あいさつする植松会長
日本CRO協会（JCROA／植松尚会長）は昨年11月12日、都内で大学就職担当者、キャリアセンター職員を対象にした業界説明会を開催した。植松氏は、「製薬業界ではアウトソーシングする傾向が強くなり、臨床研究や医療機器の開発も活発化していることを背景に、開発受託サービスのCROは順調に成長しています。受託産業ではありますが、近年は単なる業務受託から脱却した“自立したプレイヤー”を目指しています。新卒者も毎年500人以上を採用していますので、ぜひとも優秀な学生さんをCRO業界に送っていただきたい」とあいさつした。なお、今回は初めて大阪へも中継して2会場での実施となった。
CRO業界の動きと就職実態を説明
JCROA情報戦略CTリクルートチームの渡辺健二氏が、業界の役割や主な職種を紹介した。
製薬企業の事業環境が変化して、M＆Aやオープンイノベーション等のビジネスモデルに転換し、コスト効率が求められているほか、国際共同治験が増加し、新薬開発、アンメットメディカルニーズへの対応、アカデミアAROの活用などの動きが加速している現状を説明した。
これらの要因を背景に、製薬企業は高度なノウハウを蓄積してきたCROへ開発業務を委託することになったが、集中実施による効率化や高い中立性も大きく影響している。渡辺氏は、「これまでの経験の蓄積によって信頼を得てきた。以前はメーカーの次にCROを選択することが多かったが、今では最初からCROを目指す人が増えてきた」と状況が変化してきていることを報告した。
JCROA会員（30社／正会員17社、賛助会員13社）の総売上高は、2014年で1435億円、15年には1500億円を突破すると予測されており、従業員数も1万3000人を上回ると見込まれている。
職種については、最も多いCRAと呼ばれる臨床開発モニターと共に、データマネジメント（DM）・統計解析、安全性情報（ファーマコヴィジランス）の業務内容を紹介。特に、机に向かいっ放しのイメージのあるDM・統計解析業務だが、数多くのミーティング、依頼側との打ち合わせなど、人と人とのつながりが重要であり、コミュニケーションスキルが求められるとした。安全性情報業務では、国内外の情報を収集する必要があることから英語力が必要であると指摘した。これらは、後のパネルディスカッションでも述べられた。
そのほかの業務も含めて、それぞれの仕事内容などはJCROAのホームページで閲覧できる。
続いて、同チームの中屋昌宏氏が、新卒採用状況を報告した。
会員会社を対象に行った調査結果（新卒採用した17社回答）では、13年4月入社から15年4月入社まで3年連続で500人を超えており、16年入社では732人が採用される予定である。極めて安定した雇用環境の業界といえる。
新卒者の内訳を見ると、性別では15年、16年入社とも同様で女性6：男性4、修士が約5割で、4年制が3割、6年制が2割という構成比となっている。
学部別では薬学系が4割、薬学以外が6割で、薬学系以外では理工学、農学、生命科学、医療衛生、獣医、看護、文系と多様な学部からの採用実績がある。16年度の採用予定職種は、モニタリング業務が最も多く13社、DM業務11社、統計解析業務9社、ファーマコヴィジランス業務5社、品質管理業務4社、臨床システム開発3社のほか、営業、臨床研究、臨床検査技師、メディカルライティング、システムエンジニアなどの採用を予定している。
中屋氏は、「CROの認知度は上がってきたが、職種ではモニター以外が知られていない。多の職種も揃っていて、薬学系でなくても活躍できている実態を広くアピールしていきたい」と訴えた。
先輩社員が現場の声披露
各社社員によるパネルディスカッション
入社3～7年の社員によるパネルディスカッションでは、就職活動における大学からの情報提供、入社前のイメージと実際に仕事を始めた時のギャップなどについて現場の声が披露された。
「DM業務は座りっぱなしの仕事と思っていたが、社内外の人と会って話す機会が意外に多いので、コミュニケーションスキルは重要」「外回りがメインのモニターが、報告書作成など内勤業務が結構多かった」「CROという選択肢があること、モニター以外にも職種があることを、薬学系、理系以外の大学にも知ってほしい」「CROは多くのメーカー、領域の薬剤開発に携われることが大きなメリット」などの感想、意見が述べられた。
説明会終了後には、CROリクルート担当者らとの懇親会で、活発な情報交換が行われた。
説明会後の懇親会では、活発な情報交換が行われた
