【各業界の動向と展望をチェック!】薬剤師外来、診療報酬で評価~病院薬剤師~

2024年11月15日 (金)

薬学生新聞

 病院薬剤師の活躍の場が広がっている。具体例の一つとして、病棟での業務拡大に加えて、外来患者に対する業務を推進する病院が増えてきた。その成果が認められ、外来で化学療法を受けるがん患者に対する「薬剤師外来」の業務が、今年6月の診療報酬改定で「がん薬物療法体制充実加算」として新たに評価された。一方、薬剤師不足や偏在の解消、給与等の処遇改善など、業務発展に向けて解決すべき課題も多い。

 同加算は、外来で医師の診察前に薬剤師が、がん患者に面談し、服薬や副作用発現の状況などを聴き取って評価した上で、医師に情報提供や処方提案を行うなど、一連の業務を実施することで算定できる。医師は多忙で、限られた診察時間内で全ての情報を聴き取るのは容易ではない。薬剤師の診察前の関与で確実な情報把握や薬学的評価が可能になり、医師の労務負担軽減や医療の質向上につながる。

 がん領域の薬剤師外来は以前から、全国各地の病院で行われてきた。その実績等をもとに今回、診療報酬の点数で評価された。

 かつて外来患者の調剤が中心だった病院薬剤師の業務は、院外処方箋の発行によって病棟業務にシフトした。病棟に出向いて入院患者に服薬指導するだけでなく、多職種と連携して薬物療法の問題解決や改善を推進。一部の病院では救急部門や手術室に常駐したり、外来患者に関わったりするなど、院内で幅広く業務を担うようになった。

 国の施策で、医師でなくても行える業務は他職種に移管したり、協働したりするタスクシフトやタスクシェアが進んでいることも追い風になる。円滑な連携体制の構築には、医師と薬剤師らが事前に作成したプロトコールに基づき、協働で薬物治療を実施するPBPMという仕組みが役立つ。

 もっとも、全国の全ての病院で薬剤師が多方面に活躍できる環境が整っているわけではない。依然として、地方にある病院や中小病院の多くは薬剤師不足に直面しており、業務を広げたくても限界がある。

 この課題解決に向けた国の方針を受けて、今年度から各都道府県で始まった第8次医療計画の多くには、薬剤師確保策が盛り込まれた。今年6月の診療報酬改定で「薬剤業務向上加算」が新設されたことも影響して、地域の基幹病院から不足病院へ薬剤師を出向させる取り組みが各地に広がりつつある。薬学生の奨学金返済支援、地域全体での卒後研修体制の構築などで、病院への就職を促す動きも各地で増えそうだ。

 若い年代での薬局薬剤師との給料格差の解消も課題だ。病院薬剤師の生涯年収は薬局薬剤師に引けを取らないとされるが、奨学金の返済を抱える若い年代では、初任給の高いドラッグストアや薬局を就職先に選択する傾向が強い。

 今回の診療報酬改定には病院薬剤師等の賃上げの原資が盛り込まれた。実際に給与に反映した病院も多いが、格差解消にはまだ十分ではない。さらなる対策が求められる。

 マンパワーの確保に課題があるとはいえ、中小病院や地方の病院にはその病院ならではの魅力がある。医師との距離は近く、関わり方次第で薬剤師は医療に深く入り込める。就職にあたっては、その魅力にも目を向けてもらいたい。



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