キャリア・ポジション社長
西鶴 智香
今月からのテーマは「プロとは何か」についてです。薬剤師の仕事は、未だに国民から正確に理解されているとはいえません。例えば患者は、処方箋を薬局に持って行って待たされると、たとえ薬剤師が、必要があって医師に疑義照会を行っていたとしても「どこかに電話してるヒマがあるなら、早く出して」などと言いかねません。そうなると薬剤師は患者の要望に応えようと、薬を早く渡すことを重視してしまいがちです。
ここで考えたいのは“薬剤師の使命”です。それは一体、何でしょうか?薬剤師法1条によると、薬剤師の任務は「調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」とあります。もっとわかりやすく簡潔に言うと、何をすることでしょうか?
私は薬学部のキャリア講義や社員研修で、薬学生や薬剤師に「薬剤師の使命とは何か」と問いかけています。すると、「患者一人ひとりに合った薬を出すこと」「疑義照会をして、正しく調剤すること」などの回答が返ってきます。そこで私は再度質問します。「そのことは、ある目的を達成するための行為ではないか」。再度問います。「薬剤師は、仕事を通じてどんな目的を達成したいと思っているのか。それが使命ではないか」
そうすると今度は「その人のQOL(人生の質)を上げること」との声が挙がります。しかしQOLの向上となると、他の多くの職種もその使命を持っています。例えば、私のようなキャリアカウンセラーも、カウンリングという行為によってクライアントは快適な生活に戻ることができるので、使命にはQOLの向上も当てはまります。
医師の使命とは何でしょうか。医師の使命は、病気を治すこと。治せないなら医師は要らないといわれます。その使命感で医師は日々の自己研鑽を怠らないのだと思います。では、薬剤師の使命とは一体何でしょうか。何のために薬剤師は存在しているのでしょうか。じっくり考えてみてください。