【学校薬剤師の仕事】第2回 学校環境衛生活動と学校薬剤師

2014年9月1日 (月)

薬学生新聞

公益社団法人日本薬剤師会常務理事
村松 章伊

村松章伊氏

 学校保健安全法において文部科学大臣が望ましい基準として「学校環境衛生基準」を定めると共に同施行規則第24条(学校薬剤師の職務執行の準則)において学校薬剤師の職務内容について法的な位置づけが明確化されたことは前回述べた。

 同法の施行から学校において学校保健活動を推進する上で学校環境衛生検査の実施と環境衛生の維持・管理における指導・助言は欠かせないものであり、その完全実施が求められている。

 すなわち学校薬剤師は、「学校環境衛生基準」と担当校の現状を確実に把握し、その上で適切な指導・助言を行うことにより「健康的かつ安全で豊かな施設環境の確保」および「児童生徒等の安心と安全」を図ることで[1]健康の保持増進を図る[2]学習能率の向上を図る[3]情操の陶冶*を図る――の三つを目的とする学校環境衛生管理が達成されることに留意する必要があると言える。

 *徳性と結びついた心情、たとえば花鳥風月をいつくしむ心、優しく優雅な気持ちを持ち道徳的に優れた人柄を育てるというような意味

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学校環境衛生管理

 は「学校環境衛生基準」の第1~第4に規定された定期の環境衛生検査年間計画例であり、学校保健計画をもとに計画的に実施すると共に組織的な評価と情報共有を行い、異常値等があれば管理者・設置者と共に原因究明と改善を行うことで再発防止を図るよう指導・助言を行っている。

 またこのとき、「学校環境衛生基準」の第5で学校が実施しなければならないとされた「日常点検」についても、学校薬剤師が定期検査の折にこれを確認、定期検査の結果と合わせて指導・助言に努めている。

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健康相談・保健指導

 学校薬剤師の職務執行の準則には、法第8条の健康相談に従事すること、法第9条の保健指導に従事することとある。

 環境衛生活動を行う中で、衛生管理等に不備があると児童生徒等に健康被害が生じることがあることについて、学校薬剤師は学校職員等の知識および認識の向上を図ると共に、問題に対して適切な指導・助言および対応を行うことを目指している。

 例として、プール指導における、日焼け止めクリームの使用や洗眼器の使用についての問題、換気等ではシックハウス(揮発性有機化合物)、PM2.5(微小粒子状物質)の問題、農薬・殺虫剤の使用問題、また熱中症へのWBGTの活用や水分補給等に関する啓発および指導等がある。

学校で保有する医薬品および薬品等の管理

 学校で扱うほとんどの薬品は「医薬用外」薬品の「試薬」に分類される。その取り扱い、保管・管理については「毒物劇物取締法」で規定される「毒物」「劇物」。さらに「消防法」で規定される「危険物」に該当する薬品については、それぞれに対応した取り扱いが必要となる。

 そのため、薬品は多数の法令によって管理方法等が規制されていることをまず、学校の管理担当者等に再度、指導すると共に、管理体制の明確化、薬品台帳の整理、分類、毒劇物、危険物、一般薬品、保管方法、廃棄、日常点検、定期点検等に対する情報提供および講習等を実施する。特に「毒物」「劇物」および「危険物」に該当する薬品の保管・管理については「危害防止規定」を作成し、その体制および責任を明確にするよう指導している。

 また、医薬品については最近、食物アレルギー等の問題からエピペン等の医療用医薬品について、子供が学校に持参したり、それを学校で保管する例も増えてきている。

 さらに一般用医薬品については、新改正薬事法(略称:医薬品医療機器等法)の施行から販売方法等が大きく変わった。保健主事、養護教諭のみでなく学校職員全体にも医薬品について、その使用方法、注意事項、管理方法等を含めた正しい知識を持ってもらう必要があることから、各学校の現職教育等の時間を活用して講習等を実施している。

 このように、学校薬剤師は薬剤師として薬事法の改正等により活動の制限を受ける中で、子供たちの健康と安全を守るため、あるいは国民の信頼を得るため、積極的に学校での保健管理および保健教育に参画することで、地域保健活動に積極的に貢献している。



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