“七転び八起き”でリーダーに‐製薬企業や医師からも厚い信頼
エスアールディ 二藤 望さん
医薬品開発の面白さに惹かれ、CRO「SRD」の臨床開発モニター職に就いた二藤望さん。薬学部を卒業し、SRDの生え抜き人材として、失敗でつまずきながらもたくましく成長してきた。今では臨床開発部課長として後進の指導に力を注ぐ。若き日の失敗が自分を育ててきた思いが強いからこそ、若手社員にはどんどん新しい仕事に挑戦し、そこでの失敗をバネに成長してほしいと語りかける。「誰かがミスをしたときに、手順やシステムでその後のミスの再発を防いでいけるようにしたい」という力強い言葉に、リーダーとしての自覚が強く滲んだ。
つまずきから成長‐薬学卒でモニターに
二藤さんのキャリアはつまずきの連続だった。本当は製薬企業の研究職を志望していたが、思いは叶わなかった。それでも医薬品開発に関連した職種をあきらめられない中、研究室の先輩からCROのモニター職を紹介され、偶然秋採用を実施しているSRDに応募。縁があって採用され、2005年に入社した。
入社3~4年目までは皮膚科領域の治験を担当した。モニター職として一つひとつの仕事が達成感だった毎日。中でも治験実施医師との仕事は、二藤さんをモニターとして大きくさせた。
でも最初はつまずいた。治験を開始するにあたっては、治験担当医師から履歴書をもらう手続きが必要になるが、送付した履歴書をまた送り返してもらうための返信用封筒を入れ忘れたまま郵送してしまうミスが2回続いた。すぐに二藤さんの電話が鳴る。「社会人としてどうなのか」。上司といっしょに謝罪に向かった。
「それ以降、準備に気を付けるようになった」と二藤さん。最初はSRDという会社の名前、もしくは治験依頼者の製薬企業名で呼ばれていたのが、“二藤さん”と声をかけてもらえるようになったのは信頼を勝ち得たから。一つひとつの仕事の準備に時間をかけ、真面目にやり遂げる姿があった。医師からの、「君は僕が育てたようなものだからね」という言葉をありがたく感じ、担当が変わることを医師に告げるときには「今度、飲みに行こうか」と誘ってくれた。医薬品開発のパートナーである医師と距離感を縮めることで、薬剤や疾患に関する知識を多く学んだ。
そして医薬品開発業務を引っ張るプロジェクトリーダーという立場になった。やる気のある若いモニターをリーダーに登用するSRDにおいて二藤さんが抜てきされた。その期待に応えようと全力で立ち向かった。
しかしプロジェクトリーダーという仕事は、現場のモニター業務とは異なり、治験の進行やチームスタッフの教育といったマネジメントのスキルに加え、製薬企業との折衝などが要求されるなど簡単ではない大変な仕事だ。
ある薬剤の治験で第II相試験を終え第III相試験に移行する際に、競合のCROと受注を競うコンペに参加したが、受注を落としてしまった。SRDが第II相試験を経験しており、他社に比べ有利な立場にあったにもかかわらず、仕事を取ることができなかったことが二藤さんを落胆させた。
「モニターの動かし方に問題があったり、試験期間についても当初予定していた試験完了のスケジュールから後ろ倒しになってしまい、他のCROに比べてプロジェクトマネジメント機能が弱かったと判断されたのではないか」。リーダーとして何が足りないかを考える大きなきっかけになった。
意識の変革が奏功し、次第に評価を得られるようになった。製薬企業に対しては、CROに何を求めているかを考え、提案するようになった。例えば治験を実施する医師との対話で、開発薬剤が上市した後でのマーケティングに役立つ情報を収集できれば、それを製薬企業にフィードバックするという取り組みも実践した。治験実施医師には、治験薬概要書以上の薬剤に関する情報を提供することを心がけた。
臨床開発チームの舵取りも担う。各部署の言い分を聞き、チームとして進むべき方向性を示していくリーダーを模索する。仮に誰かがミスをした場合には個人の責任だけで事態を収拾するのではなく、手順やシステムを点検し、チームとして同じミスをしない品質保証体制づくりも行っている。
二藤さんは、「リーダーとしてまだまだ成長途中。モニタリング業務のリーダーとしてプロジェクトを成功させていきたい」と謙虚な姿勢を崩さない。目指すのは、1人でも優秀な人材をつくっていくこと。例えば、自分のチームから他のプロジェクトに移り、そこでエース級として活躍、その後リーダーに育つという姿だ。
製薬企業の開発戦略にも関与し、グループ内から生まれた創薬シーズを上市させるという夢もある。SRDグループ内にはひまわり製薬という創薬企業もあり、実現したい目標はまだまだたくさんある。
風通しのよい社風‐若手社員を支える
失敗を重ねながら成功につながるヒントを見つけて、まさに“七転び八起き”でここまで成長してきた二藤さん。SRDグループには「挑戦と失敗」というビジョンがあり、役職ではなく「さん」付けで呼び合う風通しのよい社風が、若いモニターの背中を押す。二藤さんのようなリーダーが、転びそうになる若手社員を後ろから支える。
「CROの事業環境が変化し、モニターに求められるスキルが増大している。薬剤知識が武器になる意味からも、薬学生にはチャレンジしていただきたい」と若い仲間を心待ちにしている。