ニュースダイジェスト

2018年7月1日 (日)

薬学生新聞

武田薬品がシャイアー買収‐国内過去最大の約7兆円

日本初のメガファーマ誕生へ

 国内トップ製薬企業の武田薬品が史上最大のディールに打って出た。5月8日、希少疾病薬に強いアイルランドのシャイアーを約6兆8000億円で買収すると発表したのである。3月にシャイアーの買収検討を認める声明を発表後、5回の買収提案を重ね、ようやく合意にこぎつけた。シャイアーを手中に収めることで、収益性の高い希少疾患治療薬でリーディングカンパニーとしての地位を獲得すると共に、世界最大の米国市場でのプレゼンス強化が図れると判断。両社合計の売上高は日本円で3兆4000億円超となり、世界の製薬企業売上ランキングで9位に浮上する。日本の製薬企業が名実共に“グローバルメガファーマ”となれるのか大きな試金石となりそうだ。

 クリストフ・ウェバー社長は、記者会見で「売上ランキングは重要ではなく、競争力を高めたい」と説明。日本企業として過去最大の約7兆円を投じるシャイアーの買収について、「戦略転換ではなく戦略の加速だ」と強調した。世界で戦うための競争力が十分ではないと判断したからだ。

 これまで進めてきた買収戦略と並行し、事業の戦略と集中を進めてきた武田は、研究開発のフォーカスを中枢神経系、消化器、癌に集中する方針に転換。しかし、世界的には20位の製薬企業に甘んじており、重点疾患領域で世界トップを目指すためには、希少疾患薬事業が競争力強化に必要と判断した。シャイアーの希少疾患薬を手にすることで、中枢神経系や消化器の既存事業も強化でき、統合後は血漿分画製剤を加えた五つの事業領域で売上収益の75%を占める。

 また、米国を中心としたグローバル化も達成できる。米国売上が全体の6割を占めるシャイアーの貢献で、統合会社の地域別売上で米国が48%、日本が19%と海外売上高比率は81%まで高まる見通しだ。さらに、研究開発パイプラインは、武田が第I相、第II相、シャイアーは後期の第III相が中心で、早期から後期まで相互補完的な開発パイプラインを構築できるほか、研究開発費も統合前の約1.5倍となる5000億円弱を捻出でき、メガファーマと肩を並べる水準だ。

 買収に関しては賛否両論があるが、日本の製薬企業として初めてのメガファーマが誕生することは確か。巨額の投資に見合ったディールかどうかはこれからのウェバー社長の経営手腕にかかっている。

【厚労省】小児のかぜも「投与せず」推奨‐抗菌薬手引きで改正案

 小児の“かぜ”にも抗菌薬を投与しないよう勧める手引きを厚生労働省はまとめる方針だ。既に有識者による作業部会が開かれ、学童期までの小児を対象とした「抗微生物薬適正使用の手引き」の改正案について議論がスタートしている。改正案では、小児の急性気道感染症は、二次性の細菌感染症により増悪する可能性が高いとしつつ、“かぜ”には成人と同様、抗菌薬を投与しないことを推奨し、抗菌薬の予防的投与も行わないよう求めた。ただ、生後3カ月未満の新生児の気道感染症は重篤な疾患が含まれるため、手引きの対象外となっている。

 改正版の手引きは、主に学童期までの小児でも急性気道感染症に焦点を当て、急性気道感染症の特徴と注意点、各論で構成。その中で、小児のかぜに対して使われやすく、気をつけるべき薬剤として、ST合剤、セフトリアキソン、マクロライド系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬、オセルタミビルなどを列挙。これら多くの対症療法薬にはエビデンスが存在せず、副作用も報告されているとし、使用に当たって添付文書の記載に注意が必要と促している。

 各論では、クループ症候群や急性細気管支炎など小児に特有の急性気道感染症を盛り込み、特に診療所で多くの小児を診察する可能性が高いかぜについて、抗菌薬投与しないことを推奨した。また、抗菌薬の予防投与を行わないことも推奨している。

