【厚労省通知】オンライン服薬指導スタート‐薬歴料算定可能に
インターネットやテレビなどの情報通信機器を用いたオンライン服薬指導事業が全国の国家戦略特区で始まった。7月には厚生労働省が国家戦略特区で遠隔服薬指導を行った場合、対面に引き続き薬局が遠隔での服薬指導を実施し、要件を満たす場合に薬剤服用歴管理指導料を算定できるとの見解を通知し、調剤報酬を算定できるようになった。既に愛知県、福岡県の国家戦略特区で登録認定を受ける薬局が大手調剤チェーンを中心に相次いで参入しており、初めてとなるオンライン服薬指導の取り組みに熱い注目が集まっている。
厚労省はオンライン服薬指導の保険適用を認めた。国家戦略特区で遠隔服薬指導を行った場合の調剤報酬の取り扱いについて、対面と同様に「薬剤服用歴管理指導料」を算定できるとしたもの。要件として、対面診療を継続している患者を対象に▽薬剤服用歴管理指導料の算定要件を満たす▽患者の手元に薬剤が届いた後も改めて必要な確認を行う▽オンライン診療の適切な実施に関する指針を参考に情報セキュリティ対策を講じている▽お薬手帳を活用している――の全要件を満たす場合に、暫定措置として薬剤服用歴管理指導料を算定してよいとの見解を示し、オンライン服薬指導を実施した場合の調剤報酬の算定にゴーサインを出した格好だ。
愛知県の特区で登録したアインホールディングス傘下のアイン薬局稲沢店で実施されたオンライン服薬指導で、対応した薬剤師の感想は「対面とほとんど同じでやりにくさはなかった。患者さんの顔をしっかり見ることができて安心」というもので、今のところそれほど問題はなさそうな印象だ。
このケースでは、オンライン服薬指導は、タブレット等を通じて画面上で医師の診察を受けた患者に対し、「特定処方箋」を郵送で薬局に送付。特定処方箋を受け取った薬局は患者と電子メールや電話で服薬指導の日時を決め、予約日に患者と薬局の薬剤師がログインし、映像や音声を確認してから服薬指導を実施するというもの。調剤した薬は原則、当日中に配送手配を行い、患者が受け取ったかどうか伝票番号等で確認。銀行振込など予め取り決めた方法で会計を終える。
また、福岡市の登録事業者であるHyuga Pharmacyは、同社が運営する福岡市東区のきらり薬局名島店で初めて保険適用による遠隔服薬指導を実施。調剤薬局チェーンの総合メディカルも同社が運営するそうごう薬局の4店舗で遠隔服薬指導事業の登録認可を受けたと発表した。
さらに、8月に入り調剤薬局チェーン大手の日本調剤も動き出した。福岡市内の4薬局が福岡市の遠隔服薬指導事業の登録者として認可を受けたと発表するなど、オンライン服薬指導へのチェーン薬局の参入が相次いでいる。具体的な事例の蓄積はこれからになるが、新たなオンライン服薬指導という時代の流れが加速することは間違いない情勢で、今後の展開次第では全国でのオンライン服薬指導の解禁ということもあり得そうだ。
【厚労省検討会】PPI、スイッチ化見送り‐販売体制の不備を理由に
またスイッチOTC化が見送られた。8月に開かれた厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は、スイッチOTC薬の候補となる5成分を評価し、前回会議で「継続審議」扱いとなっていた「オメプラゾール」「ランソプラゾール」「ラベプラゾール」のプロトンポンプ阻害剤(PPI)3成分について再度審議したが、一般用医薬品の覆面調査結果から薬局での販売体制の不備が浮き彫りとなり、スイッチ化は「否」と判断されたのである。消炎鎮痛剤「ナプロキセン」、女性用頻尿剤「プロピベリン塩酸塩」の2成分はスイッチ化が妥当と判断されたが、最近では緊急避妊薬、片頭痛薬、乾癬治療薬と軒並みスイッチOTC化が見送られている。政府がセルフメディケーション推進を打ち出しているにも関わらず、真っ向から反対するような検討会の議論。今回はPPIに関して覆面調査の結果が持ち出された。こうした事態は国民の目にどう映るだろうか。
検討会で厚労省はPPIの安全性データや、米、英、仏、独、豪などでもOTC薬として汎用されている実態があるとのデータを提示。専門医の委員からも1週間程度の短期間の服用であれば、既存のH2ブロッカーのスイッチ製品よりもPPIの方が副作用の面で安全であると説明があった。
それにも関わらず、日本医師会の委員は「H2ブロッカーを大きく上回るだけのベネフィットはあるのか」と慎重姿勢を崩さなかった。他の委員からは、「PPIは1回の服用で済むため、コンプライアンスの面で良い」「どちらを選ぶか選択肢はあった方が良い」など前向きな意見も出た。
ところが、厚労省が示した一般薬の覆面調査結果で、濫用の恐れがある医薬品を複数購入しようとして、「質問されずに購入できた」薬局が2016年度は36.6%に上っていることが問題視され、多くの委員が反対に回ってしまったのである。
