今年の第100回薬剤師国家試験の合格者数は6年制になってから最多の9604人が合格した。しかし、薬局店舗数は増加が続き、病院でも病棟業務の進展による人員確保が必須で薬剤師不足は解消されず、特に地方では深刻な状況だ。そこで各都道府県薬剤師会では地元出身の新卒薬剤師等に向けたPR活動などに取り組みつつある。本紙調査では、何らかの取り組みを行っている薬剤師会は北海道・東北、中国、九州地区を中心に19道県であった。
調査は、書面にて依頼、47都道府県薬全てから回答が得られた。このうち「薬剤師会として地元出身薬剤師の確保に向けた学生対策等を実施していますか」との設問に対し、北海道、岩手、宮城、秋田、福島、千葉、福井、長野、三重、滋賀、兵庫、和歌山、鳥取、島根、広島、山口、熊本、鹿児島、沖縄の19道県薬が、何らかの対策を実施していた。概要は次の通り。
北海道薬では「道外薬科大学就職(企業)説明会」へ参加した。岩手県薬では[1]被災地薬剤師確保事業[2]薬学部訪問[3]県薬誌「イーハトーブ」の薬系大学への送付などを行っている。2014年度実績は[1]:バスツアー30人、薬学生と沿岸の薬剤師との交流研修会を実施[2]:東北、関東、北海道の9大学のキャリア支援センターへの説明を実施[3]:東日本37薬系大学に対し配付、県内薬剤師の活動や薬局情報を提供した。
宮城県薬では4年生から6年生まで対象に、「会営志津川薬局・女川薬局見学ツアー」を企画、14年度は29人が参加。仮設の会営志津川薬局・女川薬局を見学しながら、両被災地区の医療の現状と今後の展望について考え、今後の薬学教育につなげた。今後は検討中。
秋田県薬では県出身薬学部学生を対象に「薬学生と語る会」を毎年実施、各職業紹介、実務実習受入体制や薬剤師無料紹介所について紹介、グループディスカッションも開催。14年度は17人が参加。15年度は8月に実施予定。
福島県薬は東北薬科大学、奥羽大学の就職セミナーに県薬無料職業紹介所として参加、同県薬のPRと求人登録をしている薬局を紹介。今後は未定。
千葉県薬では薬科大学の5、6年生対象に千葉県薬「薬剤師求人協力事業」を実施。各薬科大学で行われている企業説明会に予め会員から提出された求人票を千葉県薬ブースに訪問した学生へ提示(問合せ等は学生本人に行ってもらう)している。14年度は20人が参加。
福井県薬では薬学生全般を対象に「薬剤師確保対策事業」として、大学訪問やパンフレット配布によるPR活動を行っている。
長野県薬では薬局実務実習と時期を合わせ、薬学実習生を対象に薬局実務実習エリア合同実習およびSGD、情報交換会を行っている。14年度は44人が参加。県内を4地区に分け、先輩薬剤師と共に合同実習、SGD、情報交換会を実施。
三重県薬は、地元大学の学内説明会に県薬として参加。学内説明会会場にブースを出展。14年度は約100人が参加。就職情報誌も作成(15年10~12月)、大学を通じて卒業予定者に配付しUターン等を促している。
滋賀県薬は5、6年生を対象に「合同企業説明会」を開催。14年度は希望多数のため10社に限定。独自に薬局や病院等が“会社説明”を行う一方、県薬は住環境などPR。20人が参加。今後は検討中。
兵庫県薬は、県下4大学を対象に「就職セミナー」を開催。薬剤師会の紹介、かかりつけ薬局への就職説明、就職相談など実施。14年度は卒業予定者約40人が参加。
和歌山県薬は県内実習修了生を対象に「実習修了生のための同窓会」を開催。軽食とゲームを交え担当の指導薬剤師との交流、近況報告など実施。14年度は13人が参加。
鳥取県薬は、「鳥取県薬剤師確保対策促進事業」として薬学系大学へ訪問、企業ガイダンスへ参加。広報用チラシの作成・配付。
島根県薬は、中・四国の薬科大学・薬学部を訪問し、地元での就労をPRしている。
広島県薬では、「無料職業紹介事業」として、5年生を対象に神戸学院合同企業説明会等へ県薬として参加。14年は6人が参加。
山口県薬は、実務実習第2期学生を対象に薬学実習生セミナーを14年9月に開催。若手薬剤師との交流等、県内での就職をアピール。48人が参加。
高知県薬は「薬剤師確保対策事業」として、15年度から薬学生等(I&Uターン者)を対象に四国、近畿の薬学部等で開催される就職説明会に「高知県ブース」(県薬・県病薬合同)を出展。今年は9月以降、県薬HPに求人情報検索サイトを整備、集約発信する。
熊本県薬は、学生・未就業者対象に「熊本県薬剤師会就職説明会」を実施、14年は76人が参加。
鹿児島県薬は、全国の薬学部設置大学を対象に県薬会報を年2回送付。今後も年2回の県薬会報を送付し、無料職業紹介、U・Iターン者募集案内、薬学生特別会員の募集を促す。
沖縄県薬は、[1]大学訪問によりU・Iターン就職希望薬学生との相談会を実施している(事前に大学側と調整し学生を募る)。[2]実務実習期間中の学生を対象に、「新任・新人研修会」(毎年7月初旬)を実施、同県集会の研修項目の一つとして青年部会役員によるU・Iターン啓発、相談の講話を行う。14年度はそれぞれ13人、22人が参加。