【対談 看護学生×薬学生】他職種の考え知り、連携深めよう

2018年11月1日 (木)

薬学生新聞

一番左から時計回りに藤原さん、清水さん、小倉さん、中林さん

一番左から時計回りに藤原さん、清水さん、小倉さん、中林さん

 薬学生と看護学生は共に授業も多く、何かと忙しいのが現状で、同じ大学に薬学部と看護学部があっても交流を持つ機会はそれほど多くないのではないでしょうか。今回は実習を終え、卒業を控えた看護学生団体IONの藤原怜峰さん(筑波大学医学群看護学類4年)、清水えりなさん(北里大学看護学部看護学科4年)の2人と、数年後に実務実習や就職活動を迎える日本薬学生連盟の中林拓己さん(東邦大学薬学部薬学科4年)、小倉由末佳さん(明治薬科大学薬学部生命創薬科学科1年)の2人がお互いの職業像について語り合いました(日本薬学生連盟2018年度広報統括理事=岩崎良太・明治薬科大学薬学部薬学科2年

医療の道を目指した理由

 中林(薬) まず、日本薬学生連盟の紹介をさせていただくと、日本で唯一の全国規模の薬学生団体です。全国5支部に分かれて約900人で活動していて、今年で20周年を迎えます。交流イベントだけでなく啓発活動や学会参加、病院薬局企業の見学など薬学生のプラットフォームになるような活動、薬学生に新しい価値を提供する活動を行っています。

 藤原(看) われわれ看護学生団体IONは、“つながる@ナース”をコンセプトに活動しています。看護学生は大学だけでなく、専門学校や短期大学が多く、なかなか学生同士のつながりが生まれないので、その中で学生同士のつながりを構築し、学生のうちから看護キャリアを考える活動を行っています。

 中林(薬) イベントなどは開催したりしているのでしょうか。

 藤原(看) イベントというよりは、講師を招いての講演会や勉強会を主に行っています。今回のように他の学生団体と交流する機会を持ったりもしますね。

 中林(薬) 清水さんは、なぜ看護の道に進もうと考えたのですか。

 清水(看) 私は一度、違う大学を卒業しているのです。化学を専攻していたのですが、4年間勉強している中で自分にはあまり向いてないのかなと思うようになりました。就職活動の時期になったとき、せっかく化学を学んできたのだから、化学知識を生かしたいといろいろ模索しました。一方で、所属していた研究室が透析系でしたので、医療関係に興味を持ち始めていた時期でもありました。最終的に、化学知識も生かせると考え、現在の大学の看護学部に学士編入しました。

 中林(薬) 看護学部のお二人は、6年制薬学部と4年制薬学部の違いについてご存知ですか。

 清水(看) よく分からないですね。

 中林(薬) 6年制はいわゆる薬剤師養成課程で、4年制は薬剤師国家試験の受験資格がなく、製薬企業の研究部門や開発部門などに就職する人が多いです。

 小倉(薬) 私は薬学部の4年制課程を選びました。もともと病院に行く機会が多く、医療従事者になりたいと思っていて、実は看護学部と薬学科を両方受験しました。どちらにするかは最後まで迷っていたんですけど、そのときに人生で一番「まずい」と思った薬を処方されて、それが本当にまずくて、もっと患者さんが飲みやすいと思えるような薬を提供したいと考えるようになりました。

 それがきっかけで、研究開発に携わるために看護学部や6年制薬学部でもなく、4年制薬学部へ入学することにしました。

 藤原(看) 実は私も看護師ではなく、薬剤師を目指していた時期がありました。

 中林(薬) そうだったんですね。最初は薬剤師、看護師とは違う目標で入学した人も、学んでいるうちにその面白さに気づく人が多いのかなという印象です。清水さんのように、大学を卒業してから薬学部や看護学部などの医療系学部に再入学してくる人も増えてきていますね。

 藤原(看) 他学部を志望していたという話ですが、だからこそ自分が進路として考えたことのある職種に理解があったり、その分野も勉強しようと思ったりするのかなと感じます。他に目指していた職種がきっかけとなり、将来的に連携がしやすくなることもあるのかなと思いました。

 中林(薬) 高校生の頃は医師の仕事について調べていました。皆さんもドラマなどで医師がどんな仕事を実際にしているかイメージできると思うのですが、私がいま薬学生として学んでいる中で、将来医師が働く臨床現場でどのように薬学の知識を生かせるのかと想像をめぐらせることがあります。

薬剤師は積極的に提案を

 清水(看) 今回のように、さまざまな団体の方と関わる中で面白いなと思っていることがあります。学生にも「薬学部っぽいな」とか「看護学部っぽい」というように、学部や職種のカラーがあると思いませんか。たとえば、薬学部の学生は大人っぽいというか、落ち着いた感じがあると思っているのですが、いかがでしょうか。

