医師向けに情報提供を行う「MR」(医薬情報担当者)の2012年度の総数が前年度比29人減の6万3846人とわずかながら減少に転じた。07年以降増加を続けていた国内のMR総数だが、歯止めがかかった格好。内資系を中心に大型新薬の開発が低調だったことなども背景にあり、13年度の状況によっては、本格的なMR数の減少に突入する可能性も出てきた。
調査結果は、MR認定センターがまとめた「13年版MR白書」。MR総数が減る一方、薬学6年制の卒業生登場で薬剤師MRは急増した。文科系MRが2.9%増の2万8447人、理科系MRが3.5%減の1万4539人となった一方、薬剤師MRが15.8%増の6459人と2桁の伸びとなった。00年以降、漸減傾向だったMR全体での比率でも、前年比1.5ポイント増の12.7%と上昇に転じた。
MRを取り巻く環境は年々厳しくなっている。病院での訪問規制を受け、MRが医師と接触する時間が減っている。その結果、MRが持つ情報を医師に伝える機会が少なくなり、医師の情報収集経路でMRの存在感がやや低下するデータも示されている。
訪問回数重視のMR活動から脱却し、質の高い情報提供活動に転換を急いでいる。
求められるのは、医療の一翼を担うMR。「知識」「技能」だけでなく、「人柄・マナー」などの要素を磨き、患者を通じて医師とディスカッションしていく。製薬企業も原点に立ち返り、臨床的視点を持ったMRをどう採用・育成していくかに力を入れている。
こうした意味で、薬剤師MRへの期待は高い。薬学6年制を卒業した薬剤師MRが登場して1年半が経つが、採用した製薬企業内での評価は非常に高いという。MRを選んだ理由についても、「臨床実習でMRが働いていた姿を見て、頑張りたいと思った」という新卒社員も多い。こうした人材が長期に活躍するようになれば、MRの存在感を高める起爆剤となるだろう。
一方、高度な医学・科学的な知識を武器に、影響力の強い医師(KOL)向けに情報提供を行う「メディカル・サイエンス・リエゾン」(MSL)が拡大している。MSLは、情報の高度化や、臨床研究のサポートなど利益相反の問題を背景に、営業本部から独立したメディカル・アフェアーズ(MA)に在籍している場合が多い。
業務内容は「KOLマネジメント」「アドバイザリーボードの立案と実施」「治験の支援」など広範囲にわたっている。MRとは違う立ち位置で、医科学的な情報伝達の担い手として存在感を増している。外資系企業が先んじて導入していたが、その動きが内資系企業にも波及している。