臨床研究法の施行規則決定‐省令公布、4月に法施行
昨年、国会で成立した「臨床研究法」に基づく施行規則案と省令に定める実施基準案が厚生労働省の部会で了承され、4月の法施行後の具体的な運用に関する事項が固まった。臨床研究の実施体制や認定臨床研究審査委員会の要件、資金提供に関する事項などについて省令で規定した。これを受け、4月から臨床研究法が施行される。
昨年4月に臨床研究法が成立したことを受け、厚労省の部会で実際の運用に当たっての施行規則とそれに規定する実施基準等について検討が進められた。今回、省令に定める臨床研究実施基準では、基本理念に臨床研究の対象者の生命、健康、人権を尊重することを明記した。また、臨床研究を実施する研究責任医師の責務、研究計画書に記載する事項、モニタリングや監査など実施状況の確認、研究対象者に対する補償、利益相反管理などに関する事項を定めた。
臨床研究法において、研究計画を審査して臨床研究の実施の可否を判断したり、疾病や実施状況の報告を受けて意見を述べる重要な役割を果たすのが認定臨床研究審査委員会。省令にはその要件を記載した。5人以上の委員構成とし、医学・医療の専門家、被験者保護と人権尊重に理解のある生命倫理に関する有識者、4人以上の事務局体制を置くことなどを盛り込み、認定委員会の設置者に対して年1回以上委員に教育研修を受けさせることなども規定した。
臨床研究に関する資金の提供については、契約で定める事項として、研究資金を提供する製薬企業と子会社の「特殊関係者」、実施医療機関の名称、研究資金の支払い時期、特定臨床研究の成果の取り扱い、利益相反管理基準・管理計画の作成などを規定。「特殊関係者」に特定臨床研究を実施する医療機関、大学、一般社団法人、財団法人、NPO法人などを明記し、研究資金の管理を行う団体なども公表を義務づける特殊関係者とした。製薬企業が公表すべき情報として、寄附金、原稿執筆や講演の報酬などとし、事業年度終了後1年以内に公表し、5年間分を公表し続けることを規定。特定臨床研究終了後2年以内の支払いについても公表するとした。
チェーン薬局に厳しい改定‐「地域支援」の評価新設
18年度診療報酬改定を答申
2018年度診療報酬改定の全容が決まった。薬剤師の収入を左右する調剤報酬では、地域支援に貢献している薬局の体制を評価するため新設する「地域支援体制加算」に35点、医療機関と連携して服用薬剤を減らした場合の「服用薬剤調整支援料」を新設し、125点をつけた。「かかりつけ薬剤師指導料」は算定要件を厳格化し、70点から73点に引き上げられた。一方で、敷地内薬局は「特別調剤基本料」を新設して10点と低い点数を設定。調剤基本料は、特定の医療機関からの処方箋受付回数、集中率の要件を見直し、引き下げ対象範囲を拡大するなど、チェーン薬局の経営を直撃するに厳しい内容となった。
18年度改定では、薬局のさまざまな体制を評価する現行の「基準調剤加算」を廃止し、「地域支援体制加算」を新設。薬局でこの加算を算定するためには、地域医療に貢献する体制があることを示す実績を求めている。具体的な施設基準としては、1年間の常勤薬剤師1人当たり、▽夜間・休日等の対応400回▽重複投薬・相互作用等防止加算等40回▽服用薬剤調整支援料1回▽麻薬指導管理加算10回▽かかりつけ薬剤師指導料等40回などの実績を全てクリアする必要があるなど、極めてハードルが高いものとなった。
ただ、調剤基本料1を算定している薬局では、麻薬小売業者の免許を受けていることなどの基準を全て満たしていれば、これら実績は適用されない。調剤基本料1を算定できるかどうかが地域支援体制加算のカギになる。
服用薬剤調整支援料は、ポリファーマシーへの病院薬剤師の取り組みを評価する「薬剤総合評価調整管理料」の算定医療機関と連携し、薬の適正使用を行った場合に評価の対象となる。
薬剤服用歴管理指導料は、「原則、過去6カ月以内にお薬手帳を持参して同じ薬局を繰り返し利用した場合」に相当する現行の38点を41点、「患者の初回来局時」に相当する現行の50点を53点に引き上げるが、6カ月以内に再び処方箋を持参した患者のうち、お薬手帳を持参した患者割合が5割以下」など活用実績が認められない薬局は、特例の13点しか算定できなくなった。
