薬学教育が6年制に移行し、3回目となる薬剤師国家試験(99回)が、3月1、2の両日で実施されます。1回目の6年制の薬剤師国家試験(97回)に比べて、2回目の98回は「考える力」を問う問題や「問題抽出」「解釈」「解決能力」を問う問題が多く、難易度の高い試験であったと言えます。総合格率79.1%と97回より低くなり、知識問題(暗記)だけでは合格できない試験となっていました。
第99回薬剤師国家試験も同じ傾向での出題になると予想され、「基礎力」「考える力」「問題解決能力」の3本の軸での出題と考えると、難易度の低下は考えにくく、難しくなる可能性もあります。
今回は、第99回薬剤師国家試験に向けた「最終チェック」として、合格を勝ち取る直前期の取り組みや、これだけは勉強してほしいポイントを紹介します。
「薬剤師国家試験の概要」から見える合格のポイント
改めて、薬剤師国家試験の出題区分と出題数、合格基準、試験時間を確認していきましょう。
[1]合格基準
試験の出題は厚生労働省から出された「薬剤師国家試験出題基準」に沿った内容で出題されます。出題基準が記載されている参考書を用いてください。必須問題90題と一般問題255題の合計345題の出題です。試験領域は、「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「法規・制度・倫理」「実務」の7領域です。
合格基準は、(表1)で示すように『全問題への配点の65%以上』『必須問題は、全問題への配点の70%以上、かつ各領域の配点の50%以上(足切り)』『一般問題は、各領域の配点の35%以上(足切り)』となっています。足切りがなく225問以上の正解を受験生は目指す必要があります。
よく受験生から質問があるのは、「物理だけで足切りにはなりますか?」ということです。化学も生物も同様ですが、「物理・化学・生物」という3科目で1領域になりますので、物理だけで足切りになることはありません。
また、各領域の出題数は(表1)で示すように医療系(「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「実務」)が215題であり、そのうち「実務」の出題は95題で、5年次から始まる「長期実務実習」の成果を確認する問題が多く含まれています。このように6年制の国家試験は、実際の医療現場で直面する問題などに特化したものであることが分かります。直前期は、出題数も多い医療系を中心に力を入れていくことが良いでしょう。
[2]試験時間を確認する
試験は、領域別に行うのではなく、薬学全領域を出題の対象として、「必須問題」と「一般問題」とに分け、さらに一般問題を「薬学理論問題」と「薬学実践問題」とした3区分で実施されます。
受験生の皆様に聞いてみたいのは、「いつまでが勉強時間だと思いますか?」です。「国家試験前日まで」でしょうか、「1日目の始まるまで」でしょうか。いいえ、違います。「2日目の最後の試験で、試験監督が筆記用具以外をしまってください」といわれるまでが勉強時間です。
(表2)に示すように、それぞれの休み時間には何を勉強するか、試験当日に持参する教材等は何にするかを決めておきましょう。最後の最後に『ココだけは必ず見る!』という“範囲”を用意しておくと良いでしょう。最後まで諦めないことが重要です。
次に、1問あたりにかけられる時間ですが、「必須問題」は1問1分、「一般問題」は1問2.5分で解く時間配分です。つまり、必須問題は5肢択一のやさしい問題ですが、一般問題は、暗記だけでなく理解力を必要とする問題が出題されることが分かります。
さらに言うと、初めて見た計算問題や化学の反応などを1問2.5分以内に解くのは難しい受験生もいらっしゃることでしょう。私が物理と薬剤を担当していることもあり、直前期の学生に言うのは『計算問題は最後に解きましょう』です。
文章問題も計算問題も同じ1問です。他には『薬剤の計算で時間を使いたいならば、薬理を早く解く意識を日頃から持ちましょう』です。そうすることで計算問題を考えることや見直しなどに時間を費やすことができます。どの試験時間にどの領域が出題されるのかを改めて見ることも大切です。
また、実践に即した問題抽出・解決能力を確認するために、実践の場で取り得る選択肢の中から「最も適切なもの」を選択する問題や、実践の場で取り得る明らかに「誤り」である選択肢を選択、または最も重要性が低い選択肢を選択する問題などが多く出題されることも知っておいてください。
[3]「必須問題」「薬学理論問題」「薬学実践問題」の直前対策
1)「必須問題」は、出題基準に沿った基本的な問題が多く、第97回では86.1%の正答率でした。全体の約1/4を占めるこの「必須問題」を仮に90%得点すれば、「一般問題」は56.5%得点すれば良いことになります。直前期は、この必須問題対策が大切です。各領域に登場する語句を覚えるのではなく理解することを心がけ、なるべく多くの問題を解きましょう。
2)一般問題の「薬学理論問題」は、国家試験や模擬試験を見ても、正答率が最も低いという結果でした。CBTや必須の問題に比べ、文章が長くポイントをつかみにくく読解力を必要とするためだと思います。しかし「薬学理論問題」での既出問題出題率(表3、表4)は高く約30%でした。やはり既出問題をしっかりと解くことが重要であると言えます。ただ、気を付けていただきたいのは(表4)にも示すように、98回の試験においては『再出題が1問もない』ということです。
一般問題は「薬剤師が直面する一般的課題を解釈・解決するための資質を確認する」ものであり、既出問題の丸暗記では点数が取れないようになっていると思われます。99回の試験においても再出題は期待できないでしょう。そのため、直前期の「薬学理論問題」の有効な勉強法は、7~8年分の既出問題を暗記するのではなく、周辺の事項を理解しながら勉強を進めることです。
3)一般問題の「薬学実践問題」は、症例や事例を挙げて臨床の現場で薬剤師が直面する問題を抽出・解決するための資質を問う問題で、実践力・総合力・基礎力を確認する出題です。「複合問題」や実践的な問題である「実務」は、共に医療現場を経験しなければ解けない「長期実務実習」の成果を意識した実践的な問題、薬剤師から医師への提案や今後薬剤師が取り組まなければいけない事例などが出題されます。
また複合問題は、実務と他の領域の連問です。今まで全領域を勉強していますから、直前期こそ患者背景や他の領域との関連を理解すること等を考えながら問題を解きましょう。