来年度中間年改定が決着‐乖離率4.375%超対象に
不採算品・新薬加算に配慮
松野博一内閣官房長官、鈴木俊一財務相、加藤勝信厚生労働相は昨年12月16日、来年度予算編成に向けた大臣折衝を行い、2023年4月の薬価中間年改定について平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目を対象とすることで合意した。医療用医薬品の約7割の品目が改定対象となる。急激な原材料費の高騰などで不採算となっている1100品目について臨時・特例的に不採算品再算定を実施し、薬価の引き上げを行うほか、薬価が下がる新薬創出等加算対象品目は現行薬価との価格差の相当程度を加算し、遜色のない水準まで増額する。影響額は明らかにしていないが、前回の中間年改定と同規模となる。
3大臣合意を受け、厚生労働省は同日、中央社会保険医療協議会薬価専門部会を緊急開催し、来年度中間年改定の骨子案を提示。大筋で了承された。改定対象となるのは1万4000品目(全体の69%)。調整幅2%で改定を行い、前回中間年改定で適用された薬価の削減幅を0.8%分緩和する「新型コロナウイルス感染症特例」のような一律に削減幅を緩和する措置は行わない。
適用する算定ルールは、▽基礎的医薬品▽最低薬価▽新薬創出等加算(加算のみ)▽後発品等の価格帯集約――の四つ。原材料高騰などで不採算となっている全体の6%に相当する1100品目については、臨時・特例的に不採算品再算定を実施して薬価の引き上げを行う。
不採算品再算定のルールは、成分規格が同一の類似薬の全てが該当する場合に限って適用されているが、安定供給確保のため個別に対応する必要があることから、今回の改定に限って特例的に制限を課さないこととした。
製薬企業に対しては、特例の不採算品再算定ルールが適用された品目の安定供給を求めると共に、安定供給の状況確認のためのフォローアップを実施する。
また、新薬創出等加算対象品目は、企業要件や乖離率によって薬価が下がる場合があるため、イノベーションに配慮する観点から、新薬創出等加算の適用後、現行薬価との価格差相当程度を特例的に加算し、改定前薬価と遜色ない水準まで薬価を増額。通常の加算と同様に取り扱い、その累積額を後発品収載後などの薬価改定時には控除する。
薬価収載時に参照できる外国価格がないなど一定の要件を満たす品目について、改定時に1回に限り外国平均価格調整の実施が可能な「収載後の外国平均価格調整」ルールも、外国での実勢価格を連動させる意味合いから中間年改定でも適用可能とし、今回の改定でも実施する。
医療用医薬品総数1万9400品目のうち、薬価が上がる品目が1100品目(6%)、薬価を維持した品目が約9000品目(46%)、薬価が下がる品目が約9300品目(48%)となる見通し。
新薬創出等加算対象品目600品目のうち450品目が価格維持され、150品目は特例により改定前薬価と遜色のない水準に加算が行われる。
(2022年12月19日掲載)
【規制改革会議/特区諮問会議】調剤一部外部委託を明記
政府の規制改革推進会議と国家戦略特別区域諮問会議は昨年12月22日、規制改革推進に関する中間答申を決定した。人口減少に対応した規制改革として調剤業務の一部外部委託を明記したほか、プログラム医療機器(SaMD)を早期に現場で使用できるよう「2段階承認制度」の導入について来年度までに結論を得て、薬事承認までにかかる期間を現在の4年超から1年程度まで短縮することを目指す。
中間答申では、人口減少に対応した規制改革として、専門人材の活躍を促す制度見直しを行う。その内容として、調剤業務の一部外部委託、医療関係職種間のタスクシフト・タスクシェアの推進などを明記。対物業務から対人業務に転換を図るため、調剤業務の一部外部委託を解禁する方向性が示された。
国は特区制度を活用して数カ月程度にわたって実証事業を行い、結果を踏まえて制度設計を目指す案を示しているが、特区制度を活用した事業実施には日本薬剤師会が反対姿勢を示している。
SaMDの開発・市場投入の促進に必要な取り組みも盛り込んだ。具体的には、SaMDを早期承認して臨床現場での使用を可能とするため、2段階承認制度を導入する方向で検討する。今年度内に検討を開始し、2023年度に結論を得て、現状の薬事承認にかかる4年超の期間を1年程度まで短縮することを目指す。
第1段階では、非臨床試験で評価できる場合や探索的臨床試験が必要である場合の整理、標榜可能な臨床的意義の範囲など、SaMDの使用目的や機能の違いに応じた検討を行う。第2段階では、治験のほか、リアルワールドデータ(RWD)などを活用して有効性の確認を行うこととした。
革新的SaMDの開発を可能とするため、現在は開始まで5年以上かかる保険償還に関する新たな仕組みを設け、1年程度に短縮することも目指す。
また、内閣府は、今後の国家戦略特区制度の運用方向性を示した「地方創生のための制度改革・規制改革に関するアイディア募集を踏まえた施策パッケージ」を公表した。
医薬分野では、ドローンによる医薬品配送の合理化や希少疾患治療薬の開発・承認時で海外試験成績の活用を進め、医薬品開発の迅速化や流通の合理化の実現を目指す。
(2022年12月26日掲載)
【NPhA】薬剤師の微量採血容認を‐検体測定で規制緩和要望
日本保険薬局協会(NPhA)は昨年12月15日、検体測定室等において薬剤師が専用器具を用いて採血する行為を医師法上の医行為から除外するよう、政府の規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループ(WG)に要望した。検体測定の利用促進を目的としたもので、厚生労働省は「実現には法改正が必要」との認識を示している。
NPhAはこの日のWGで、検体測定室関連の規制緩和を複数要望した。
薬局に設置された検体測定室では、利用者が自ら指先から血液を採取することで、血糖値や中性脂肪などを簡易に測定できる。採血の際には利用者が穿刺器具を手指に刺す行為について、▽自ら行う穿刺への不安、失敗による再穿刺▽穿刺部分の消毒▽採血可能と思われる部位の判断――の課題があることから、NPhAは穿刺が初めてで苦手な利用者には、薬剤師が専用器具で穿刺することでスムーズに安心感を持って測定が可能になると主張した。
厚労省は検体測定室における採血は、医師法に基づき、医師の判断が必要な医行為(穿刺行為)に当たるとの見解を示していることから、NPhAは単回使用の専用器具を用いて薬剤師が穿刺することを医行為から除外するよう規制緩和を求めた。
医行為に関する規制緩和について、委員からは「採血を行った薬剤師または薬局など、誰が責任を負うことになるか整理が必要」との指摘があった一方、「医療人材の不足が深刻になる中、薬剤師が採血を手伝うことが安全性の流れから望ましい方向性だ」と歓迎する声も上がった。
要望を踏まえ、厚労省は「現行法では薬剤師は診療補助を行う職種に当たらないので、法改正が前提となる」と応じた。
また、NPhAは、測定結果を踏まえた薬剤師の助言も認めるよう求めた。現行ルールでは、利用者が測定結果に関する質問をした場合、かかりつけ医に相談するようアドバイスすることとしている。
(2022年12月19日掲載)