わたしの「1日」~業界の先輩に聞く~ 栃本天海堂原料部 袴田祐里さん

2018年3月1日 (木)

薬学生新聞


生薬の調達から販売まで

袴田祐里さん

 「良い品質の漢方薬原料などを得意先に提供するため、生薬原料の買い付けに必要な『目利き』力アップに向けて日々努力しています」と語る袴田祐里さんは、漢方薬の原料である生薬や西洋ハーブなど厳選した天産物を世界各国から輸入し、国内で販売事業を展開する栃本天海堂(本社大阪市)の原料部に所属している。生薬、植物原料を輸入し、漢方薬原料のほか、お茶や健康食品などの食品原料、ハーブなどを製薬・食品メーカーへの販売を手掛けている。

 2014年に京都薬科大学を卒業後、同社に入社。最初の2年間は営業として病院・薬局を担当。現在は原料部のスタッフとして国内約200社余りの取引先を担当。メールや電話対応などで先方が必要とする素材の提案や品質の確認、情報提供などを行うことが日常の業務となっている。一方で、実際にこれら企業に赴き、具体的な価格交渉などの商談や製品の品質評価を尋ねたりするフォローアップも行う。

袴田さんの1日

 営業担当時に、実際の医療現場で漢方処方を行う医師や、漢方薬局製剤を取り扱う薬局薬剤師から、『生薬の品質で、煎じ薬や漢方薬の効き目が異なる』という声を聞き、生薬原料の安全性と品質の重要性を再認識したという。「自然からの恵みである生薬や西洋ハーブなどの天産物は、生産地の気候風土や加工方法により品質に違いが生じます。天産物の特性を踏まえ、長年の経験に基づいた“五官”による経験的鑑別や理化学的品質評価を行うことで、品質の差を見極め、高い品質管理と安全性を確保することが大切です」と袴田さん。

 学生時代に体調不良が続くなかで、漢方薬との出会いにより、自身の体質を劇的に改善できた経験から、“薬は合成医薬品だけではない”ということに気づき、漢方薬に興味を持つようになった。大学では生薬学研究室に所属し、薬局実務実習でも漢方薬局で調剤実習を体験した。また、趣味の海外旅行で東南アジアを訪れた際に、生薬が民間療法として人々の日常の中で使用されていることを知り「漢方薬の原料である生薬そのものについて深く知りたいと思うようになった」と話す。そこで、漢方薬にも携われ、原料調達で海外に行く機会も多い栃本天海堂への入社を決めた。

サンプル品の「検茶」も行う

サンプル品の「検茶」も行う

 袴田さんは神戸市内の自宅から約1時間かけて通勤。始業時間の午前9時からミーティングを行ったあと、得意先からの受発注や問い合わせなどに電話やメールで対応する。取り扱いのある生薬、民間薬、漢方薬、ハーブ、健康食品に関することが大半だが、生薬基原植物の問い合わせなど、専門的な内容も少なくない。さらに、国内外から届くサンプルを確認し、買い付けに必要な品質の目利きも学ぶことも日々の業務の一つとなっている。また、ハーブなど製品の差異を確認するため、色味を確認する「検茶」も行っている。

 袴田さんは、合弁会社の中国工場、取扱い製品を製造する韓国の工場などの視察など海外出張に行く機会も多い。今後は、「ラオスの子会社へハトムギの契約栽培、有機JAS承認のほか、ラオス産の植物原料を学びにいきたい」と展望。諸外国の生薬原料植物の産地へ赴き、栽培から収穫などの生産方法などを学び、生薬に関する知識をより深めていくことにも意欲的だ。

 当面の目標は、高度かつ広範な和漢薬の知識を持つ人材を養成し、業界全体の活性化を図るため13年に発足した『日本漢方生ソムリエ協会』が策定した資格制度「漢方生薬ソムリエ」の初級試験に合格すること。同試験は、生薬に関する知識の筆記試験のほか、生薬を実際に手に取り産地、等級、特徴などを答える実地試験もあり難易度は高い。

 「現地での買い付けや栽培、製造から販売までを一貫して行う企業だからこそ、それぞれの現場で働く人たちとつながり、最終製品までの各工程の知識と技術を理解することができます。生薬、植物原料は天産物のため天候や各国の事情で変動することもありますが、国内管理をしっかりと行うことで自信をもって得意先へ商品を提供していきたいです」と強調する。

 薬学生に向けては「薬学の知識を生かすフィールドはとても広いと社会に出て感じています。薬剤師として、病院、薬局、製薬会社以外での働き方もたくさんあります。自分のやりたいことへつなげていけると、仕事はとても楽しくなると思います」とのメッセージを寄せてくれた。



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