ニュースダイジェスト

2018年11月1日 (木)

薬学生新聞

敷地内薬局、深まる混迷‐誘致事例64件と日薬公表

国立大病院側は反対論に不満

 敷地内薬局をめぐる混迷が止まらない。反対の論陣を張る日本薬剤師会は全国の敷地内薬局の誘致状況を調査した結果、把握できただけで全国33都道府県に64件あることを公表。大学病院の総本山とも言える東京大学医学部附属病院にも敷地内薬局の設置が予定されており、東京都薬剤師会は反対を表明している。ところが、国立大学附属病院長会議は、敷地内薬局の設置状況を調査した結果を公表し、設置済みと設置準備中、検討中まで含め16大学に上ることを明らかにし、薬剤師会の反対には「なぜ怒られるのか分からない」と不快感を示す事態となった。政府の規制緩和で決まったことだが、薬剤師会は安全性などの反対理由を挙げている。それが国民の理解を得られるか不明な情勢である。

 日薬の調査によると、敷地内薬局は28都道府県48件となった昨年の調査結果から5都道府県16件増えていることが分かった。敷地内薬局を誘致している医療機関の内訳を見ると、国公立病院が23都道府県(前回15都道府県)30件(19件)と大きく増加している状況が目立った。また、日赤病院など公的病院が8都道府県(8都道府県)8件(8件)と変わらず、社会保険病院はゼロ(1都道府県1件)、その他が15都道府県(16都道府県)26件(20件)となった。誘致事例がある64件のうち、病院による公募などの情報は確認していないものの、都道府県薬剤師会が敷地内薬局誘致に関する情報を入手している事例は15件だった。

 これに対し、国立大学附属病院長会議は10月5日、敷地内薬局の設置状況を調査した結果を公表した。4国立大学病院で設置済み、設置準備中と検討中を含めると16大学に上ることを明らかにし、国立大学病院の約3分の1の敷地内に薬局が設置される可能性があることが分かった。

 敷地内薬局の設置は、政府の規制改革会議による答申を受けて、薬局の経営の独立性確保を前提として、2016年10月から解禁された。同会議が各大学における設置状況を調査したところ、千葉大学、新潟大学、島根大学、滋賀医科大学の4大学病院で敷地内薬局が設置されていることが分かった。

 同会議の山本修一常置委員長(千葉大学病院長)は、日本薬剤師会などの反対論に対し、「敷地内薬局は患者さんにとって利便性が圧倒的に高い」と強調。「政府が認めた規制緩和に沿って設置しているのであって、法律に触れることはやっていない。なぜ怒られるのか」と反論した。薬剤師会も反対しているものの既に解禁されており、反対運動は難しさを増すことが予想される。

後発品薬剤料が1兆円超え‐17年度、数量シェア7割突破

 厚生労働省が発表した2017年度の概算医療費は42兆2000億円と過去最高になった。C型肝炎治療薬の影響で14年ぶりに減少に転じた前年度から2.3%増となった。調剤医療費(電算処理分)は前年度比3.1%増の7兆6664億円。技術料は1兆9122億円、薬剤料は5兆7413億円となった。特に後発品の使用促進策を背景に、薬剤料のうち後発品薬剤料が初めて1兆円に達し、昨年度の後発品数量シェアも70.2%と7割を突破。政府目標の8割に向けてラストスパートに入ったことがうかがえる。

 調剤医療費は、3.1%増の7兆6664億円となった。C型肝炎治療薬の影響がなかった13年度と比べて伸びは低くなっているが、後発品の使用促進などにより、1種類1日当たり薬剤料の伸びがわずかなマイナスになったことが要因と考えられている。

 その内訳は、薬剤料が2.9%増の5兆7413億円となり、その中で後発品薬剤料は16.9%増の1兆92億円と、初めて1兆円を突破した。技術料も3.4%増加し、1兆9122億円に達した。技術料のうち、調剤基本料は8.4%増の5478億円、調剤料は1.7%増の8554億円、加算料は2.0%増の1391億円となっている。

 処方箋1枚当たりの技術料は2.3%増の2292円となった。処方箋1枚当たりの薬剤料は、1.8%増の6880円。そのうち、内服薬の処方箋1枚当たり薬剤料は0.8%増の5598円となった。1種類1日当たり薬剤料が前年度の9.1%減から0.4%減とマイナス分が大きく減ったことが影響した。

 後発品の割合を見ると、昨年度末の数量ベースは新指標で73.0%となった。昨年3月時点の数量ベース68.6%から伸び幅が4.4ポイント増加した。年度ごとの平均は数量ベースで3.4%増の70.2%と7割を突破した。

 さらに、後発品割合別の保険薬局数を見たところ、今年3月時点で数量シェア65%未満の薬局は23.7%と昨年3月時点の30.7%から減少した一方、65%以上の薬局は76.3%と7割を大きく上回った。75%以上の薬局も56.8%と半数を超えるなど、後発品の使用が急速に浸透していることがうかがえた。

【17年ヒヤリ・ハット集計】薬局の疑義照会が過去最多‐薬剤師の安全意識向上示す

 日本医療機能評価機構がまとめた2017年の薬局ヒヤリ・ハット事例の集計結果から、昨年の薬局におけるヒヤリ・ハット事例の報告件数は6084件で、そのうち医療機関で発生した処方の誤りを薬局で発見した疑義照会関連の事例が前年から約900件増の2234件と過去最多となったことが分かった。ヒヤリ・ハット事例全体に占める割合も36.7%と前年から9.2%の大幅な高まりを見せ、初めて3割を超えた。薬局薬剤師の安全意識の高まりにより、患者への重大な健康被害を防げている実態が鮮明になった格好で、薬剤師の活動を後押しする勇気づけられるデータといえよう。

 17年に報告されたヒヤリ・ハット事例を見ると、調剤関連が前年と比べて262件増の3823件(62.8%)で最多となった。疑義照会関連は2234件(36.7%)で、前年より875件増加。09年の調査開始以来初めて3割を超えた。件数も過去最多となり、薬剤師が水際で副作用を防ぐ事例が急増していることが分かった。

 18年度調剤報酬改定では、施設基準として医療安全に関する取り組みの実績を求める「地域支援体制加算」が新設されており、こうした制度改正が今後ヒヤリ・ハット事例のさらなる報告増につながる可能性もある。

 疑義照会に関する項目では、仮に変更前の処方の通りに服用した場合、患者に健康被害があったと推測される事例が1508件(67.5%)、患者に健康被害が生じなかったが医師の意図した薬効が得られなかったと推測される事例が726件(32.5%)だった。変更内容については、薬剤変更が671件、薬剤削除が595件、分量変更が526件の順で、前年から分量を変更した事例の増加傾向が続いている。

 一般名処方に関するヒヤリ・ハット事例を分析したところでは、昨年報告された6084件のうち723件と、前年より300件以上増加した。全体に占める割合は11.9%で、初めて1割を上回った。調剤に関する事例は539件で前年より232件増加し、疑義照会に関する事例は184件で78件増加した。

 一般名処方に関するヒヤリ・ハット事例は、16年から増加率が高まっており、後発品の使用促進策が加速する中でヒヤリ・ハット事例も増加していることがうかがえた。


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