【MR認定センター】MRと薬学生は高い親和性‐基礎知識や実習経験は有利

2023年1月15日 (日)

薬学生新聞

小日向氏

小日向氏

 公益財団法人MR認定センターのMR認定試験は、2021年4月に基礎教育について修了認定を受ければ、薬学生でも受験が可能になった。同センターの小日向強企画部長は、「薬学生は6年かけて専門知識を勉強し、臨床実習までしている。専門的な知識、経験を持つ薬学生がMRとして医療従事者に適切な情報提供ができるということは非常に価値のあること。そんな薬学生にMRを選択肢のひとつとして考えてみてほしい」と薬学生の受験者の増加に期待を寄せる。

様々なキャリアの入口に

 医療の高度化、専門化、創薬モダリティの多様化が進み、製薬企業もCAR-T製品などの個別化医療製品、新たな作用機序を持つスペシャリティ医薬品の取り扱いを増やしている。そのような背景から、多人数のMRは必要としないものの、医薬品に関する専門的な知識を持つMRの需要は増えていく可能性がある。

 小日向氏は「ICT、インターネットの普及で情報を入手しやすくなったからこそ、MRによる要点を掴んだ適切な情報提供に意味が生まれる。臨床で応用できる情報を医師・薬剤師にきちんと説明することで医療に貢献できる」とMR職の存在意義を説く。

 その上で、MRと薬学生は親和性が高いと強調する。薬学生は、薬剤に対しての基礎知識、ものの見方を学んでいることや、実習などを通して臨床現場の問題を理解する機会があるため、医療従事者が抱える悩み、困難、課題を肌身で共感できる可能性が高く、情報提供のポイントをつかみやすい。

 また、基礎知識が始めから備わっているため、製薬企業に入ってからのスタートにおいて大きなアドバンテージを持っている。基礎知識の習得から始めるMRと比べ、製品知識をより早く高めていくことができる。

 自身も薬学部出身であり、製薬企業でMRを勤めた経験を持つ小日向氏は、MR職について、「ノルマがきついイメージが先行し、早朝から夜遅くまで激務の営業職という印象を持つ学生もいるかもしれないが、決してそれだけの仕事ではない」と説明し、「医療従事者の求める情報を提供し、薬の安全性情報を収集する育薬につながる仕事でもある」と語る。

 一方で、「2022年版MR白書」によると、8年連続でMRの総数が減少しており、その将来を不安視する声も少なからずある。かつては「MR不要論」という言葉が言われたこともあった。

 小日向氏は「MR不要論」に対し「医療従事者の求めている情報ではなく、会社から与えられたメッセージしか話さない、底の見えるような調べれば出てくる情報しか提供しないMRならば意味はないという趣旨であり、全てのMRを否定するものではない」と念を押す。

 また、薬学生が製薬企業のMRを目指すことは、新たなキャリア選択肢としての利点もある。MRとして就職したとしても、その後、自身の適性、考え方に合わせてマーケティングや営業企画、MSLなど様々なキャリアを積むことが可能だ。

 小日向氏は、「MRをやっていく中で、こんな情報があれば医療従事者に伝えやすいのではないか、どうすれば先生の悩みを解決できるのだろうという疑問や興味を持ち、他の職種での活動に生かしてきた」と自身の経験を振り返る。その上で「自身が薬学生になった時に考えていたキャリアプランとは全く違っていたが、色々と経験することで成長していくことができた」と話す。

 MRへの適性に悩む学生には「相手のことを考えられるということが一番大事だと思う。口下手だったり、つきあい下手でも、仕事を続け、成長することはできる」と自身のキャラクターにこだわらず、意欲を持って挑戦してほしいと呼びかける。

 さらに、「自分のやってきたことが次につながっている。今、やっていることを大切にするからこそ、次のステップがある。今いる場所での学びが様々なキャリアへの入口となっていく」とキャリアの幅を広げるために必要な要素を語る。

受験しやすい認定試験へ

 同センターは現在、MRを志望する薬学生が受験しやすくなる仕組みを検討している。

 MR認定試験の受験者数減少を背景に、同センターは19年に事業構造改革検討会議の報告書をまとめ、受験資格の見直しによる学生受験の拡大などをその一環として実施した。昨年からは「認定試験制度改革検討委員会」を設置し、さらなる改革について議論を進めている。

 委員会では、CBT形式の導入や、現在は大阪と東京でのみ実施される試験の全国主要都市への拡大、学生の受験資格の見直しなども検討している。

 現在は学生の場合、同センターが認定するMR導入教育実施機関で基礎教育を全て受講し修了した人が受験資格を得るが、改定後の制度では受験資格そのものを撤廃することなどが視野にあるという。検討結果について、24年から1~2年の広報期間を設け、大学等にも浸透を行い、26年に制度を施行する予定だ。

 MR認定試験の学生受験がさらに受験しやすい形へと制度改革が進めば、今後、製薬企業の採用の形が変わることも想定される。小日向氏は「学生が認定試験の合格証を持っていれば、企業にとっても大きなインパクトがあると思う。従来、6カ月前後を要した基礎教育の期間が短縮されコストが下がることは企業にとって意味は大きいのではないか」と企業側にもメリットとなる改定となる可能性を指摘する。

 これらの変革が進められる中で、同センターはMRへの道を、薬学生を含めた、より多くの人に広げていく予定だ。

 小日向氏は、最後に薬学生へのメッセージとして、「MRになったからこそ、多職種への興味が出てくることもある。薬学を学ぶ中で、絶対に薬剤師になりたいという人はその道を歩むと思う。ただ、自分が何をしたいのか迷っている人にとって、薬剤師以外の選択も可能なのだということを知ってほしい」と語り、MRは薬学生のキャリアプランの中で可能性のある選択肢であると強調する。



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