日本薬学会医療薬科学部会が主催する医療薬学フォーラム2013/第21回クリニカルファーマシーシンポジウム(実行委員長宮本謙一氏)が7月20、21日の2日間、金沢市で開かれた。薬剤師の業務の効果を客観的な指標で評価し、エビデンスとして示すことの重要性が強調された。
木村利美氏(東京女子医科大学病院薬剤部長)は、米国の薬剤師に学ぶこととして「米国では医療経済にフォーカスがあてられている。薬剤師がどのように介入し、どのような経済効果をもたらしたのかが報告されている。薬剤師の医療アウトカムに対する経済的効果を評価し、エビデンスを作っていかなければいけない」と呼びかけた。
例えば米国では、感染症治療に薬剤師が介入した結果、死亡率の低下やコスト削減、在院日数の短縮などに影響を及ぼしたことが報告されている。ほかにも様々な領域において薬剤師の介入効果に関する報告がある。多数の論文を網羅的に評価したシステマティックレビューではその効果を十分に立証できていない業務もあるものの、日本の薬剤師は「この試みすらできてない」と木村氏は指摘。業務の効果を数値化し、発表することが求められていると強調した。
このほか、米国の病院薬剤師に比べて十分に行えていない患者の薬物治療モニタリングを充実させるため、電子カルテを網羅的に検索するシステムの導入など、「IT化による患者モニタリングの効率化が必要。当院でも取り組みを進めている」と報告。また、米国では様々な業務にIT技術を導入したり、調剤業務にテクニシャンを活用したりしているとし、「薬剤師がすべき業務と、しなくてもいい業務の違いを考えなければいけない」と木村氏は語った。
保険薬剤師資格を更新制に
日本薬剤師会前常務理事で上田市薬剤師会会長の飯島康典氏(イイジマ薬局)は、薬局や薬剤師の質を担保するために保険薬剤師の資格を更新制にするなど、様々な提言を行った。
飯島氏は、薬剤師の質を保つため保険薬剤師の資格を「3年くらいで更新したらいいのではないか」と提案した。また、薬局の質を担保するために、薬局の数を規制して適正化したり、薬局の規模を決めたりする必要があると指摘。薬局の世襲制を廃止するほか、「調剤報酬を株式配当に充てられないような税制改正をするべき」と語った。
一方、患者との対面業務を拡充させるために、調剤の簡素化やロボット化、箱出し調剤の導入など調剤業務の見直しを進めることを提言。事務員を調剤に活用する仕組みを明確にしたドイツの取り組みを見倣って、保険薬局に従事する職員の業務の明確化にも取り組む必要があるとした。
これらのことは組織として日本薬剤師会が提案しなければ実現しないとし、「国民から評価されるように理想と現実を限りなく近づける。これは組織を挙げてやらないといけない」と強調。
「日本薬剤師会は1997年に『薬局のグランドデザイン』を策定したにも関わらず、その評価検証をしていない。画に描いた餅になっている。『薬剤師の将来ビジョン』も作ったが、ロードマップはない。どうするのか。これではわれわれの行く方向が見えない」と語った。