北里大学薬学部の2~6年生が通う東京・白金キャンパスで活動している「白金ぬいぐるみ病院部」は、年に3回の頻度で近隣の保育園を訪問し、ぬいぐるみを使った「お医者さん体験」を園児に提供している。聴診器などの医療機器に慣れ親しむことで医療に対する恐怖心を取り除くことを目的としており、園児に薬剤師を演じてもらい、薬剤師の仕事内容を学んでもらう体験も実施している。病院を訪問して、お医者さん体験で入院中の子供を励ます活動も行っており、子供の健康な生活に貢献する活動に力を入れている。設立から約5年経つが、存在感をさらにアピールするため、今後も勧誘活動を通じて部員を増やしたい考えだ。
医療への恐怖心取り除く
白金ぬいぐるみ病院部は、薬学部の2~6年生が通う白金キャンパスで活動している。50人前後が部員として在籍しており、薬学部1年生と他学部の学生が通う神奈川県・相模原キャンパスのぬいぐるみ病院部と合わせると100人ほどの大所帯となる。相模原ぬいぐるみ病院部は20年以上前に設立されたが、薬学部の学生が2年生以降も活動できるよう、約5年前に白金キャンパスにもぬいぐるみ病院部が設けられた。
同部では年に3回、長期休暇を利用して近隣の保育園を10人程度の学生で訪問し、年中・年長の園児を対象としたお医者さん体験、保健教育、薬剤師の仕事内容の紹介を行っている。
お医者さん体験では、ぬいぐるみを患者に見立てた診察を実施。40人ほどの園児が年齢に応じて、医師、患者の付き添いや友人などを演じる。聴診器や体温計など本物の医療機器を使用しており、これらの医療機器を身近に感じることで名前を覚え、医療に対する恐怖心を取り除くことを目的としている。保護者からは、手紙などを通じて「医師の仕事内容に対して子供の理解が深まった」「医療機器に興味を示すようになった」などの感想が寄せられるという。
健康教育では、歯磨きをしなければいけない理由、インフルエンザにかかった際に注射を打つ理由などを劇やイラストで分かりやすく教えている。また、薬を1日3回に分けて飲む理由も説明し、終了後にチェッククイズやおさらいシートで内容を理解できたかどうかを確認している。
同様の活動を行っているぬいぐるみ病院部は全国の医療系の大学でも見られるものの、薬剤師の仕事内容を紹介する活動は珍しく、創部から毎年実施している。薬剤師という職業を知らない園児がほとんどなので、処方箋の仕組みや薬がどうやって手元に届くのかを伝えている。園児には調剤担当の薬剤師と監査担当の薬剤師を演じてもらい、「ネツサガール」など、どんな病気に効果があるのか分かりやすい名前を付けた薬の模型を袋に詰め、患者役の学生に渡してもらう。
代表を務める薬学部薬学科3年の北川智子さんは、子供と触れ合い、貢献できる魅力を感じて入部した。「園児の反応が返ってくると嬉しいですね。部は各メンバーが立場を弁えていますが、アットホームな雰囲気です」と、充実した日々を送る。
病院に入院中の子供を対象とした「チャイルドドクターホスピタル」も不定期で実施している。保育園と同様に、お医者さんごっこを通じて医療に対する恐怖心を取り除き、治療に前向きになれるよう励ましている。
毎年10月に開催される白金キャンパスの学園祭にも参加している。お医者さんごっこだけでなく、食べ物のおもちゃを作り、遊びながら食事の大切さを学べる「食育」も行っている。また、デザートなどを調理・販売しており、昨年はベビーカステラの屋台を出店し、部員の団結を深めた。
20年以上の歴史を持つ相模原ぬいぐるみ病院部に対して、白金ぬいぐるみ病院部は比較的歴史が浅いため、活動内容を知らない学生が多いことが課題となっている。ただ、今年度は2年生に進級した学生にスライドショーで活動内容を紹介した結果、複数の学生が見学に訪れ、入部の意思を見せているという。
北川さんは「白金ぬいぐるみ病院部の存在を知ってもらうことが目標です。まずは後輩を増やして、部の歴史を作っていきたいです」と語った。