【日本薬学会第134年会】シンポジウムの話題

2014年5月1日 (木)

薬学生新聞


各大学の教員が薬学教育改革の実例を紹介した

各大学の教員が薬学教育改革の実例を紹介した

 日本薬学会第134年会が、3月27~30日の4日間、熊本市内の3会場をメインに開催され、全国から関係者約8000人が参加した。年会テーマは「薬を創り、薬を育み、命を衛る」。今回は、様々な領域で薬学に携わる研究者が集い、創薬から育薬にわたる最前線の研究を発信、分野の垣根を越えた薬学の将来に向けた活発な議論が行われた。関心を集めたシンポジウムを紹介する。

学生間の相互評価を導入

 シンポジウム「学部主導型薬学教育改革を目指して~第三者評価視点からみた教育改革」では、各薬系大学が進める薬学教育の新たな取り組みが紹介された。学生のパフォーマンスを評価する方法を工夫したり、低学力の学生を個別に丁寧に指導する体制を構築したりして、薬学教育改革を推進している事例が示された。

 摂南大学薬学部の荻田喜代一氏、安原智久氏は、学生間のピア評価やルーブリックという評価手法を導入した経緯や目的を説明した。

 ピア評価は、学生が相互に学生の評価を行うもの。同薬学部は2011年度から1年次のスモールグループディスカッション(SGD)にピア評価を試験的に導入。SGD終了後、学生は相互にグループの各学生を5項目5段階で評価する。約7割の学生がピア評価によってSGDの意欲が増すと回答するなど、学生はピア評価を好意的に受け入れているという。

 同薬学部は、ピア評価には教員評価と変わらない信頼性があると判断。評価項目に手を加えながら、ピア評価による測定をSGD総合的評価の価値判断に活用している。その背景について安原氏は、必要な能力が身についたのかどうかを、学生のパフォーマンスを観察して評価するが、「教員数には限界がある。評価者を増やすためにピア評価を開始した」と説明した。

 さらに14年度からは新たに、ルーブリックという手法を卒業研究の評価に導入することを決めた。これは、パフォーマンスの質を段階的・多面的に評価するための評価基準表。縦軸には評価の観点、横軸には評価のレベルを設定し、各項目の具体的なパフォーマンスを提示。「この観点についてこういうパフォーマンスを示したらレベル1に相当する、などと評価する」(安原氏)という。

 卒業研究評価用のルーブリックでは、[1]研究への取り組み[2]創意工夫[3]批判的思考[4]共同体形成[5]研究成果[6]プロダクト作成[7]プレゼンテーション[8]情報の収集と評価[9]問題解決能力――という九つの観点を設定。それらに対して▽秀でている(4)▽基準に達している(3)▽同(2)▽基礎要素を獲得している(1)――の4段階で評価する。例えば、研究成果の観点では「学会発表できるデータを得る」は(3)に相当する。

 このほか倫理観、コミュニケーション力、問題解決能力、薬物療法における実践力に関するルーブリックも作成した。

低学力の学生、個別に支援

 一方、北海道医療大学薬学部の和田啓爾氏、吉村昭毅氏は低学力の学生に対応するため、10年10月に設置した薬学教育支援室の役割や業務について解説した。

 ゆとり教育や少子化などを背景に同薬学部は6年制薬学教育の開始以降、集団での補習など従来の方法では学力が十分に向上しない学生の数が増えたことに頭を悩ませていた。その対策として同支援室を設置した。

 同支援室の教員室には教授、准教授、講師の3人が常駐。学生は、同支援室の学習室で自主的に勉強しながら、分からないことがあれば教員室を訪問し、質問する。教員は学生の基礎学力を判定し、それに応じて個別に分かりやすく、時間をかけて丁寧に指導する。学習環境を提供し、分からないことをなくし、自主学習を習慣づけるのが狙いだ。5~10人単位の少人数制の入門講座、基礎学力養成講座なども必要に応じて開講している。

 1カ月の利用人数は延べ300人~400人。2~3年生の利用が多いのは、専門科目が始まった時に、ついてこれない学生が出てくるためだ。特に、有機化学系科目が分からないと訴える学生が圧倒的に多い。学生は「分かった」と思えば、引き続き同支援室を訪れて学習するようになる。吉村氏は「学生の学習意欲が向上しているのは見ていて分かる」と語った。

 個別対応可能な学生数には限りがある。そこで12年度後半から、学生が自主的にグループを作って日時、場所を設定し補習講義を依頼してくるようになった。自ら学ぼうとする積極性が認められるようになったという。

現場意識した教育のあり方‐各領域の薬剤師が提言

 臨床の現場では、患者の問題を即断し、対応することが求められる。薬剤師に関しては、薬学6年制教育がスタートし、臨場感を持たせた教育、医療現場で他職種と患者情報等を共有するような教育のあり方が模索されてはいるものの、まだ十分に対応できていない。シンポジウムの中で、周術期医療や病院、薬局など実際の現場で実践的な取り組みを行っている薬剤師らが、何が臨床薬学教育に求められるかについて提言した。

周術期医療‐柴田氏「知識・技能つける機会を」
柴田ゆうか氏

柴田ゆうか氏

 周術期医療に携わる立場から、柴田ゆうか氏(広島大学病院薬剤部)は、「手術室では薬学的問題が多く存在する。周術期患者の医薬品の全ての使用場面で責任を果たす使命を薬剤師自らが示すことが求められる」との見解を示した。

 薬の選択と連携不足で起きた、術後覚醒遅延のインシデント症例が示された。薬剤師不在時に術後2時間経過しても覚醒せず、意識障害もあったため、脳出血を疑いCTを撮影。原因を遡ると術前の不安が強く、病棟でサイレースを注射していたことを確認した。

 「半減期が長い薬剤のため覚醒遅延は間違いなく起こる。薬歴を確認していれば、アネキセートで対応できていた」と薬学的視点の重要性を指摘した。

 広島大では麻酔科、手術部、薬学部の協力のもと、薬学部6年制の希望者を対象に手術室の見学実習を実施している。

 柴田氏は、「体制は不十分だが周術期医療における知識と技能をつける機会を作りたい。周術期医療に携わる薬剤師は少なく、その基礎ともいうべき手術と麻酔に関する薬学教育も十分と言えないのが現状だが、現場の臨床経験を薬学教育に還元することで、周術期の薬剤適正使用推進に貢献していきたい」とした。


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