【これから『薬』の話をしよう】生成AI時代の薬剤師と情報分析力

2025年4月15日 (火)

薬学生新聞

医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 近年、様々なメディアで生成AIという言葉を耳にする機会が増えました。生成AIは、従来のAIとは異なり、文章や画像、動画など、多様なコンテンツを生み出すことができる技術です。

 代表的な生成AIツールの一つに、米国OpenAIが開発したChatGPTが挙げられます。海外で行われた研究によれば、ChatGPTは医師国家試験に合格できるほどの潜在能力を備えていることが報告されています(PMID:39052324)

 かつて、インターネットの登場と普及が、情報の扱い方や私たちの生活様式を根本から変えたように、生成AIの普及もまた、あらゆる分野に影響を及ぼしつつあります。薬剤師の業務環境も例外ではありません。とりわけ、医薬品に関する情報を収集・活用するDI業務は、生成AIの導入によって、その概念が様変わりしていくかもしれません。

 生成AIは、新しい情報をゼロから創造するツールだと考えられがちですが、実際には、膨大な既存データを学習し、そこからパターンを抽出・再構成することでアウトプットを生み出しています。つまり、生成AIは情報を再構成する技術であって、情報を本質的に創造しているわけではありません。その意味では、生成AIの真の価値は、単なる情報生成ツールとしてではなく、情報分析ツールとしての秀逸性にあるように思います。

 情報それ自体に、大きな価値があるわけではありません。価値は、人が見出すものです。医薬品情報においても、添付文書に記載されたデータやランダム化比較試験の結果を、その背景や意図とともに分析しなければ、単なるノイズにすぎないでしょう。薬剤師の業務が、添付文書の情報を読み上げるだけで成り立つのであれば、その役割は生成AIに代替されていくはずです。

 情報の収集や整理と、情報から意味を見出し、意思決定に生かすことは全く異なる営みなのです。前者はインフォメーションの取り扱いに関するものですが、後者はインテリジェンスと呼ばれるものです。そして、このインテリジェンスを生み出すために不可欠なスキルが情報分析力です。

 生成AI時代において薬剤師に求められるスキルは、単なる医薬品情報の取り扱いではなく、その情報を適切に分析し、文脈に応じた意味を創出する力です。そのような観点からすれば、DI業務はDrug Informationではなく、Drug Intelligenceと呼ぶべきなのかもしれません。



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