これはPPIのスイッチ化と関係ないデータであり、日本薬剤師会の委員は濫用の恐れがある医薬品の多くが指定第2類に分類されており、薬剤師以外の登録販売者が対応しているケースもあると主張したが、一気に否決に持ち込まれた。
PPIについては、製品そのものの安全性に対する問題ではなく、薬局での販売体制の不備が原因となり、スイッチ化が見送られることとなった。議論がすり替えられてしまった感もあり、現時点でセルフメディケーション推進と相反する検討会の議論が今後も進展することは考えにくいのが現状だ。
リウマチ対策、薬剤師の役割明記‐治療薬の専門知識習熟を
国のリウマチ対策に薬剤師の役割が盛り込まれた。厚生労働省の審議会がまとめた報告書では、リウマチ専門医が不足している現状から、治療薬の作用機序や副作用に習熟して患者に十分な対応を行うよう促しているほか、薬効が鋭い生物学的製剤の適正使用を推進する方向性も打ち出されており、薬剤師に求められる専門性をリウマチ治療で発揮できるかどうかが試される。
新たな関節リウマチ対策と全体目標を盛り込んだ国の報告書では、リウマチ患者の疾患活動性を適切な治療でコントロールし、長期的な生活の質を最大限まで改善して継続的に社会生活に参加することを全体目標に設定した。これら目標を達成するため、専門的なメディカルスタッフを育成する必要性を明記している。
患者は主治医に病状や経過、薬の説明などを求めているものの、リウマチ専門医の偏在と不足により、十分な対応が困難であると現状を指摘。この状況を改善するため、リウマチの専門知識・技能を持つ医師以外のスタッフによる患者ケアが重要であるとし、薬剤師には高度化しているリウマチ治療薬とその作用機序、副作用を習熟することを求めた。
診療の標準化・均てん化を進めることも必要とし、抗リウマチ薬のメトトレキサートや生物学的製剤の適切な使用方法の普及、減薬・休薬・中止に関する検討が不十分とし、国が関係学会と連携して生物学的製剤の適正使用を推進すると共に、減薬などを検討すべきとしている。
患者に対して適切な治療、薬剤、医療機関などに関する情報提供の充実も欠かせないとし、国には自治体や関係学会などと連携して、これら情報を医療者や患者・家族に提供することを求めている。
さらに、研究開発の推進については、標的分子の制御による治療手段や早期治療から始まる治療戦略は大きく進歩したものの、発症のメカニズムや、骨破壊、軟骨破壊などを引き起こす分子機序や自己免疫学的な機序の解明も不十分と指摘。国が関連学会と連携して関節破壊の阻止や免疫学的な機序解明の研究を進め、治癒や予防研究を推進する必要があるとした。
MR総数が4年連続減少‐薬剤師MRは過去最低数に
MR数が4年連続で減少していることがMR認定センターがまとめた2018年版MR白書で明らかになった。今年3月末段階のMR総数が前年比752人減の6万2433人となり、14年度以降4年連続で500人以上の減少と厳しい環境が続く。MRの新卒採用をしなかった製薬企業が増え、薬剤師資格を保有するMR数も大幅に減少し、調査開始以来過去最低数となった。新薬開発のトレンドがバイオ医薬品にシフトし、相次ぐ不祥事に国が販売促進活動のガイドラインを出す時代。そうした中、これまで人海戦術で行ってきた医薬品営業のあり方が大きく変わろうとしているのは確かだ。
調査は、同センターに登録している製薬企業194社とMR業務委託・派遣企業(CSO)15社、卸1社の210社から回答を得たもの。MR数は14年度1095人減、15年度522人減、16年度950人減と年々減少し、この4年で3000人強が減った計算になる。男性MRは1000人減の5万3185人となった一方、女性は248人増の9248人となった。前回調査で女性MRは減少したものの、今回増加に転じて過去最高となった。
管理職でも、男性が625人減の8140人となった一方、女性がこれまでで最も多い87人増の255人となり、全体で566人少ない8395人だった。
企業別で見ると、内資製薬企業では0.3%減の3万6721人とわずかな減少にとどまったが、外資製薬企業は1.1%減の2万1973人、CSOは9.5%減の3667人となった。卸は2人増の72人となった。加盟団体別ではジェネリック製薬協会が57人減の3591人と、後発品が浸透する中でもMR数は減少している。
薬剤師MRは、前年比621人減の5825人と大幅な減少となった。薬剤師資格を保有する男性MRは722人減の4780人となった一方、女性MRは101人増の1045人となった。MR総数に占める薬剤師MRの比率は9.3%と前年から0.9ポイント低下し、10%を割り込んだ。
一方、MRの新卒採用を行ったのは92社と前年に比べて5社減少した。中途採用を行った企業、定年退職者のMR再雇用で「再雇用した」「定年を延長した」と回答したのは共に129社と、前年から2社減少した。