4月1日付で国立がん研究センターの理事長に就任した中釜斉氏は10日、都内で就任会見を行い、患者一人ひとりの遺伝情報に基づき最適な治療を行うゲノム医療の取り組みに力を入れていく考えを示した。特にゲノム情報に基づく“最適医療”の提供体制を整備すると共に、希少癌や難治癌などのアンメットメディカルニーズの課題解決のための研究を強化していく方針だ。中釜理事長は、「欧米の先進国と比べて日本のゲノム医療は遅れているが、がんセンターの機能を生かして、一人ひとりに最適な医療を提供したい」と抱負を語った。
同センターでは、既にゲノム医療の実現に向け、アカデミアと製薬企業による新薬開発を加速させる「スクラム・ジャパン」プロジェクト、ゲノム医療を実装する「トップギア」プロジェクトを進めているところだが、中釜氏はこれをさらに推進する考えを示した。具体的には、専門家チームによる遺伝子診断に基づいた臨床研究の対象を希少癌や若年性の癌などにも拡大するほか、全国200施設の遺伝情報を活用し、製薬企業と共同で新薬の開発を行っていく。1日に立ち上げた「ゲノム医療推進本部」を中心に関係機関との連携強化を進め、研究成果を国の政策にも反映させたい考えだ。