 具体的には、鼻汁、鼻閉、発熱、軽い咳、呼吸障害がないなどの患者には抗菌薬は必要ないとしつつ、後鼻漏に伴う湿性咳嗽が10日以上長引く場合は化膿性副鼻腔炎を考慮すべきで、その場合はアモキシシリンを処方する治療が学会指針に示されていることなどを紹介した。

 急性咽頭炎については、小児の急性咽頭炎の病原体のほとんどがウイルスで、細菌ではA群β溶血性連鎖球菌が重要であるとし、咽頭炎の原因がA群β溶血性連鎖球菌による感染症かどうかの診断が重要と指摘。急性咽頭炎の多くはウイルス性で抗菌薬の適応ではないとし、A群β溶血性連鎖球菌を除く急性咽頭炎に対しては抗菌薬を投与しないこととした。

 A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎に対する第一選択抗菌薬としては、ペニシリン系抗菌薬が推奨されていることを示し、治療期間は10日間としている。

 主にウイルス感染症による咽頭の狭窄に伴う吸気性喘鳴、甲高い咳などを生じるクループ症候群については、数日から1週間程度で自然治癒するとしつつ、切迫した気道閉塞を来す急性喉頭蓋炎、細菌性気管炎、喉頭異物などの除外診断が重要と指摘。その上で、クループ症候群に対してもほとんどがウイルス性感染症であるとし、抗菌薬を投与しないことを促した。

 急性気管支炎についても、その多くはウイルス性で自然軽快するとして、抗菌薬を投与しないことを推奨している。さらに、小児に特徴的な急性細気管支炎については、2歳未満の小児で鼻汁、鼻閉などに引き続き咳、吸気性喘鳴などを呈するウイルス感染症であることを紹介。経過中に病状が進行する可能性や中耳炎、細菌性副鼻腔炎などの合併症を来す可能性から、状態の見極めが重要としながらも、抗菌薬を投与しないこととした。

はしかの予防指針改正へ‐定期接種率の目標95%以上

 厚生労働省は、麻疹・風疹に関する特定感染症予防指針を改正する方針だ。国内で麻疹(はしか)の感染が急速に拡大したことなどを踏まえ、各市町村で定期予防接種の接種率95%以上となるよう国と都道府県が働きかけること、海外渡航者のうち罹患歴か予防接種歴が明らかでない人にも予防接種を推奨するなど、感染予防の強化策を盛り込む。

 改正案では、▽定期予防接種実施率向上に向けた対策強化▽輸入症例への対策強化▽広域感染発生時の対応強化▽児童福祉施設・医療機関における対策強化▽風疹抗体検査から予防接種への結びつけ――に注力した指針を盛り込んでいる。

 定期予防接種の実施率を向上させるため、1歳児を対象とした第1期予防接種、就学前1年間に行う第2期予防接種について、目標接種率95%に達していない市町村がそれぞれ40%、55%存在していたことから、目標接種率を上回るよう国と都道府県が各市町村に働きかけることを指針に追記する。さらに、都道府県に設置されている麻疹風疹会議が各市町村の接種率を評価し、それぞれの接種率が95%以上となるよう提言することも求めた。

 また、現行指針では海外に渡航する人が麻疹の予防接種推奨の対象外で、風疹の輸入症例対策を記載していない。これら現状を踏まえ、空港の従業員など海外からの渡航者と接する機会が多い職業に従事する人、海外に渡航する人のうち罹患歴か予防接種歴が明らかでない人に対しても予防接種を推奨することを追記する。

処方薬の自動受け取り可能‐対面指導後、時間外渡し想定

経産省が見解

 薬局において薬剤師から対面で服薬指導さえ受ければ、薬はいつでも自動装置の取り出し口から受け取れるサービスは可能か――。そんな問い合わせに対して経済産業省は、薬局が患者の待ち時間を短縮する目的で、対面で患者に服薬指導をした後に調剤した薬を自動搬入・払出装置に保管し、患者本人が取り出し口から薬剤を受け取れるようにするといったサービスを提供しても、管理者の義務を規定した薬機法に抵触しないとの見解を示した。

