薬局業界の将来を見据えると、地域医療で必要とされる医薬品や薬剤師のサービスを提供できる薬局が生き残ることになるだろう。人口減少が進む一方、全国の薬局数は6万2828軒と今もなお増加が続く。患者から選ばれるかどうかは、多職種や他の薬局と手を組みながら、地域住民のニーズを起点にキラリと光る薬局機能をビジネスとして磨き上げられるかにかかっている。
薬局経営は、コロナ禍の厳しい状況からは脱した。2023年度調剤医療費は8兆円を突破した。病院や診療所の外来で処方箋を受け取った患者のうち、院外の薬局で調剤を受けた割合を示した処方箋受取率(医薬分業率)も80%を突破した。
それでも、「一時的に回復に転じた」という見方が現実的であり、現在の延長線上で薬局が成長するのは厳しそうだ。処方箋発行枚数は伸びておらず、処方箋を多く獲得することで収益を拡大する薬局のビジネスモデルは、もはや限界にきている。薬剤料で見ると薬価改定が2年に1度の実施から毎年実施へと移行し、医薬品の価格引き下げが薬局経営を直撃している。
もはや全国の薬局が金太郎飴のように処方箋に依存するのではなく、各薬局が独自に成長シナリオを描く時代を迎えている。答えは「それぞれの地域」にあり、各薬局が模索していく必要がありそうだ。
19年の改正医薬品医療機器等法で、薬局の概念が「調剤する場所」だけではなく、OTC医薬品を含めて「医薬品供給を行う場所」になった。今年4月から各都道府県でスタートした第8次医療計画では、感染症対応や在宅対応が盛り込まれ、薬剤師確保計画も策定されている。それと連動して6月に調剤報酬の改定が行われ、記載されたのが「地域医薬品提供体制」だ。
国も地域単位で薬局が患者にどのような価値を提供できたかを評価するようになっており、薬局も薬局単位ではなく、多職種や他の薬局、さらには地域のステークホルダーと積極的に連携する必要がある。
地域医薬品提供体制では在宅医療への対応も重要だ。全国的に外来患者数がピークアウトし、在宅への移行が加速する。これまで在宅対応については介護報酬でしかあまり手が付けられていなかったが、調剤報酬改定でも評価されるようになった。
5年に1度のタイミングで見直す医薬品医療機器等法改正をめぐる議論では、主に在宅対応を行う薬局を「地域連携薬局」として認定する方向で見直しが進められており、在宅に強い薬局のニーズは今後ますます高まると見られる。
一方で、「健康サポート薬局」も現行の都道府県による届出制から認定制として法令に規定する方向で検討が進む。薬局による健康、未病・予防をターゲットとした新たなビジネスが今後広がっていくだろう。
アマゾン、ウーバーといった異業種が参入し、調剤併設のドラッグストアとしのぎを削る薬局業界で、薬局の将来を悲観的に捉える人もいるかも知れない。しかし、地域に根付いた薬局であれば十分に対抗可能で、薬局機能が多様化すれば業界はもっと成長できるはず。薬局の事業規模だけで就職先を選ぶのではなく、地域でどのような機能を保持しているかまで注目し、自分に適した薬局探しを行ってもらいたい。