保険薬局業界は、コロナ禍で2020年度調剤医療費が約3%減と厳しい状況に直面している。薬局・薬剤師を取り巻く環境は変化しており、コロナ後は患者や医療機関とのやり取りなど対人業務にシフトし、患者から評価された薬局が生き残る構図が予想される。
全国の保険薬局は06年の5万2000軒から20年には6万1000軒と増加の一途をたどり、処方箋枚数は処方箋受け取り率で見ると20年には約76%と伸び、医薬分業は大きく進展した。
調剤医療費約7兆5000億円の内訳を見ると、技術料は約1兆9000億円。技術料全体のうち対人業務を評価する「薬学管理料」の割合は20%にとどまるなど、対人業務への移行は進んでこなかった。
2年に1度行われる今年4月の調剤報酬改定は対物業務と対人業務を適切に評価する観点から、薬局・薬剤師業務の評価体系を見直した。調剤料、薬剤服用歴管理指導料を廃止し、新設した「薬剤調製料」「調剤管理料」「服薬管理指導料」に再編した。
調剤料は技術料全体の5割を占めており、薬局が対物業務に依存していると批判される要因となっていた。これまで手がつけられなかった調剤料にメスを入れ、対物業務と対人業務が混在していた評価体系を整理・再編成した意味で、近年でも大きな改定と言えるかもしれない。
具体的には、薬剤調製や取り揃え・監査業務は薬剤調製料として評価が行われることになったが、処方日数に関わらず一律の評価とするなど従来に比べ点数を絞り込んだ。調剤に依存した保険薬局にとっては厳しくなることが予想される。
一方で、処方内容の薬学的分析や調剤設計、疑義照会を含む医師への問い合わせなどの業務は調剤管理料として日数に応じて4段階で評価し手厚くした。在宅業務や医療的ケア児に対する薬学的管理などへの評価も新設し、点数を振り分けた。
対物業務の評価を引き下げ、対人業務の評価を重点化する調剤報酬の評価体系ができあがり、今後の改定でも薬学的管理にウエイトを置いて評価が行われていくのは確実な情勢だ。
さらに、薬局・薬剤師業務を大きく変える可能性があるリフィル処方箋が4月から導入されることになった。症状が安定している患者について医師の処方により医師・薬剤師と適切な連携のもと、一定の期間内であれば医療機関を受診しなくても、上限3回までは繰り返し利用できる。
リフィル処方箋の導入は地域の中で患者の動きに変化をもたらす。医療機関を受診した後に門前薬局で薬をもらう患者が多かったが、医療機関を受診しなくても処方箋を繰り返し利用できるため、地域のかかりつけ薬局に行って薬を受け取るという”門前から地域”への新たな流れが作られることになる。
薬剤師は、患者の状態や服薬状況を確認し、リフィル処方を継続すべきかどうかを判断する必要がある。患者へのフォローアップを行い、医療機関や多職種とも連携してしっかりと結果を残せば、これまで立地で選ばれなかった薬局が患者から選ばれる絶好の機会となる。
薬剤師の対物業務をめぐっては自動化や機械化、非薬剤師の活用などが議論されており、薬局や薬剤師には付加価値が求められている。厳しい時代ではあるものの、対人業務ができる薬剤師には活躍の場は広がっている。こうした社会の動きを捉え、薬剤師の職能という視点で自分が就職する薬局選びをしてみるといいかもしれない。