【日本CRO協会】CROで薬学出身者が活躍‐「ありがとう」の言葉がやりがい

2014年5月1日 (木)

薬学生新聞

 製薬企業から医薬品開発業務受託機関(CRO)への外部委託が進み、医薬品開発環境は転換期を迎えている。2013年の国内CRO市場は前年比2.9%増、特に中核のモニタリング業務は約5%増と成長。CROの臨床開発モニターに対する信頼感が高まっている。CRO「イーピーエス」のモニターとして医療現場で活躍しているのが、薬学出身の吉田紘子さん、小野絢子さんの二人だ。「GCP」や「治験実施計画書」という治験のルールの中で、臨機応変な状況判断が求められる。新薬を世に届ける責任の重さを日々感じながらも、患者やドクターからかけられる「ありがとう」という感謝の言葉が、彼女たちの大きなやりがいにつながっている。

臨床開発モニター職とは
 臨床試験が関連法規や実施計画書に則って正しく実施・記録・報告されていること、また被験者の人権・安全・福祉が保護されているかを保証することをサポートする業務。

治療に苦しむ患者のために

 ――まずは自己紹介をお願いします。

 吉田 東京理科大学薬学部卒で、2008年に入社しました。中枢神経系疾患である双極性障害を対象とした国際共同治験にかかわっています。プロジェクトリーダーと若手社員をつなぐ役割を担っています。

 小野 同志社女子大学薬学部卒で、12年に入社しました。糖尿病の患者さんを長期間にわたって追跡する市販後アウトカム試験を担当しています。治験施設を担当しています。

 ――CROを志した理由は。

吉田 紘子さん イーピーエスCRO事業本部臨床開発事業部 モニタリングセンターモニタリング3部3課課長補佐 東京理科大学薬学部卒 入社7年目

吉田 紘子さん
イーピーエスCRO事業本部臨床開発事業部
モニタリングセンターモニタリング3部3課課長補佐
東京理科大学薬学部卒
入社7年目

 吉田 新薬開発に携われる点に魅力を感じました。幅広い分野の新薬開発に携われるチャンスがあるのがCROの良さ。姉がCROでモニターをやっていたこと、薬学部の先輩方でも活躍されている方がいましたので、入社前からどんな仕事であるかイメージができていました。

 小野 薬学部である以上、薬剤師という選択肢もあったのも事実です。ただ、薬局や病院の調剤だけになってしまうと、今ある薬剤のみでしか患者さんに処方できず、それだけでは治らない患者さんもたくさんいることを薬局実習で実感していました。

 CROを志したのは、新薬開発の仕事に携わり、治療満足度の低い患者さんのお役に立ちたいと思ったからです。薬学部で学んだ疾患知識を生かせるのではないかと思ったのも理由の一つです。

 ――吉田さんの仕事のやりがいは。

 吉田 自分が開発にかかわっていた薬剤が紆余曲折を経て、販売されるときです。

 ある試験で、薬剤投与後に症状が改善するきれいな症例データを取ることができました。治験依頼者である製薬企業の方からお礼を言われました。自分が携わったデータをもとに、承認申請され、薬剤が世に出て行く瞬間を体感できるのは、モニターとして大きな喜びだと思っています。

 臨床試験は簡単に進むものではありません。医師も病院のスタッフも人間ですから、決められたルールを守って進めていくためには、私たちから医師に提案していく交渉力が必要です。医師と一対一で話をするためには、医学的な知識も求められ、こうした環境下で仕事をすることで、成長できるのが楽しいです。

 ――小野さんは入社3年目ですが、どういう点が成長したと感じていますか。

 小野 もともと、人とコミュニケーションを取ることが苦手でした。仕事上で、医師に問い合わせをするときに、話の切り出し方、その後の進め方を自分で考えて実行できるようになりました。入社時に比べると成長したのかなと思いますし、こうした自信がやりがいにつながっています。

開発に携わる誇りと責任感

 ――患者視点が製薬業界で求められています。業務の中で医療貢献を感じた瞬間を教えて下さい。

小野 絢子さん イーピーエスCRO事業本部臨床開発事業部 モニタリングセンターモニタリング1部6課 同志社女子大学薬学部卒 入社3年目

小野 絢子さん
イーピーエスCRO事業本部臨床開発事業部
モニタリングセンターモニタリング1部6課
同志社女子大学薬学部卒
入社3年目

 小野 3年目の私は、新薬上市の達成感を味わったことがないのですが、被験者のカルテをみて症状が改善しているのを見たときに、患者さんの力になれたと思えます。

 吉田 被験者の方に記載していただく日誌に「治験に参加して良かった」とのコメントが書かれていたことがあります。また、治療効果の高い薬剤については、医師も、「良いくすりだね」とはっきりと言葉にするものです。

 今までなかった薬剤が、データと共に形作られて、承認申請されて、発売される。そして、何千人、何万人の患者さんが救われる。薬剤開発に携われるのを誇りに思います。

 その一方で、製薬業界で働く責任感を感じますね。きちんとしたデータなのに、記入不備があると、後から疑われてしまうこともあります。苦しんでいる患者さんを助けるために、ルールを守って治験を進めていただくために、モニターから医師や医療機関のスタッフの方に伝えるべきことは伝えていく。そんな責任感が求められていると思います。

 小野 私もひしひしと感じています。

 ――小野さんが苦労しているところを教えて下さい。

 小野 大学6年間で薬剤のことをたくさん学んできたつもりでしたが、実際に臨床現場で検査データや被験者のカルテを閲覧し、医師への問い合わせをする際、自分の持っている知識だけでは足りないなと実感しました。例えば、インターネットで調べた知識と臨床現場の状況には乖離があります。毎日、いろいろな方に教えられることばかりです。

 ――吉田さんは、入社3年目のときの自分はどうでしたか。

 吉田 3年目の頃は、まだまだ初めてのこと、慣れていないことばかりで大変でした。目上の方、特に医師を相手に、こちらが考えていることに対応してもらえるよう、お願いをしたことも苦労したことの一つです。

 患者さんのデータを集積していく中で、状況が刻々と変化していくのが臨床試験です。時には、1週間前にお願いしたことと、全く逆のことを施設側にお願いしないといけないケースもありました。相手に理解してもらうためにどう説明したらいいか、試行錯誤の連続でした。

 ただ、経験を積んでいくにつれて、相手に伝えるためのポイントが分かってきました。まずは、「根拠」を深く考えること、そして、試験の全体像を理解した上で、どのような行動が最適であるかを突き止める。相手に伝えるための論理構築は、経験を通じてできるようになってきました。

 小野 吉田さんのおっしゃる通りで、一週間後には、対応していただくことが変わったりする場合もあります。どういう形でお願いすればいいか苦労しているところです。


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