 経産省は、企業が実施する事業が規制の対象になるのかどうかなどについて、事業者が照会することができるグレーゾーン解消制度を運用している。今回、事業者に対する規制が適用されるかどうかについて、政府に同制度の運用の照会があったことから、同省が見解を示した。

 事業者から照会のあったケースは、薬局で患者から処方箋を受け取り、薬剤師が対面で患者への服薬指導等を実施した後、薬剤師が問題ないと判断した場合に、調剤した薬を自動搬入・払出装置に保管した上で、患者本人への確実な授与が確保される「ピックアップターミナル」を介して薬剤を受け渡すサービスが薬機法に抵触するかどうかというもの。

 たとえば、病院でもらった処方箋を薬局に持ち込み、薬剤師から対面で服薬指導を受けておけば、先に用事を済ませたり、営業時間外の帰宅途中に薬をもらうことができるようなケースを想定しており、職場や自宅の最寄り駅の近くにこうした薬局がある場合などに、待ち時間短縮などのメリットが見込まれる。

 経産省が薬機法を所管する厚生労働省に確認したところ、調剤された薬を患者に渡すに当たり、薬剤師が患者に直接渡すことと同じ程度に品質が保たれ、患者本人に確実な渡せる環境を確保するのであれば、薬機法の規定に抵触しないと回答があったという。

 経産省は、薬機法の取り扱いがより明確になり、薬局の営業時間外に薬を受け渡しできる新たなビジネスモデルとしてサービスの導入が進むことで、薬局の業務効率と利用者の利便性向上が期待されるとしている。

社会保障費は190兆円台に‐2040年度の見通し示す

政府が初公表

 高齢化に伴う社会保障費の膨張には歯止めがかからなそうだ。政府は、高齢者人口がピークに近づく2040年度の社会保障費の見通しを初めて公表した。医療・介護給付費については、全国の各自治体の医療費適正化計画などをベースに計算した場合、18年度の49.9兆円から92.5~94.3兆円まで増加し、現状の年齢別受療率・利用率をもとに将来の患者数や利用者数を計算した場合では92.9~94.7兆円に達すると予測。これらに年金や子ども・子育てなどを加えた社会保障費全体では、現在の121.3兆円から188.2~190兆円まで増加するとした。

 今回の見通しは、42年ごろに高齢者人口がピークに達することを踏まえ、将来の社会保障の給付・負担に関する改革に必要な議論の素材として活用されることを目的に、厚生労働省、内閣官房、内閣府、財務省が共同で算出したもの。医療・介護給付費の見通しについては、全国の各自治体で行われている医療費の適正化に関する計画をもとに計算した「計画ベース」、現状の年齢別受療率などを基に将来の患者数や利用者数を計算した「現状投影」の2パターンを作成した。

 その結果、18年度は医療費39.2兆円、介護費10.7兆円で計49.9兆円だが、22年後の40年度には計画ベースで医療費66.7~68.5兆円、介護費25.8兆円で計92.5~94.3兆円まで増加すると試算している。また、現状投影では医療費68.3~70.1兆円、介護費24.6兆円の計92.9~94.7兆円まで増加するとしている。

 医療・介護だけでなく、年金、子ども・子育てなども合わせた社会保障給付費全体では、18年度の121.3兆円から、188.2~190兆円まで増加すると試算している。

 一方、医療福祉分野の従事者数の見通しも公表。18年度の医療309万人、介護334万人、その他の福祉180万人の計823万人から、40年度は医療328万人、介護505万人、その他の福祉233万人の計1065万人まで増加すると予測している。高齢化の進行で生産人口の減少が見込まれることから、就業者全体に占める割合は12.5%から18.8%まで増加するとしている。

