【これから『薬』の話をしよう】侮れないプラセボ効果

2018年9月1日 (土)

薬学生新聞

医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 これまで薬の効果について様々な角度から考察してきました。今回は、効果は効果でもプラセボ効果のお話です。プラセボとは有効成分を含まない偽薬のこと。理論上は何の治療効果も期待できないものですが、実際には治療上、有益な効果が得られることがあり、これをプラセボ効果と呼びます。

 それほど大きな効果ではない、あるいは単に偶然の産物なんじゃないの?と思われる方も多いでしょう。ところがエビデンスを紐解いていくと、軽視できないプラセボ効果の存在が垣間見えてくるのです。

 例えば、咳が出ている2~47カ月の乳幼児を対象としたランダム化比較試験(PMID:25347696)では、治療をしなかった群と比べてプラセボを投与した群で、咳の頻度や重症度が統計学的にも有意に減少しました。

 慢性的な腰痛を感じている人を対象としたランダム化比較試験(PMID:27755279)では、通常ケアのみを行った群に比べて、通常ケアに加えてプラセボを服用した群で、3週間後の痛みが統計学的にも有意に減少しました。この研究で興味深いのは、自分が飲んだ薬がプラセボだと知らされた上で服用している点です。それでもプラセボ効果が発現し得ることが示唆されているのです。

 プラセボ効果は外科的な手術でも起こり得ます。狭心症患者を対象に、冠動脈の狭窄を広げる手術をする群と、ニセの手術(プラセボ手術)をする群を比較したランダム化比較試験(PMID:29103656)では、6週間後の運動能力に有意な差を認めませんでした。つまり、術後の症状改善の多くは、プラセボ効果による可能性があるということです。

 これまで「効果」という言葉を当たり前のように使ってきましたが、薬そのものの厳密な効果を「効能(Efficacy)」と呼びます。しかし、実際には自然治癒や、服薬という行為に付随する様々な健康関連行動が複合的に影響して臨床的な「効果(Effectiveness)」を生み出しています。Effectivenessに占めるプラセボ効果の影響は、僕らが想像しているよりも遥かに大きい可能性が示されているのです。



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