【薬剤師になる前に~今だからOTC医薬品を学んでおきましょう!】第5回 医薬品の副作用“それって、副作用では?見分ける力、予防する知恵”

2015年11月1日 (日)

薬学生新聞

(株)スギ薬局、日本薬剤師会一般用医薬品等委員会委員
藤田 知子

藤田知子氏

 セルフメディケーション推進が叫ばれている今、私たち薬剤師は、OTC薬を適正に取り扱うことで、「医療機関にかかるほどでもない“軽度な身体の不調”を、OTC薬を使って治療する」ことのお手伝いする役割を担っています。

 ただ、薬剤師が適正に医薬品を選択していたとしても、「症状が改善できたのか?」「副作用が出なかったのか?」と、販売後にも、服用後の経過を見ていく必要があります。

 前号で、薬局に対する規制(経済的規制、社会的規制)について説明し、規制緩和の流れで薬局が変わってきたことをお話しました。一方では逆に、緩和ではなく、「誤った薬の使用を防ぎ、消費者の安全性を守る」という社会的規制は、強化される傾向にあります。

 今回は、医薬品の副作用について考えてみたいと思います。

重要な医薬品選択と服用指導

 医薬品の働きには、主作用があれば、好ましくない作用である副作用と二面性を持っています。日常生活の上で、痛みや、便秘・下痢、全身の倦怠感など、活動を著しく妨げるわけではないですが、なんとかしたいと思う不定愁訴に対し、店頭で相談対応していると、実は、持病などで普段から飲んでいる薬の副作用だったということがよくあります。

 実習先の薬局でよく遭遇するような事例をご紹介しましょう。

 口内炎が頻発する、20歳代女性のお客様です。テレビCMで口内炎の治療薬が薬局で販売されていることを知り来局されました。このお客様が指名するCMで紹介しているのと同じ口内炎治療薬を販売すればこと足りるところですが、ここで大事なのは、「なぜ?口内炎が頻発するのか?」という点です。

 ご本人は、持病もなく、通院もしていないため、「毎日飲む薬はない」といいます。しかし、よく聞いてみると、頭痛持ち、さらに生理痛がひどく、生理の日はいつも、OTC薬の鎮痛剤を服用していました。

 さらに、外食が多いとのことで、高脂肪食等で、胃内の炎症の可能性を秘めていました。頭痛や生理痛の原因の根本的治療についての情報提供も重要ですが、鎮痛剤は手放せない状況である以上、せめて、胃内の炎症を極力抑えるため、空腹時を避けて鎮痛剤を服用するか、胃薬を一緒に飲むなど、リスクを避ける情報提供が必要になります。副作用と知らずに不調を訴える方の相談の中で「これって、副作用?」と見分けるのも大事な薬剤師の役割だと思います。

 「『誤った薬の使用を防ぎ、消費者の安全性を守る』という社会的規制は、強化される傾向にあります……」と冒頭で述べましたが、その一つとして、消費者の安全を守る「医薬品副作用被害救済制度」があります。薬学では必ず履修するので授業で聞いたことがある人も多いでしょう。

 この制度は、万一、患者さんが医薬品による副作用被害に遭った場合、入院や死亡した際の救済給付制度で、1980年に創設されました。医薬品医療機器総合機構法(02年法律第192号)に基づく公的な制度です。ただ、給付するのが目的ではなく、その情報を集積して、今後の注意喚起に役立てています。

 救済制度の適応(対象)となるのは、「医薬品を適正に使用したにもかかわらず副作用が発生した場合」に限定されます。つまり、禁忌症例で服用した場合や、過量投与による副作用は、救済給付の対象とならないことがあるということなのです。ですから、薬剤師や登録販売者が適正な薬を選択し、正しく服用するよう指導したかどうかが重要になってきます。

添付文書で副作用のリスク管理

 外箱には、添付文書の「してはいけないこと」に該当する部分として、“次の人は服用しないでください”“次の人は服用前に医師、歯科医師または薬剤師に相談してください”と書かれています。これは購入時に適正であるどうかの判断ができるので、購入者自身で確認もできます。

 しかし、副作用を回避するには、薬剤師がきちんと確認した上で販売しなければならない2つの情報があります。
1つは、添付文書にある“相談すること”という部分です。たとえば、「ザジテンAL鼻炎カプセル」の“相談すること”に当たるものに“気管支ぜんそくの診断を受けた人”とあります。

 そこで、医師、薬剤師、登録販売者に相談することとはいったい何でしょうか?

 気管支ぜんそくを患ったことがある人はこの薬を飲んではいけないのでしょうか?

 医療用医薬品の「ザジテンカプセル1mg」添付文書を見ると、「気管支喘息に用いる場合、本剤は既に起こっている発作を速やかに軽減する薬剤ではないので……説明しておく必要がある」と記載されています。ザジテンAL鼻炎カプセルには気管支ぜんそくの効能はありませんが、説明しておく必要のある事項だと思います。そのほか、「トラベルミン」と同じ成分で医療用医薬品の「トラベルミン配合錠」も見比べてみてください。用法用量の違いはありますが、注意すべき事項が見えてきます。

 もう一つは、副作用の初期症状の情報を伝えることです。例えば、重篤な副作用などは、起こるかもしれないし、起こると大変なことになるものがあります。皆さんもご存じの「スティーブンス・ジョンソン症候群」です。

 発症時にすぐに病院に駆け込むことで最悪の事態を免れることができます。ですから、添付文書に、「まれに……その場合は直ちに医師の診療を受けてください」と初期症状を記載することが義務付けられています。添付文書は箱の中に入っています。

 皆さんも、OTC薬を購入された場合、一度じっくり添付文書を眺め、もし医療用と同じ成分のもの(スイッチOTCなど)であれば、見比べてみてください。そして、OTC薬販売の実習時には、ぜひ、適正な医薬品選択はもちろん、副作用のリスク管理につながる説明ができるようになっていただきたいと思います。



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