琉球大に薬学部創設を要望‐沖縄県薬など4師会連名で

 薬学部がない沖縄県にとって全国で最も少ない薬剤師不足の新たな救世主となるか――。琉球大学を最優先とした県内の国公立大学への薬学部創設を訴えてきた沖縄県薬剤師会(亀谷浩昌会長)は6月13日、県医師会、県歯科医師会、県看護協会との4者連名で行っていた署名活動で10万1660筆の署名が集まったことを受け、薬学部新設を求める要望書と署名を琉球大学の大城肇学長に提出した。大城学長は、10万筆を超える署名について「重く受け止めている」と語った。

 亀谷会長は、当初目標としていた5万筆をはるかに超える数の署名が集まったことを強調し、「薬学部創設に対する県民の強い要望の現れだと確信している」とし、琉球大への薬学部創設を強く要請すると語った。

 琉球大医学部と同付属病院の西普天間住宅地区跡地への移転に伴う基本計画の中に、沖縄の天然資源利用による創薬研究が盛り込まれていることに触れ、「琉球大に薬学部が創設されれば、医と薬の協働により、効率的な研究体制が構築できる」と薬学部創設のメリットも訴えた。

 また、国が進める地域包括ケアシステムにおいても、薬物療法を支える薬剤師の役割に期待が寄せられているが、沖縄は人口10万人当たりの薬剤師数が全国の都道府県の中で最も少なく、薬剤師の確保に力を入れているものの、現状では県外の薬系大学を卒業すると、そのまま県外で就職するケースが多い点も指摘。県内に私立大学ではなく、国公立大学の薬学部を創設することにより、「学生や親の負担軽減につながるだけでなく、県外から優秀な頭脳が集まる」とし、琉球大を最優先とした薬学部創設を求めた。

 これに対し、大城学長は、「県内医療職種の尽力によって、多くの署名が集まったことに敬意を表したい」としつつ、文部科学省は新たに学部を創設する際には、他学部を一つ廃止するスクラップアンドビルドが必要になるとの認識を示していることから、「まだまだハードルが高い」と厳しい認識も示した。ただ、「多くの県民の要望がある」ともし、「学内で検討していきたい」と引き取った。今後、薬学部創設に向けては予断を許さない状況が続くことになる。

オンライン服薬指導の実現盛る‐規制改革推進会議が答申

日薬は「慎重に検討すべき」

 これまで対面を原則としていた保険薬局でのオンライン服薬指導が現実味を帯びてきそうだ。政府の規制改革推進会議がまとめた答申では、医療・介護分野に関して、診療から薬の受け取りまで一貫してオンラインで完結できるよう2019年度上期をメドに対面による服薬指導とオンラインによる服薬指導の組み合わせを実現させることが盛り込まれた。今年度中に処方箋の完全電子化導入までの工程表を作成・公表することも求めており、一層の効率化を促す内容となった。

 医療・介護分野でテーマとして取り上げられた「一気通貫の在宅医療実現」は、患者が受診から服薬指導、薬の受け取りまで一貫して、オンラインで完結できるようにすることを目的としたもの。現在のオンライン医療では、診療は「非対面」が認められているものの、薬剤師による服薬指導は対面が義務づけられており、オンライン診療を受けた場合でも、薬を受け取るには郵送された処方箋か電子処方箋引換証を薬局に持参する必要がある。

 こうした現状を踏まえ、答申では、今年度中に「薬剤師による対面服薬指導とオンライン服薬指導を柔軟に組み合わせて行うことについて検討し、結論を得る」ことを求め、検討の期限を19年度上期に措置と設定した。

 処方箋の完全電子化の実現に関しては、16年3月に策定した「電子処方箋の運用ガイドライン」を今年度中に見直し、同様に19年度上期に措置することを要求。さらに、電子処方箋のスキームを完全に実現するまでの具体的な工程表を作成し、公表すべきと促した。