 中林(薬) 薬学生ではなく、薬剤師に対してはどんなイメージを持っていますか。

 清水(看) いま4年生の授業で行っているチーム医療演習を通じて、さまざまな学部の学生と事例検討をしています。糖尿病患者の事例だったのですが、薬の話題が出たときに、糖尿病の薬を飲み続けることが大切との意見が結構出ました。私は薬学生に対して、薬のプロだからもっと積極的に発言してきてほしいと意見したら、最後に処方するのは医師だから、医師の方が上だからという発言をしていたのがすごく印象に残っています。

 医師の指示ではあるものの、薬剤師からのアプローチがあってしかるべきで、医師と協働して目の前の患者さんに適した処方を決めるということを、ぜひ一緒に医療職として頑張っていきたいと思いました。

 中林(薬) 一昔前までは、疑義照会をすると医師に怒られるといった医師、薬剤師の上下関係がはっきりしていましたけど、いまは医師も薬剤師も対等にそれぞれの専門性を生かそうという動きは強まってきていますよね。でも、実際に清水さんがおっしゃっていたような意識が根強いことは問題だと思います。その人の積極性にもよるでしょうが、薬学部の学生は皆どちらかというと消極的ですよね。

 清水(看) この患者さんにはAという薬が最適だと考えているのに、医師は違う薬を処方すると言っている場合、自分だったらどうしますか?

 中林(薬) 自分がAを出したいのに医師に遠慮して違う薬が処方され、もし医療事故が起こってしまったら薬剤師の存在意義がありません。そういう大切なことをしっかり言えるような雰囲気を医師や他の職種とのコミュニケーションで作っていけるのが一番いいかなと思いますね。

患者も主体的に関わる医療へ‐薬剤師・看護師の連携が重要に

 話は変わりますが、いまはインターネット上にも薬の情報などがたくさん載っていますが、そういったものを自分で調べてくる患者さんに実務実習で実際に出会ったことはありますか?

 清水(看) ありましたね。

 藤原(看) いまは自分でも調べますからね。

 中林(薬) 自分のことですしね。

 清水(看) 私は患者さんがそのように疑問を持って質問することも大事なのかなと思いました。ネットで調べてくるというのは、それだけ対処法をて考えているということなので、良いことではないかと思います。

 中林(薬) 自分の病気を治したいというポジティブな気持ちということですね。

 小倉(薬) ただ、ネットだと、どうしても患者さんが不安になるような重い病気や副作用の情報がトップに出てきてしまいますよね。私が実際に飲みにくい薬を処方されたときに調べたことがあります。見た目がまずそうだなと思って検索してみたら、検索予測のところに「まずい」って出てきたので、本当にまずいんだなって思ってしまいました。

 最初は飲み方が分からなくて、その薬の飲み方を調べたかったんですが、検索してみたら自分の病気とは違う適応症が出てきました。でも、ちゃんと下の方まで読むと、他の適応などが紹介されていたので、自分に処方された理由も納得できました。患者さんも一番最初に出てきた重い内容を見て、不安になってしまうのかなと思いました。

 藤原(看) 患者さんにどんなことを調べたのか聞いてみるのもいいかもしれませんね。「副作用のリスクはどれぐらいあると書いてありましたか」など、知識を持ってもらうことは悪いことではないと思いますので、「そこまでは調べていなかった」と気づいてもらうことが良いと思います。

 清水(看) チーム医療の一員と言われますが、これからは一緒に治していくという、患者さんも受け身の姿勢ではなく、治療に対して主体的になってもらうことが必要なのかなと感じています。

 中林(薬) それこそが服薬アドヒアランスです。いままでの受け身の姿勢が服薬コンプライアンスで、言われた指示に対して患者さんが全部守れるかというところですよね。まさに、服薬アドヒアランスを良好に維持できるかということなのだと思います。

 清水(看) そうなると、看護師との連携は必須になりますよね。患者さんと接する時間の長い看護師の方が生活背景などを捉えていると思うので、その情報を共有して「この薬は飲めそうか」とか、患者さんも含めて一緒に考えて、飲み続けてもらうことが必要だと思います。

 看護師は何でも幅広く仕事をこなしてしまうので、全て自分たちで解決しようとせず、そこは薬のプロである薬剤師につなげたい。薬剤師も薬を渡したから終わりと完結させてしまうのではなく、患者さんがその後に関わる看護師などと話し合える環境を作っていくことがいいのかなって思いました。

〈対談を終えて〉

対談を終えて

対談を終えて

 小倉(薬) 私は看護師を目指していた時期があったので、看護師についても調べていましたが、実際に対談をしてみると、やはり学部が違うとまだ知らないことが結構たくさんあるんだなと感じました。

 中林(薬) 普段接している常識とは全く違う方向からボールが飛んでくるわけですから、今回の対談では違う見方があるということを勉強できました。薬学部では患者さんとの関わりも勉強しますが、専門はそこではないのでかなり新鮮でした。

 藤原(看) お互い知らないところがまだまだあったというのが一つ感じたことです。ただ、看護師が他の職種と違う部分は患者さんと接する場面だと思うのですが、そういうところはまだ伝わっていなかったのかなと感じました。もっとこういう対談の機会を増やしていきたいですね。



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