岩手医科大学薬学部6年生の長澤茉依さんは、昨年12月に米国アナハイムで開催された「ASHP(American Society of Health-System Pharmacists)2023」において、生成AIのチャットGPTが生成した副作用情報に関する研究のポスター発表を共同演者として行った。薬学生がASHPに参加するのは珍しく、同大薬学部の学生がASHPで発表を行った初めてのケースとなった。
同大薬学部臨床薬学講座地域医療薬学分野の松浦誠特任教授が実施した研究について、長澤さんはデータ収集を行った。この研究では、米国の医薬品情報データベースである「レキシコンプ」に搭載されている米国食品医薬品局(FDA)承認の高血圧治療薬30品目の副作用情報について、生成AIのチャットGPTにより生成された内容と比較した結果、全て一致した品目はわずか2品目にとどまったことが分かった。チャットGPTはほとんどの副作用情報を見逃していた。
薬剤師が取り扱う医薬品情報は、常に100%正確である必要があり、長澤さんは、現時点でチャットGPTは薬剤師の代わりにはならないということを報告した。
長澤さんは「90分の発表時間の間、多くの参加者とディスカッションを行うことができ、とても充実した時間を過ごせて勉強になりました。米国の参加者はしっかり話を聞き、興味を持ち詳しく質問してくれたのが印象に残っています。英語に慣れる時間もなく、ずっと質疑応答をしていて関心の高さを感じました」と感想を語った。
また長澤さんは、ASHPの学会に合わせて米国の病院を見学する機会も得たという。日本と米国の病院薬剤師の仕事の違いを体験し、「米国の薬剤師は自分で薬の量も変えられたり、検査値のオーダーができたり、日本の薬剤師よりも多くのことが許されていて信頼度が違うと感じました」と業務の違いを実感したようだ。
今回の海外学会の参加について、長澤さんは「学会は様々な情報を得ることができる機会だと思います。自分が社会に出て薬剤師として働き始めても、この経験を生かしていきたいです」と話している。