 一方、対面での服薬指導とオンラインによる服薬指導の組み合わせの実現を求めている答申を受け、日本薬剤師会は「慎重に検討すべき」との見解を公表した。日薬は、調剤された薬剤の使用に当たっては、「薬剤師が患者と対面により服薬指導を行うことが、安全な薬物療法を確保するうえで極めて重要」と強調。その上で、医療機関や薬局を訪問することが困難な患者に対しては、「薬剤師が積極的に患者宅を訪問することで対応する必要がある」との認識を示した。

 遠隔服薬指導については、16年の国家戦略特区法で実証的に離島・へき地の居住者に対して遠隔診療が行われ、対面による服薬指導ができない場合に限り、可能とされているものの、「17年度末時点で未だに実例がない状況」であることを指摘。18年度診療報酬改定では、オンライン診療に関する評価が新設され、これに伴う指針が策定されている。

 ただ、オンライン服薬指導については、服薬指導の場所の見直しに関する検討と合わせ、特区における実証事業の動向を踏まえた上で、「医療用医薬品を安全で確実に提供する観点から、慎重に検討すべき」とした。

添付文書の電子化、議論始まる‐「紙と共存必要」との意見も

 紙の添付文書を電子化する流れが出てきた。紙製の添付文書は、最新情報の情報源として役割を果たしていないと疑問の声が出ていたが、厚生労働省の審議会でも、医薬品の添付文書を電子化すべきかどうか議論が始まった。紙の添付文書と製薬企業のホームページなどの電子媒体で医療者に情報提供しているのが現状で、紙媒体では迅速な情報提供ができないと指摘されてきたが、委員からは「電子化に移行するのは当然の流れ」など、電子化を進めるべきとの賛成意見が相次いだが、一部委員は方向性に賛同しつつ、「全てを電子化するのは現場の混乱を招く。当面は紙と電子化の共存が必要」などと電子媒体のみでの情報提供に慎重姿勢を示した。当面は紙と併存しつつ、最終的には電子化する流れは間違いなく加速しそうだ。

 医薬品の用法・用量、取り扱い上の必要な注意といった情報は、容器か外箱に記載することとされ、それが不可能な場合は添付文書として製品に同梱することが求められている。一方、製薬企業や医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページでも最新情報が公表されており、医療従事者が現場で閲覧できるようになっている。

 厚労省は、紙の添付文書について現状の問題点を列挙。頻繁に添付文書が改訂される中で、医薬品卸や医療機関の在庫品に同梱した添付文書は情報が更新されないままであり、迅速な情報提供に必ずしも役立っていないことを指摘。全ての製品に同梱されていることが紙資源の浪費につながっている現状も挙げた。

 審議会の議論では、紙の添付文書を残すべきか、電子媒体のみで情報提供すべきかなど、医薬品の情報提供のあり方をめぐって意見が交わされ、「全ての添付文書を電子化することは無理かもしれないが、最新情報を提供できるので、電子化に移行するのは当然の流れだ。ぜひ進めてほしい」、「身近に紙の添付文書があっても今はスマートフォンなどで検索して見る傾向がある。紙の添付文書をアップデートする作業を考えたら、その労力をもっと有効活用してほしい」と賛成意見が相次いだ。

 これに対し、日本医師会の委員は「電子化は賛成」としつつ、「ITリテラシーが高い医師ばかりではないことを考えると、紙と電子の両方に取り組んでほしい。電子化のみというのはまだ時期尚早だ」と述べ、日本薬剤師会の委員も「電子化を進める方向性は賛同する」としたが、「いきなり全てを電子化するのは現場の混乱を招く。当面は紙と電子の共存が必要ではないか」とした。

【厚労省】抗インフル薬「タミフル」、10代患者の使用控えを解除‐異常行動と因果関係不明

 厚生労働省は、中外製薬の抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」について、10代患者への使用差し控えを解除する。タミフル服用と異常行動について、明確な因果関係は不明とした調査結果を踏まえた対応。注意喚起の記載を添付文書の「警告」から「重要な基本的注意」の項目に移す。厚労省は、インフルエンザが流行シーズン入りする11月までに添付文書の改訂を要請したい考えである。

