【薬学生 キャリア相談Q&A】医療職に向いていないのではと不安です

2022年3月1日 (火)

薬学生新聞

キャリア・ポジション代表取締役
西鶴 智香

西鶴智香氏

Q

 薬学部5年生です。医療職にはよく、医療人マインドが必要と言われますが、私は、医師や看護師のように、「何よりも患者さんのために」というモチベーションからではなく、投与する薬の有効性に興味があるので病院薬剤師になりたいと思っています。患者のことを一番に考えられない自分は、医療人に向いていないのではないかと不安です。

A

 薬剤師の仕事が「対物から対人へ」変化するというスローガンを聞いたことがあると思います。従来、薬剤師が重視していたのは、「医師が処方した薬を正しく患者に渡すことを目的とした調剤業務」でした。時代の変化と共に、調剤業務の大部分を機械化できるようになり、薬剤師はその専門知識を使って価値を出せる業務は何かと、問われているのです。

 私は、薬の専門家である薬剤師に求められているのは、患者の意思に沿った最も効果的な薬の選択ではないかと思いますが、あなたはどう考えますか?そのためのエビデンスを探し、いろいろな指標を比較しながら最適なものを医師に提案する。こう考えると、薬の有効性への興味は、まさしく医療現場で求められていることだと思いますよ。

 忘れてはいけないのが、患者の意思に沿った薬の提案を行うためには、患者としっかり向き合う力が必要ということです。医師の養成においても、「病気を診るのではなく患者を観よ」という言葉があります。患者の病気だけに興味を持ってしまいがちな医師を戒める言葉ですが、薬剤師も、「薬だけを見るのではなく、その薬を服用する患者を観よ」ということです。

 以前私が関わった新人薬局薬剤師で、国家試験の合格で人生の目標を達成でき、燃え尽きた様子の方がいました。1年目は仕事にやる気が出ずモチベーションが上がらないと言っていましたが、2年目にお会いした時には見違えるように変貌していました。何があったのかと聞くと、「在宅業務で自分と同じ20代の末期がん患者を担当した。『人生の時間は短いんだよ、頑張ってね』と言われ、自分の生き方が恥ずかしく感じた」と教えてくれました。

 私は「ようやく医療人として働く心構えができたんだな」と思いました。人は、こうやって仕事をしながら、いろんな経験を積んで変化し続けます。それを信じましょう!今の自分に向いているかではなく、本気で医療人をやる気があるのかどうか、だと思いますよ!



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