2月23日(土)、24日(日)に実施される第104回薬剤師国家試験(以下、国試)から、合格基準が『相対基準』になり、初めて『禁忌肢』が導入されます。不安に感じている受験生も多いと思いますが、薬学の6年間でしっかり倫理観や医療人としての考え方を学修していれば大丈夫です。今回は、第104回国試に向けた『最終チェックポイント』として、薬学ゼミナールの科目責任者が全9領域の国試対策を紹介します。
【合格基準の改正点】
2018年8月31日付で発表された『新薬剤師国家試験についての一部改正について』には、『以下のすべてを満たすことを合格基準とすること。なお、禁忌肢の選択状況を加味する』と記載されています。
[1]問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること。
[2]必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれの配点の30%以上であること。
【禁忌肢について】
禁忌肢は、2016年2月4日開催の薬剤師国家試験制度改善検討部会において、下記のように発表されています。
禁忌肢を選択しないためには、時間配分をしっかり行って、余裕を持って問題を読むことが重要です。
物理
物理は難しい科目と考えている方も多いと思いますが、全問題が難しいということではなく、得点がしやすい問題もあります。得点しやすいポイントを見ていきましょう。
物理化学では、図・表を用いてその場で考える問題の出題が予想されます。既出問題で学修する際は、解答を覚えるのではなく、何を表している図・表なのかをしっかり考えてください。『熱力学、反応速度論、束一性、分子間相互作用、酸・塩基』が頻出範囲です。
分析・放射化学は、しっかり既出問題を理解し、周辺知識を補完していれば得点しやすい傾向です。『クロマトグラフィー、電気泳動、分光分析、画像診断法』が頻出範囲です。
物理の専門用語に対して苦手意識を持たれがちですが、用語を調べ、意味を分かっておくと、案外すんなり点数を取ることができます!前向きに頑張ってください!
化学
化学の領域は、これまでの国試と同様に『化学構造』が多く出題されることが予想されます。基礎事項や立体化学は、用語を理解し、該当する構造を確実に選べるようにしましょう。また、化学反応は、各々の反応の特徴を理解した上で、反応主生成物の構造を判断できるようにしましょう。
糖やアミノ酸をはじめとする『生体成分の構造、それに関連する化学反応』『医薬品の化学』は頻出ですので必ず復習しましょう!そして、忘れてはいけないのが『生薬』です!暗記すればそのまま得点につながる可能性が高い『代表的な生薬及び確認試験』、基本の理解を必要とし構造を見て判断する『生合成経路』に加え、実務分野になりますが『漢方処方』の基礎についても学びましょう!
最後は気力です!1点でも多く得点してください!
生物
生物では、基本的な内容を問う問題から図・表や実験問題など考える力を必要とする問題まで幅広く出題されています。直前期は特に、以下の頻出範囲の既出問題に合わせてその『周辺知識全体の理解』を意識しましょう!
機能形態学は、『臓器・組織の構造や機能』、微生物学は、『細菌・ウイルスの特徴』を見直しましょう。生化学・分子生物学は、『生体成分(脂質・糖質・アミノ酸・核酸など)の構造や代謝』、免疫学は、『免疫担当細胞・抗体の構造や機能』の全体像を意識しながら復習することが大切です。
また、医療系科目に関連する内容(薬の作用機序、病態形成、感染症など)は実践問題での出題が予想されますので忘れずに復習しましょう。
衛生
衛生の近年の傾向として、出題形式に関しては『図・表』、『構造』が目立ちます。図・表は推移や特徴を把握し、グラフなどが変化している理由を確認しましょう。構造は、構造を目にしたときにその化合物の特徴が思い出せるようにしましょう。
また、出題範囲に関しては、大きく4範囲を押さえて学修しましょう。
[1]『既出問題』は、正解を暗記するだけではなく、一記述ごとのポイントとなるキーワードを確認しましょう。
[2]『実験』は、測定対象物質、試薬と実験の目的、結果、考察を確認しましょう。
[3]『法律』は、改正点のポイントを確認しましょう。
[4]『トピックス』は、今年話題となった公衆衛生を確認しましょう。
衛生は年明けからでも得点がグンと伸びる科目です。最後まで諦めず点数を伸ばしましょう!
