2017年の保険薬局業界では、立て続けに薬剤師・薬局を巡る不祥事が発生した。17年1月には医療用医薬品の偽造品流通問題、4月以降には調剤報酬に関わる不正請求問題、いわゆる処方箋付け替え請求などが発覚した。こうした不祥事を2度を招かないという思いで、業界関係者らは失った信頼の回復に努めており、その取り組みや成果が注目される。
昨年1月、業界関係者らに衝撃を与えたのが、C型肝炎治療薬の偽造品問題だ。奈良県内の薬局チェーン「サン薬局」の店舗でC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が調剤され、患者の手に渡ってしまうという事件。偽造品は、現金問屋といわれる東京のエール薬品が個人から仕入れたもので、次々に同業に転売され、サン薬局に流れたという流通経路が判明している。
こうした事態を受け3月には厚生労働省が偽造品流通防止に向けた検討会を立ち上げた。6月に中間とりまとめ、12月には最終報告書案を大筋でまとめた。国際的な「医薬品適正流通基準」であるGDPに準拠した国内向けのガイドラインを整備し、自主的な取り組みを促すほか、医薬品卸売販売業の業務体制に係る基準を設け、許可基準に盛り込むことも求めた。不正な取引を行った薬局開設者の罰則のあり方をさらに検討する必要性も指摘。調剤業務を行わず、他の薬局などへの医薬品の販売・授与が業務の中心になっている薬局には、卸売販売業の許可を取得するよう促すことも盛り込んだ。
また、昨春以降は調剤薬局チェーンで処方箋の付け替えによる不正請求が相次いで発覚した。
最初に不正行為が発覚したのはクオール。4月、同社の「クオール薬局秋田飯島店」(秋田市)で、調剤報酬の調剤基本料を高く算定するため、他薬局の処方箋を受け付けたとする付け替え請求を行っていたことが発覚した。その後、8月にはアイセイ薬局が一部の薬局で処方箋の不適切な取り扱いがあったことを発表。10月にはクラフトが同社の「さくら薬局相馬店」(福島県相馬市)で、調剤報酬の付け替え請求が行われていたことを明らかにした。
3例目のクラフトのケースは、同社も会員である日本保険薬局協会(NPhA)が会員に対して自主点検を実施し、クオール、アイセイ薬局を除いて不正の事例報告は無かったと公表した後に発覚したことから、自主点検の信頼性に疑問符が付く結果となった。
こうした状況を受けて、NPhAではコンプライアンスの研修会を実施する等の対応を進めると共に、自主点検のやり直しも検討。前回とは異なった形での実施を念頭に、具体的な実施方法を検討している。
一方、「患者のための薬局ビジョン」を実現するためのアクションプランがまとまり、今後の薬局の進むべき基本的方針が示されている。4月、厚労省は非公開で検討してきた「患者のための薬局ビジョン実現のためのアクションプラン検討委員会」の報告書をまとめた。
アクションプランでは、薬剤師・薬局、国・自治体、関係団体が取り組む事項をそれぞれ明記。薬剤師に関しては、服薬情報の一元管理や24時間対応・在宅対応、地域の医療機関等との連携などが挙がっている。
薬局の取り組みの進捗状況を評価するための指標(KPI)も設定。服薬情報の一元的・継続的把握に関する指標に「電子版お薬手帳を導入している薬局数」、24時間対応・在宅対応に関する指標に「在宅業務を過去1年間に平均月1回以上実施した薬局数」、医療機関等との連携に関する指標に「地域ごとの地域包括ケアシステムに関する内容を含む研修を修了した薬剤師のいる薬局数」などだ。また、KPIの設定に関しては、「薬局ビジョン実現の目的を達成する手段であり、それ自体を目的としてはならない」と強調した。
関係団体に対しては、薬局が一体となって取り組んでいけるよう地域の実情に合わせた評価指標の設定も検討すべきと独自の行動を促している。