである。薬剤師業務と言うが、その内容を「作業」として一つ一つ分解し、必要な知識や技術を代替する手段を考えると、このようなことになってくる。

 法律が薬剤師業務をどう規定しているかの問題ではない。ピッキングや調合に薬剤師の人件費をかける必要はないと、その方法論と共に誰かが主張し、国民がその通りだと思えば、法律や制度は変化するのだから。政治力でその変化を一時的に遅らせることはできるかもしれないが長くは続かない。それよりは、薬剤師が果たすべき役割を明確にし、それに向けた実力を身に付け、それに向けた活動を行うべきである。

身近な健康相談相手としての役割

 薬剤師が果たすべき役割は、大きく二つに分けられる。一つ目は、身近な健康の相談相手である。アメリカで最も信頼される職業と呼ばれる薬剤師だが、その最大の理由は、アクセスが容易なことである。「なりたい職業=高収入」では上位に来る医師や弁護士は、アポが必要な上に、時間当たりいくらというチャージを取るのに対して、薬剤師は、ドラッグストアに行けば会える上に、相談で費用が発生することはない。「薬剤師も相談でフィーを取れるようになるべきだ」という議論もあるが、入口の部分でそれをすると、薬剤師の特性はむしろ低下することになる。

 気楽に接点を持てるからこそ、多くの人(=初期・未病)の発見のチャンスが生まれるのである。OTCは、「医療用医薬品に対峙するもの」「効かないもの」と捉えている薬剤師が多いが、実は、疾病発見の効果的なツールなのである。多くの慢性疾患は症状を伴わないため発見が遅れがちだが、OTCを買いに来る方は既に症状を持っているのであり、その中には一定比率で重篤な疾病の前駆症状が含まれる。尿タンパクの試験紙を、ある病院との連携で600人の方に配布したところ、30数人の方に陽性反応があり、そのうち2人は透析への移行可能性の高い方であった。このように、既に店内に存在しているツールを活用するだけでも、早期発見、予防、医療費削減に貢献する方法は数多く存在するのである。

 このような事を可能にする条件整備を積極的に行うべきである。採血による血液分析は、健康診断未受診の多い主婦層に、普段から訪れているドラッグストアで気付きを与えるのに極めて有用である。

 今後、ウェアラブル端末が普及すると、血圧等の経時的な把握も容易になる。医師の領分を侵すのではなく、生活の中でより身近な存在として、医療の入口の役割を獲得すべきなのである。

薬物治療において果たすべき責任も

 二つ目は、薬物治療の責任者として、その結果に責任を負うことである。軽度の怪我や疾病においては、OTC薬を使うのだろうし、その予後についての確認は、身近な店舗だからこそ行うことができる。医療用においては、言うまでもなく、処方は医師が決定する。

 だが、期待する効果を確認の上、それが得られているかどうかのチェックは薬剤師が行うべきではないのか。慢性疾患においては、2か月分の投与が一般的となってきているが、それを待たずとも、薬物がその治療効果をもたらしているかどうか薬剤師がチェックできれば、治療効果が格段に向上するはずである。

 もし効果が出ていなければ、コンプライアンスに問題があるのか、薬剤を変更すべきなのか、生活改善が見られないのか、何らかの仮説が立つはずであり、薬剤師はそれに対処するか、薬物の血中濃度やヘモグロビンA1cなどの数値をもって医師に報告することが可能となる。医師は、より迅速な対応が可能となるし、次回診察時に有用な情報を得られる。このような立場で患者や医師に接することは、来るべきリフィル時代への対応でもある。

 そこでも有用なのが、バイタルチェックである。採血をはじめとする様々なチェックとそれに伴う指導や受診勧奨は、誰よりも患者のためであり、それを仕事とする者たちの財産である。様々な簡易検査キットが発売されようとしているが、「精度が低く疾病を見逃す可能性」を議論する前に、発見できるメリットを最大限に生かすためにも、使用時の注意をはじめとして、検査後のプロトコルを確立することを急ぐべきである。検査結果を本人に返すだけでは、リスクを見逃す可能性があるとしたら、薬剤師にも結果が返る仕組にすればよい。残薬確認が「残った薬を数えること」であるとしたら、それは医療費削減には意味を持つが、ほかの誰かが代替できる。薬剤師の仕事は、「なぜ飲まないのか」「どうすれば治療効果を出せるのか」である。

 アメリカには、薬剤を1アイテム(インフルエンザワクチン)しか持たない薬局が開設された。薬物を処方通りに届けることはネットでもできるとした上で、患者と契約を結び、その治療効果に責任を持つことで、フィーをいただくというモデルである。日本の法律・制度になじむかどうかは別として、薬剤師の仕事の本質を表していると言えないだろうか。

 学生の皆さんに強く望みたい。資格に与えられた権利に安住するのではなく、果たすべき責任を自ら発見し、あなたが生きる時代の薬剤師像を築き上げてくれることを!2年間の連載の最後に、そのための支援を惜しまないことを約束させていただきます。



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