【日本CRO協会・就職座談会】業務の幅広がる医薬品開発

2015年1月1日 (木)

薬学生新聞

出席者

井上 一成氏(エイツーヘルスケア)
水田 紗由美氏(パレクセル・インターナショナル)
大圃 麻衣子氏(DOTインターナショナル)

出席者

 医薬品開発受託機関(CRO)は、先輩が働いていたり、大学によっては治験に関連した講座があったりするなど、薬学生の皆さんには聞き覚えのある業種になっているかもしれない。仕事内容といえば、治験がルールに従って実施、記録および報告されていることを保証する「モニター」のイメージが強いが、製薬企業から医薬品開発全体を受託するようになり、近年では業務の多様化が目立つ。薬学生の主な就職先の一つになっているCROに関して、日本CRO協会に加盟する人事担当者から「職種の広がり」や「求める人材」などを語ってもらった。

将来のキャリア選択肢多く

 ――採用活動を担当して、薬学生の強み、CROに対する学生・大学の反応は。

水田氏

水田氏

 水田 新卒採用に関しては、理系であれば学部・学科は問わないのが弊社の方針ですが、全体の約半数の学生が薬学部の出身者です。入社後の様子を見ていると、薬学部出身者の新卒社員はCROで働くイメージをより明確に持っていて、薬学6年間で学んだ土台があり、業務で必要な基礎知識がしっかりしているという印象です。CROの業務にもスムーズに入れておりますし、すぐに活躍できる。これはアドバンデージですね。

 大圃(おおはた) 弊社は起業して8年で新卒採用を開始してまだ3年と日は浅いです。業界として20年が経過し、CROに興味を持つ学生さんが増えて、認知していただいている実感はあります。ただ、CROをどこまで知っていただいているかについては、各大学でややバラツキがあるように感じます。

 井上 薬学部の先生方、大学就職課、学生さんと話をすると、多くがCROといえば「モニター」や「CRA」という言葉が返ってきます。もちろんCRAに従事する方が多いのは事実ですが、実際には、モニター以外にも、症例データを倫理的、科学的に処理するデータマネジメント(DM)や統計解析、承認申請に必要な書類・論文などを作成するメディカルライティング等、いろいろな仕事があり、業務の幅も広がっています。業界の成長と同じく、業務も幅広く、多様化していることを説明しています。

 ――入社後の配属先、その後のキャリアパスは。

 水田 弊社の場合、新卒社員の配属はほぼモニター職のみとなっていますが、社員の適性や希望に応じてその後のキャリアパスを提示しています。例えば、モニターからマネージャーへと昇進する場合もあれば、内勤モニターのようなポジションやDMなどの別のキャリアに進むことも可能です。入社後にどうキャリア形成ができるかを就職活動時に真剣に考える学生も増えていますので、キャリアパスに関する説明は興味を持って聞いていただいている印象です。モニターをご経験いただくことは、臨床開発の全体像を把握していただくのにも非常に有効だと思いますし、様々なキャリアで生かせる経験になると考えています。

 井上 現在、弊社は、職種別に採用を行っていますが、ジョブローテーションも徐々に行っており、各職種とも総合職としての考え方で採用しています。

 大圃 モニターをメインに採用していますが、DMや品質管理、メディカルライティングといったキャリアパスがあるとアナウンスしています。今年4月に入社した新卒社員の事例では、統計解析部門に入ったケースもあります。本人との話し合いの中で、会社としても統計解析に適性があると判断しました。現場で活躍しています。

井上氏

井上氏

 井上 大学で臨床開発に関する講座を履修し、モニター以外の仕事もしてみたいという学生も増えています。モニターからキャリアを出発するという道もあれば、最初から自分がやりたいことを突き詰めて、例えば統計解析やDMといった専門性で勝負していく選択肢も用意されているといえます。これもCROの業務が広がっている証拠です。

 大圃 後輩を指導するという経験も大きいです。今年で3年目となる第1期の新卒社員は業務を一通り経験し、人によっては役職もついている社員もいます。責任を感じながらも刺激を受けることでモチベーションになって、良い方向に進んでいます。

 水田 CROで働きたくて入社した新卒社員が、業務で壁にぶつかりながらも、それを頑張って乗り越えていくのを見るたびに、着実に成長しているなと嬉しくなります。

「チームプレー」「連帯感」が魅力

 ――CROのやりがいは。

 井上 薬学生の就職先は、メーカー研究職やMR、病院薬剤師や調剤薬剤師と様々な選択肢がある中で、医薬品開発職、CROのやりがいを一言で言えば、“チームプレー”という連帯感を得られる業界だと思います。

 医薬品は長い年月をかけて開発が行われ、臨床試験データをもとに承認申請を行い、承認後にようやく医療現場で使えるようになります。モニター1人が仕事をしても、チームの仲間がきちんと業務を遂行しなければ目標を達成できません。目標を共有し、多くの人に支えられ、助け合いながら仕事を進めていく業務の特性は、短距離走ではなく、全員でタスキを渡してゴールを目指す駅伝に似ているように思います。

 だからこそ、そうやってできた薬が世の中に出て、病院の先生や薬剤師の方の手によって処方・調剤が行われ、患者さんの手元に届けられたときに、大きな達成感を味わえます。

 ――どんな人材に来ていただきたいですか。

 井上 「ドラッグラグ」や「国際共同治験」という言葉がよく学生から出てくるようになりました。国際化への対応は着実に進み、日常業務でも英語を使う場面が増えています。業界が成長し、業務が多様化する中、広い視野で物事を考えられる人材を求めたいと思っております。薬学知識という点で優位に立つ薬学生がそれを獲得できればさらに大きな強みになります。

 水田 自己研さんして成長する心構えを忘れずに、研修や実務を通して様々なことを吸収していただきたいです。また、緻密さはもちろん、突発的な事態にも臨機応変に対応する能力が求められます。他人から指示を待つだけではなく、自ら進んで行動できる方、また率先して変化に飛び込んでいける方にご入社いただきたいですね。

 井上 よく「医薬品の研究開発」という言われ方をしますが、医薬品の創製や合成に関わる「研究」と、医療機関で被験者に医薬品を投与し、有効性や安全性を評価する「開発」は関連は深いですが、異なる面もあります。開発職として働くのであれば、医薬知識に加え、幅広いコミュニケーションスキルも必要になってきます。

大圃氏

大圃氏

 大圃 コミュニケーションスキルについては、今年入ってきた新卒社員も半年前に比べればずいぶんと変わってきています。社会人1年目に業界マナーを1から学び、いろんな方との接点の中で、コミュニケーションスキルやチームワーク、協調性を身につけてきています。何事も吸収しようとする気持ちが大事です。

 井上 薬学卒でCROに入社した方で見ると、プロジェクトリーダー、サブプロジェクトリーダーに若くしてなっている人材もいます。プロジェクトをミスなく進める細やかさはもちろん重要ですが、周囲とのコミュニケーションを通じて、これまでのやり方に縛られず、チームでよりよい結果を生み出すための新しい手法を提案できる人材に出会いたいと思います。失敗を恐れないチャレンジ精神も期待したいです。


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