 タミフルをめぐっては、2007年に服用した中学生の転落死などが相次いで報告されたことから、添付文書の警告の項で10代患者の使用を原則として差し控えることを求め、服用後の異常行動に対する注意を促してきた。ただ、同じ抗インフルエンザ薬のリレンザ、イナビル、ラピアクタの3品目では10代の使用を制限しておらず、重要な基本的注意の項で異常行動の注意喚起を行っている。

 厚労省の専門調査会で、09年以降に行ったタミフルと異常行動の関係に関する調査結果が報告された。それによると、タミフルの服用の有無にかかわらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現する可能性があること、10歳未満でも服用後の異常行動が見られたことなどが示され、これまで同様に「タミフルと異常行動の因果関係に明確な結論を出すことは困難」とした。

 これら調査結果を踏まえ、専門調査会ではタミフルの10代への使用差し控えを継続すべきかについて議論。委員からは「全ての抗インフルエンザ薬を同列に扱うべき」などの意見が出たことから、10代の使用差し控えを解除すべきと結論づけた。また、異常行動に対する注意喚起の記載に関して、「調査結果から、注意喚起を警告から重要な基本的注意の項に移すことには整合性がある」などの意見を踏まえ、警告の項から注意喚起の記載を削除した上で、他の抗インフルエンザ薬と同様に重要な基本的注意の項に記載することとした。

 厚労省は、今後さらに専門調査会で議論を行った上で、インフルエンザ流行シーズンに入る11月までにタミフルの添付文書改訂を製造販売業者に要請する予定。

【NPhA】「調剤基本料1」算定が大幅減‐18年度改定の影響度を調査

 日本保険薬局協会(NPhA)がまとめた「2018年度調剤報酬改定の影響度に関する調査」によると、調剤基本料については、基本料1が改定前(3月時点)の78.7%から、改定後(4月時点)には55.9%と22.8ポイント減少し、チェーン薬局に大きな影響を及ぼしていることが分かった。また、新設された「地域支援体制加算」に関して、基本料1以外の薬局で取得している薬局は「ゼロ」となり、厳しさを増した18年度改定の影響の大きさがうかがえた。

 調査結果の主な項目を見ると、調剤基本料について、改定前(3月時点)は基本料1が78.7%、大型門前薬局が該当する基本料2が2.6%、基本料3が18.7%だった。これに対し、改定後(4月時点)には基本料1が55.9%と2割以上減少。基本料2が1.0%、基本料3が13.5%、特別調剤基本料が0.5%などとなった。

 新設された地域支援体制加算は、会員薬局の23.9%が取得していた。3月時点の基準調剤加算の取得は37.0%だったことを踏まえると、大幅な減少となった。また、基本料1以外を算定している3686薬局で、地域支援体制加算を取得している薬局はゼロだった。基本料1以外の薬局で地域支援体制加算の算定要件となっている8項目については、「かかりつけ薬剤師指導料等の実績」だけが要件を満たしていることが判明。ハードルの高さが改めて浮かび上がった。

 常勤薬剤師に占めるかかりつけ薬剤師の割合は、改定前の3月時点が35.0%、改定後の4月時点が35.4%と大きな変化はなかった。常勤薬剤師に占めるかかりつけ薬剤師指導料の算定実績のある薬剤師の割合は、改定前の3月時点が30.4%、4月時点が30.2%と同様に動きは見られなかった。

 全薬局数に占めるかかりつけ薬剤師がいる薬局数の割合は、改定前の3月時点で58.7%、4月時点でも59.0%と変化は見られず、全薬局数に占めるかかりつけ薬剤師指導料の算定実績のある薬局数の割合も、改定前の3月時点が54.1%、改定後の4月時点では53.4%とやや減少という状況だった。

 後発医薬品調剤体制加算に関しては、「加算なし」が3月時点の19.8%から改定後の4月時点では41.9%と大幅に増加した。



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