Dgsで在宅医療にも従事
「『薬のことなら、あの人に聞いたらなんでも分かるよ』と気軽に相談されるような薬剤師になりたい。」そんなイメージを抱きながら、調剤併設型のドラッグストア店舗で、処方箋調剤からOTC医薬品の相談対応、そして在宅医療などを日々の業務として行う生越有紗さん。2014年3月に大阪薬科大学を卒業後、東名阪エリアで1100店舗を構えるスギ薬局に入社し、5年目を迎えようとしている。生越さんが勤務するスギ薬局茨木水尾店は、郊外の住宅地に立地。近隣住民の身近な健康相談の窓口としての機能も果たしている。
生越さんの1日は、自宅から自転車で約10分ほどの距離にある茨木水尾店に午前9時45分に出勤するところから始まる。午前10時の開局に合わせて調剤業務の準備を整え、開局以降は、昼前まで外来の処方箋調剤業務を行う。同薬局では、近隣のクリニックから基幹病院までの約180施設から応需しており、1日平均30~40枚の処方箋に対応している。同店では50人が入居するサービス付き高齢者住宅2施設と契約を結び、在宅医療に対応。居宅とも合わせて1カ月平均80~90件の在宅訪問を行う。そのうちの1施設を生越さんが担当する。
午前11時半から施設への在宅医療に向けた処方箋調剤の準備を行うほか、施設から注文を受けた医療衛生材料やOTC医薬品などの商品も合わせて車両に積み込む。店舗から車で約30分ほど離れた施設まで、生越さんが自ら運転して赴き、午後1時から始まる医師の往診に同行している。
施設では1度の往診で約15人ほどに対応するため1時間半から約2時間を費やす。在宅医療の現場では、医師や看護師との他職種との連携が重要になる。このため生越さんは、医師との往診前に施設常駐の看護師から、その日の患者さんの状態についてヒアリング。「便通コントロールが悪い」「浮腫がある」「真菌感染症の疑い」などの状態を同行しながら医師に伝える。「全介助の方など嚥下困難な患者さんには、錠剤粉砕の可否なども医師に確認しています」と、薬剤の処方提案などを行うケースも少なくないという。
新たに出された処方箋があれば薬局に戻り、調剤した医薬品を持って再び施設へ赴き、在宅患者訪問薬剤管理などを行う。夕刻に在宅医療の現場から店舗に戻って以降は、在宅業務の残りの対応を行い、午後7時の閉局まで外来調剤やその日の患者の薬歴を記載し、午後7時半頃に帰宅の途に就くというのが生越さんの1日の仕事の流れだ。
在宅医療の現場では、ドラッグストア併設薬局ならではの特徴として、施設で直接、物販品の注文も受け付けることも多い。OTC医薬品をはじめガーゼ、アルコール消毒剤、傷テープ、紙オムツや尿漏れパットなど店舗で取り扱いのある商品のほか、医療機器などを卸に発注して取り寄せることもあるという。「足が不自由で買い物に行けない在宅の方から化粧品の相談受け、対応することで喜ばれることもあります」と生越さん。
入社後、すぐに在宅医療に取り組むことになった生越さんは「未経験な現場への不安もありましたが、先輩に同行してもらい、その都度相談したり、自分なりに勉強して取り組んできました」と振り返る。現在、「かかりつけ薬剤師」要件の一つである「研修認定薬剤師」も取得。在宅医療から、店舗での外来処方箋調剤、さらには第1類医薬品を中心とした説明販売などにも対応している。また、社内PT(ファーマシストトレーナー)」として、業務マニュアルや薬歴の質向上のための指導、中途入社社員のOJT研修などエリア担当を任されている。
学生時代には、パン屋の接客業、塾講師、スーパーの試食販売員など、様々なアルバイトを経験。「もともとあまり積極的ではない性格ですが、どんな仕事でもアクティブに挑戦することで臨機応変に対応できる力が身につき、その経験を薬剤師としての幅広い業務に生かすことができています」と話す。
薬学生に向けては、自身の就職活動を振り返り、「会社の雰囲気で選ぶことも大切ですが、自分がやりたいことは何かを決めたほうが職場で楽しく働けると思います」とアドバイスを送る。