新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、現在も収束の気配がなく、私たちの学生生活が感染の流行以前とは大きく変化してから約1年が過ぎようとしています。これを受けて日本薬学生連盟は、学生生活を前向きに送るための工夫に関する意識調査を実施しました。アンケートはGoogleフォームを活用し、日本全国の薬学生をはじめとする医療系学生75人から回答を得ました(2021年度広報統括理事 日本薬科大学5年生 山沢智)
学生間の交流機会激減‐オンラインの活用増加
まず、「サークル活動や学生同士で交流する機会(新歓や学園祭等)が大学で設けられていましたか?」と質問したところ、「コロナ禍で機会が減った」(44%)もしくは「コロナ禍で交流する機会は全てなくなってしまった」(46.7%)との回答が多く、両者を合わせると90.7%となり、全国的に学生の交流機会が激減したことが分かりました(図1)
このような状況で「コロナ禍では、どのように友人と交流をしましたか?」という質問には、最も多い回答として「LINEやZOOMを利用したビデオ通話(ZOOM飲み会を含む)」が挙げられました(図2)。そのほかにも、オンラインでのイベント参加やサークル活動、ゲームの対戦、勉強会などをして交流していたそうです。この1年でオンラインでのつながりはとても充実したことがうかがえました。
一方で、「ほとんど交流がなかった」や「実習や試験、研究など数少ない登校日で話す程度だった」という回答も一定数存在し、友人との関係が希薄になってしまったことも多く見受けられました。
多様になった学習形式‐試験日程「教授間で調整を」
次に、学習面について昨年度の状況を調査しました。「昨年、大学の授業はどのような形式でしたか?」という質問には、「オンラインのみ」(29.7%)と「オンラインと対面の併用」(67.6%)を合わせると、97.3%の学生がオンライン形式の授業を経験していたことが分かりました(図3)
授業で大変だったことを挙げてもらうと、質問をするのが難しいことや情報を得るのが困難なこと、自宅での学習のモチベーション維持ができないことなどがありました。そんな中でも、録画型授業を繰り返し観たり、授業毎に要点をまとめたり、授業より早く先取り学習をしたりするなどの対策を講じていたとのことでした。
また、実習についても形式を問うと、「オンラインのみ」は5.4%、「オンラインと対面の併用」は71.6%であり、実習でもオンライン形式の導入が多かったことが分かりました(図4)。一方で、「対面のみ」は23.0%であり、授業とは違い実習だけは対面で行っていた大学もあったことも分かりました。
大変だったこととしては、「オンライン形式では自分の手で実習を行えないために身についたか分からない」「次年度やOSCEが不安」といったことが挙げられ、中には、OSCEの練習を自宅にあるもので代用して行ったという工夫が見受けられました。
学習形式が多様になった1年、「授業や実習で、大学に工夫してほしい/ほしかったことはありますか?」という質問には多くの声が寄せられました。一番多かった意見は「課題の量や期限、試験の日程などが重複し辛かったので、教授間で調整をしてほしい」というものでした。その他には、「質問しやすい環境がほしい」「家庭の印刷環境やインターネット環境を配慮してほしい」という意見がありました。
自宅で孤軍奮闘している学生のためにも大学の環境や制度が整備されることを願うばかりです。
運動や資格の勉強‐コロナ禍で新たに開始
これまでの調査から、コロナ禍での学生生活は、学生交流の面においても学習面においても困難なものであることが分かりました。
最後に「コロナ禍で新しく取り組んだことはありますか?」という質問をしました。最も多かった意見が、「筋トレやストレッチなどの運動」(9票)で、次いで、「オンラインイベントへの参加」(7票)、「資格の勉強」(6票)でした(図5)。運動は、適度な気分転換や自粛による運動不足解消になるので、積極的に取り入れたいところです。
また、通学時間の減少からか、自分の時間が多くなり、薬学の勉強以外にも自分の興味のある分野の勉強をしている人も多く見受けられました。英語や中国語などの語学学習、ファイナンシャル・プランナー(FP)検定や簿記などお金に関する資格の取得、アロマテラピー検定の取得など、様々なことを新しく学んでいるようです。
おわりに
今回の意識調査により、昨年度の学生生活の苦労と工夫を垣間見ることができました。COVID-19の流行から1年以上が経ちますが、まだまだ不自由な学生生活は続きそうです。これから大学生活が始まる新入生にも新年度を迎えたばかりの在学生にも、微力ながら本記事がこの大変な状況を乗り越えるためのお役に立てれば幸いです。