横浜薬科大学の学生と教職員で結成された「ハマヤクオーケストラ」は、地元住民向けの定期演奏会、入学式や学園祭などのイベントで演奏するなど、活動の幅を広げている。2016年に同大の開学10周年記念式典で演奏するため、演奏経験がある教職員と学生が中心となって立ち上げ、計30人の部員が個人練習や合奏で腕を磨いている。大学から演奏を始めた初心者も多いが、プロの演奏家による丁寧な指導で演奏の質を高め、今年3月に地元住民向けに開催した定期演奏会では、音大生と協力してクラシック音楽などを披露。次回の定期演奏会を期待する声が寄せられるなど、初めての学外向け演奏会を成功させた。既に来年の演奏会に向けた練習に取り組んでおり、より質の高いオーケストラを目指し、部員数を50人まで増やす目標を掲げる。顧問を務める小笹徹教授は「大学にオーケストラがあるという対外的な発信をすることが学生にとって良い経験になると思います」と語るなど、演奏を披露する場を広げたい考えだ。
初の定期演奏会が成功‐プロが指導、演奏の質高める
ハマヤクオーケストラは、16年に同大の開学10周年を記念した式典で演奏するグループが必要とされていたことから、小笹さんなど演奏経験のある教職員と有志の学生によって結成された。2~6年生の学生25人と教職員5人の計30人で活動しており、バイオリンやビオラなどの弦楽器、フルートやトランペットといった管楽器、打楽器などのパートで構成される。
同大で講師を務める西崎有利子さんは学生時代にチェロを演奏していたことから、オーケストラの立ち上げに関わった。20年ほどのブランクがあったものの、現在は学生と席を並べて練習に励んでいる。「学生と教職員の仲は良いですね。アマチュアですが、聴いてくださる方に良いと言われる演奏をしたいです」と語る。
ハマヤクオーケストラは「やる気があれば誰でも歓迎」というスタンスのため、大学から演奏を始めた初心者も多く、演奏の腕には個人差があるという。しかし、経験者が初心者の目線で丁寧に教えていることに加え、プロの演奏家でハマヤクオーケストラの指揮者を担当する悪原至さんが月に1回指導することで、全体の質を高めている。厳しい態度で臨む指導者が多い中、悪原さんは部員を肯定してモチベーションを上げる指導方法をとっており、結成から日が浅いオーケストラを着実に成長させている。小笹さんは「指導者によって演奏の質が大きく変わるので、悪原先生に巡り会えたことは幸運です」と語るなど、部員からの信頼を集めている。
週に3、4回の個人練習を中心に、毎週土曜日やイベントの本番前に合奏を行っている。7、8の持ち曲があり、学内のイベントでは入学式で国歌や学歌、行進曲などを、学園祭では親しみやすいポピュラーな曲を演奏している。学外では、地元の保育園でアニメの曲を演奏しているが、今年3月の定期演奏会までクラシック音楽などオーケストラ向けの曲を披露した経験はなかった。
戸塚区役所のホールで開催した定期演奏会では、平日の昼にもかかわらず、地元の高齢者を中心に約150人の観客が来場した。音大生によるエキストラの協力を得て、ベートーベンやバッハの曲、オペラの曲、世界的なミュージカルで使用された曲などを1時間半にわたって演奏。観客から次回の演奏をリクエストされるなど、初めての定期演奏会を成功させた。
昨年の夏に代表に就任した、薬学部漢方薬学科3年生の吉田茉由さんは4歳からバイオリンを弾き続けてきたが、大学入学後は演奏から遠ざかっていたという。しかし、オーケストラに参加してからは演奏が楽しく感じるなど、充実した日々を送る。先生と部員をつなぐことや練習の参加率を上げるなど、代表の役割の難しさを感じつつ、「来年3月の次回定期演奏会を成功させることと、演奏の質を高めるために部員数を50人程度にまで増やすことが目標です」と意欲を示す。
オーケストラの将来像について、小笹さんは「演奏会が部員のモチベーションになっています。在学中だけでなく、大学を卒業して30、40年後も一緒に演奏できるような関係を築くことができたら良いと思います」と語った。