調剤基本料は、基本料1(41点)、基本料2(25点)、基本料3(20点)、同(15点)、特別調剤基本料(10点)の5段階となる。基本料1と2の点数は据え置いたが、基本料2の要件となっている処方箋の集中率を90%超から「85%超」に拡大。また、特定医療機関からの処方箋が4000回超の場合は、集中率にかかわらず基本料2の対象となる。医療モールのように、薬局のある建物内に複数の医療機関がある場合、全ての診療所の処方箋を合算することになり、基本料2に減額となる薬局が増えそうだ。
阪大薬学部が6年制に一本化‐「研究型高度薬剤師」養成へ
大阪大学薬学部は、4年制の薬科学科と6年制の薬学科を統合して一本化する。二つの学科を発展的に融合させ、薬学基礎研究力と創薬基盤技術力、臨床力を備えた「研究型高度薬剤師」を養成することが目的。研究ができる薬剤師の輩出を目指す。6年制への一本化は2019年度の入試から適用し、募集人数は80人で変更しない。これに伴い、4年制の薬科学科は年次進行で廃止する。
阪大薬学部では、「新6年制」の移行に伴い、「Pharm.D」(定員20人)、「薬学研究」(55人)、「先進研究」(0~5人)の3つのコースを設定する。いずれも全員が薬剤師国家試験に合格することを前提とし、Pharm.Dコースでは医療や臨床を中心とした研究・教育を進め、薬学研究コースは、より基礎や創薬研究を目指す学生の教育に注力する。カリキュラムを工夫し、薬学基礎研究、創薬研究にできるだけ長く、連続した時間を割けるようにする。
先進研究コースでは、豊富な臨床力に加え、総合的な視野でグローバルに活躍できる研究能力を持った薬剤師の養成を目指す。10年一貫教育とし、AO/推薦入試で定員は5人までに絞る。
6年制一本化の背景には、「ファーマシスト・サイエンティスト(研究能力を持つ薬剤師)」の減少がある。公立大学では、今年度から岐阜薬科大学が6年制に一本化する「新6年制」をスタートさせているが、国立大学では初めて。今後、追随する動きが出てくるか注目だ。
ウエルシア店舗、業務停止処分‐処方箋なしで医療用医薬品販売
管理薬剤師が処方箋なしで医療用医薬品を販売していた「ウエルシア薬局ユーカリが丘店」(千葉県佐倉市)が千葉県から業務停止命令を受けた。業務停止処分の期間は19日間。2014年8月31日から約3年間にわたり、30代の管理薬剤師が処方箋なしで向精神薬などの医療用医薬品36種類を患者20人以上に販売していたことに対し、厳しい処分が必要と判断された。同社は、法令遵守を徹底させる教育を全社員に行う再発防止策を発表している。
行政処分の対象となったのは、昨年9月にウエルシア薬局ユーカリが丘店で医療用医薬品の不正販売を行った行為。同社から通報を受け、県が3回にわたって立入検査を行った結果、ユーカリが丘店に勤務する30代の管理薬剤師が、処方箋がないにもかかわらず患者26人に対して計63回36種類の医療用医薬品を販売していたことが発覚した。
販売された医薬品の内訳は、向精神薬、ED治療薬、薄毛治療薬、抗インフルエンザ薬などで、向精神薬については、自ら調剤していたことが分かった。当初、処方箋を持参していたが、次第に持参しなくても調剤を要望する患者もいた模様だ。現時点で健康被害は報告されておらず、男性薬剤師は既に退職している。
県は、これら行為を重く見て、薬機法に基づく厳しい処分が必要と判断し、同店舗に対して19日間の業務停止命令を出した。
今回の行政処分を受けウエルシア薬局は、「管理薬剤師は処方箋がないと知りながら、不正を行っていた」として、「患者や関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを心よりお詫び申し上げる」との謝罪をホームページで公表。再発防止策として、薬剤師だけでなく、全社員を対象に法令遵守の徹底に関する教育を行う考えを示している。
県は、関係団体に同様のケースの再発防止を要請する文書を早期に発出する方針だ。