薬理
薬理は、出題基準に沿って満遍なく出題されます。また、既出問題の内容を理解した上で考えて正答を導く必要があります。未出題薬物は、過去3~4年分の問題文中に、関連する機序やキーワードが前振りとして記載されています。
また、臨床現場(実務実習等)で学んだ知識を生かす問題も出題されており、特に『検査値から問題点を把握し、解決策を作用機序から考える力』が問われています。
このような問題を正解するためには、既出問題の正誤をただ判別するだけでなく、既出問題の内容を『自分で説明できる』まで演習する必要があります。特に出題頻度が多い、[1]自律神経系[2]中枢神経系[3]循環器系[4]代謝系[5]感染症・悪性腫瘍に関わる薬物は重点的に見直しを実施しましょう。
薬剤
近年の傾向として、理論問題や実践問題は、既出問題の内容を中心とした出題であるが、周辺知識や応用力・考える力を問う問題が多数出題され、難化傾向にあります。直前期には、実務との関連性も強く出題の可能性が高い範囲を優先して確認しましょう。
頻出の範囲として、薬物動態学では『投与計画(計算問題)』『TDM(有効血中薬物濃度域の確認)』『薬物動態変動(遺伝的多型と疾患・年齢による動態変化)』。製剤学では『代表的な製剤(軟膏剤・クリーム剤の基剤や注射剤の規定)』『DDS(放出制御の仕組みとターゲティングの担体)』があります。
特に、TDMの有効血中薬物濃度域や具体的な投与方法については、禁忌肢となる可能もあるので、しっかり確認しましょう。
病態・薬物治療
近年の国試は、病態・薬物治療の範囲と情報・検定の範囲から満遍なく出題されています。
病態・薬物治療に関しては毎年よく出題される疾患があるため、まずは『既出問題をしっかりと確認』し、それらの『疾患の概念、検査、治療の流れ』をしっかりと確認しましょう。また、既出問題の少ない疾患に関しては大まかな概念だけでも確認をしておきましょう。
情報・検定に関して、情報は既出問題をしっかりと覚えれば正答できるものが多いため、『既出問題をベース』に確認しましょう。また、検定の範囲は『実際のデータを読んで解く応用的な問題』が出題されるため、既出問題や模擬試験などを使って解法をしっかりと理解しましょう。
法規・制度・倫理
近年の国試は、出題基準からバランスよく出題され、新傾向の内容も出題されています。既出問題の内容を理解していることで得点できる設問は多いので、特に出題頻度が高い下記項目は必ず見直しましょう。
[1]薬剤師法[2]医療法[3]医薬品医療機器等法[4]麻薬及び向精神薬取締法[5]毒物及び劇物取締法[6]薬害と健康被害救済制度[7]医療保険制度[8]介護保険制度[9]治験[10]承認後の制度(再審査・再評価、副作用等報告)[11]薬剤経済(国民医療費、薬剤経済分析)
なお、新傾向としては個人情報(個人識別符号、要配慮個人情報)、医療法(医療事故や医療安全支援センター)、医薬品医療機器等法(医療機器、再生医療等製品)などを確認しておきましょう。
実務
多く出題が見込まれる以下の範囲を目安に再確認し、実務で得点を伸ばしましょう。
【計算(散剤、消毒薬、NPC/N、mEq等)】国試の問326~345の中で4問は計算系です。既出問題ベースの得点しやすい問題も出題されます。既出問題を反復練習しましょう!
【注射・輸液(配合変化、電解質輸液等)】必須問題~実践問題で出題が見込めます。最終確認し、国試にのぞみましょう!
【医薬品関連(相互作用、副作用等)】近年、用法用量よりも出題が多いです。副作用は初期症状まで確認しましょう!
【管理(麻薬の廃棄、血液製剤の管理等)】実務、法規と2科目に絡む範囲です。両科目のポイントを押さえておきましょう!