【対談 製薬企業社員×薬学生】薬の情報提供通じ医療に貢献‐臨床以外にも活躍できる場はある

2018年3月1日 (木)

薬学生新聞

ニーズを理解することが大事‐コミュニケーション能力あってこそ

 ――高澤さんは大学院に進まれたとお聞きしました。なぜ大学院に進もうと考えたのでしょうか。また、卒業される段階で大学院に進まれたのか、あるいは社会人として仕事を経験してから大学院に進学されたのかも教えてください。

 大学院(ビジネススクール)に進んだのは、製薬企業に就職してしばらく経ってからです。当時はマーケティング業務を担当していたのですが、マーケティングの仕事をしていくうちに、改めてマーケティングと経営について学びたいと思ったのがきっかけでした。会社のプログラムなどではなく、個人的に進学しようと思い、大学院は働きながら通っていました。

 私は、ずっと製薬業界のことしか知らないので、他の業界はどうなっているのかに興味がありましたし、マーケティング業務に限らず、他業種の企業ではどのような判断でマネジメントが行われているのかを学びたいという気持ちがありましたね。

 ――現在のメディカルアフェアーズの仕事において、部下の仕事をどのようにマネジメントして、どのように業務の質を担保しているのか教えてください。

 現在の部署は、オンコロジー領域や他社での経験など、様々な経歴を持っている人が集まっているグループです。いままでオンコロジー領域の経験がなかったり、オンコロジー領域の経験はあるものの、他社で働いていた人は弊社での業務の進め方を知らないこともあります。ですから、異なる経験を持つスタッフでペアを組んだり、チームを組んで業務にあたるように工夫しています。

 皆で協力しながら仕事をすることで、新しいこともできますし、質の担保もできると思っています。例えば、2人で業務に携わることでダブルチェックにもなりますよね。そういったスタッフの組み合わせによって業務を進めています。

 管理面では、最初にできるだけ業務の方針を確認し、すり合わせをしっかり行います。その時点で「少しハードルが高そうだ」とか「この体制では混乱する」などといった状況が予想できますので、スタッフと打ち合わせや確認するタイミングを決めて業務を進めています。他の業務で何か抱えているものがあれば、必要に応じて調整したり、優先順位を明確にしていますね。

 ――オンコロジー領域のメディカルアフェアーズ業務ではどのようなニーズがありますか。

 オンコロジー領域で特徴的だと思いますが、安全性に関する問い合わせが多いですね。抗がん剤は有害事象の発現頻度が高いですので、医療現場では、それをいかに管理して抗がん剤治療を進めていくかが鍵となります。私たちメディカルアフェアーズ部門では、そういった安全性をマネジメントするための情報提供にニーズがあると感じています。

 ――これまでのMRやマーケティング、メディカルアフェアーズの業務の経験で共通して役に立ったスキルや大事にしていることは何でしょうか。

 どの職種でもそうですが、相手のニーズを理解することが大事ですね。コミュニケーション能力、特に聞く力が大事だと思います。相手から話してもらっても、それが真意かどうかという、この聞く力は常に難しいと感じていますし、だからこそ必要だと思います。

 特に内勤業務では、様々な部署のスタッフと連携しながら仕事をしていきますので、調整力なども必要になってきます。これもコミュニケーション能力があってこその仕事だと思います。私が大事にしていることは、周囲の方々への感謝、尊敬の気持ちが本当に大事だなと思います。そう思ってもらえるような仕事をしなければいけないといつも自分に言い聞かせているところです。

 ――現在のメディカルアフェアーズの業務で難しいと感じている部分はどのようなところですか。

 そうですね、メディカルアフェアーズに限ったことではありませんが、何かを思い切って止めるということが難しいかもしれません。既存の業務を少し変える改善という方向に進めることはそれほど難しくないと思っています。

 しかし、これまでの業務を中止する判断となると、やはり今まで慣れ親しんだ人との関係性だったり、否定的な意見が出たり、新しい方針に対して批判的に感じたりする人も出てきます。私自身も止めることを伝える勇気が必要になりますし、中止して方針転換する、あるいは完全に止めるといった様々なケースがあると思います。

 その意図をしっかり説明して、理解してもらわなければ中途半端になってしまうと思うんですね。そういったことからも、何かを思い切って止めるということに対して、難しいと感じています。

他人の意見に触れ、自分で改善する経験を

 ――製薬業界で求められているのはどのような人材でしょうか。

 昨今のIT技術を始め、技術革新によって製薬業界の取り巻く環境も大きく変わってきています。そうした様々な環境の変化があっても、柔軟に対応できることが必要とされているのではないかと思います。また、環境変化に柔軟に対応できるだけではなく、チャレンジ精神も大切ではないでしょうか。また、製薬企業は生命関連企業ですので、患者さんを中心に考える倫理観や誠実さも必要だと思います。

 ――最後に薬学生に一言メッセージをお願いします。

対談を終えて

対談を終えて

 就職して社会人になると、まとまった時間を取ることが非常に難しいです。私は働きながら大学院に行きましたが、その時も仕事との調整が本当に大変でした。やはり、学生時代に時間を有効に使って勉強すればよかったとも思っています。

 学生時代は勉強に限らず、時間を有効に使って何かに打ち込んだり、いろいろな経験ができるいい時期です。だからこそ、大事に時間を使っていただきたいなと思います。何か一つのことを突き詰めるにしても、いろいろな経験をするにしても人それぞれです。その中でどう感じたのか、どう考えたのか、また他の人の意見に触れることはいい機会ではないかと思っています。

 違う世界を見て、他人の意見に触れ、自分がどう改善したか、どう自分なりの工夫をしたか、そういった経験が今後の社会人生活に役に立つと思っています。ぜひ有意義な時間を過ごしてください。


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