ニュースダイジェスト

2018年9月1日 (土)

薬学生新聞

【岡山大病院薬剤部】医薬品情報業務にAI導入‐自然な話し言葉で検索可能に

 ついに病院薬剤部での医薬品情報業務に人工知能(AI)を活用する時代が到来した。今年4月から岡山大学病院薬剤部は、国内で初めて医薬品情報業務にAIを導入。病棟担当などの薬剤師は医師や看護師から質問を受けた場合、AI搭載型医薬品情報提供支援ツール「aiPharma」(アイファルマ)を携帯端末やパソコンで操作し、調べたいことを自然な話し言葉で入力すると、その意図をIBMのAI「ワトソン」が読み取り、薬剤部内に蓄積されたQ&Aデータベースの中から最適な回答が提示されるというものだ。AI活用のノウハウを持つ木村情報技術と共同で仕組みを構築し、音声入力も近く実現する見通しだという。AI時代と言われて久しいが、AIが薬剤師業務にどのような変化をもたらすのか誰もが気になるところ。今後の展開に要注目だ。

 同院薬剤部は、医師や看護師、病棟担当薬剤師などから薬品情報室が受けた薬に関する質問とその回答8000件以上をデータベースに保存し、医薬品情報室の専従薬剤師や病棟担当薬剤師は医薬品情報業務にこのデータベースを活用してきた。

 過去のQ&Aを参照したい場合、これまでのシステムでは複数の単語をスペースで区切って入力して検索する必要があったが、AIを搭載した新システムでは自然な話し言葉をそのまま入力すれば検索できるようになった。

 ワトソンには、自然言語を認識し、曖昧な問いかけや文章のゆらぎを判別して意図を読み取る能力があり、例えば「メインでヴィーンDとプリンペランいってるけど、側管からパズクロスいってもいい?」と質問されたままの表現を入力して検索した場合、「配合変化」というキーワードがなくとも、これら注射薬の配合変化について聞かれているとワトソンは判断し、Q&Aデータベースの中から最適な回答を探し出して提示するという。

 病棟担当薬剤師は全員、携帯端末のiPadを持っており、病棟で医師や看護師から質問を受け、すぐに回答が欲しい場合は「aiPharma」をiPad上で操作し、最適な回答を引き出すことができるという。

 今後は、さらなる機能向上にも取り組んでいく予定だ。今秋頃には音声入力が実現する見通しで、病棟で質問を受けた場合、携帯端末に向かってその質問を音声で復唱するとすぐに最適な回答を得られるように、システム改良を進めるということで、今後の進化が楽しみだ。

【厚労省】医療用薬の販促に指針案‐企業に監視部門設置求める

MRの不適切な活動に歯止め

 高血圧治療薬の臨床研究データ改ざんが社会問題となったディオバン事件や製薬企業のMRによる不適切なプロモーションが後を絶たないことから、ついに国が是正に乗り出した。厚生労働省は、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」案をまとめ、製薬企業が販促活動に用いる資材や活動自体の適切性を監視する部門を社内に新設することを要求したほか、MRなど情報提供担当者には誤解を招く恐れのある活動を禁じた。さらに、製薬企業に対して本来の責務という原点を判断基軸に自らを厳しく律した活動を求めるなど踏み込んだ内容となっており、これまでなかなか歯止めがかからなかったMRの不適切なプロモーション活動は大きな転換期を迎えそうだ。

 現段階でガイドラインは案となっており、今後意見募集を経て正式に通知され、営業部門と切り離された部署にかかわらず、製薬企業の社員全てに適用される。ガイドライン案では、プロモーション活動の原則として、医療用薬の有効性のみならず、副作用を含む安全性についても情報提供するなど、必要な情報を提供し、その情報を恣意的に選択しないことを定めている。

 提供する情報は、科学的根拠に基づくものを求め、不適切使用や誤使用を誘発しないよう虚偽・誇大、誤認を誘発させる表現を使わないよう明記。他社製品を誹謗・中傷することで自社製品を優れたものと訴えることなども禁じた。

 その上で、製薬企業の責務として、経営陣があらゆるプロモーション活動の責任を負うことを強調。自社が適切にプロモーション活動を行っていることを確認するため、資材や活動をモニタリングする販売情報提供活動監督部門を社内に設置し、責任者を明確化するよう求めている。また、プロモーション活動の担当者に必要な監督指導をできる権限を与える一方、経営陣にも必要な管理指導を行うよう促した。

 一方、MRなどプロモーション活動の担当者の責務としては、審査で適切と認められた資材に沿って、正確で科学的・客観的な根拠に基づく活動を行わなければならないと強調。意図的であるかにかかわらず、誤解を招く恐れのある活動を行わないよう求めると共に、例外的なデータを一般的な事実であるかのように表現しないこと、不適切使用・誤使用を誘発する恐れがある表現を用いないよう細心の注意を払うべきとしている。

 さらに、ガイドラインに定められていないことであれば自由に行ってもよいとの誤った認識を持つことなく、製薬企業に求められる本来の責務という原点を判断基軸とし、自らを厳しく律した上でプロモーション活動を行うよう詳細な行動まで踏み込んだ。

医薬分業めぐり議論過熱‐薬機法改正控え、是非問われる

「メリット感じない」と指摘も

 来年度の医薬品医療機器法の改正を控え、医薬分業をめぐる議論がヒートアップしている。本来は、薬局・薬剤師のあり方を制度面から見直しが必要か検討する目的なのだが、日本医師会の委員が執拗に医薬分業のメリットが感じられないと主張。患者代表の委員も同調し、議論の焦点が医薬分業の是非に移った。法改正を議論する厚生労働省の審議会でも、日本薬剤師会が現行の薬機法における薬局の役割を定義し直し、法律上明確にすることなどを提案したが、委員からは、「医薬分業のメリットが感じられていない」「医薬分業自体を見直す時期に来ている」「わざわざ法律に書き込まないとできないことか」など、現状の医薬分業や薬局に対して厳しい意見が相次いでおり、なかなか逆風は止まない情勢だ。

 厚労省は、7月5日の厚生科学審議会部会で、薬機法改正に向けた薬局・薬剤師に関する検討事項として、薬剤師が患者の状況に応じて服薬状況を把握し、その結果をかかりつけ医と共有するなど薬剤師の専門性をより発揮できるような対人業務を強化する仕組みを提示。また、対人業務を充実させるため、業務実態を精査し、調剤機器やオンラインによる服薬指導の活用などによる効率化の重要性といった論点を示した。

 ところが、患者代表の山口育子委員は「医薬分業率は上昇したが、そのメリットを感じられていないことが問題」と指摘した上で「薬局・薬剤師は危機感を持って変わっていくべき」と発言。日本医師会副会長の中川俊男委員も、院外処方の調剤技術料や患者負担が院内処方に比べて高いことを問題視し、「医薬分業自体を見直す時期に来ている。院内処方に回帰する議論があってもいい」と指摘。「医薬分業のありがたみは感じていない。在庫管理を心配せずに自由に処方ができるくらい」とまで踏み込み、医薬分業の是非に議論を引っ張った。

 しかし、日本薬剤師会の乾英夫委員は「その通りだと思っている」と認め、「国民、患者、地域住民のために役割を果たしているかということが突き付けられており、われわれも変わっていかなければならない」と話すなど、目立った反論はしなかった。

 さらに、乾委員が日薬と日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の3団体による意見書を提示。薬局が全ての医薬品・衛生材料などを供給する機能を持つ施設であることや、地域で多職種連携を図るよう努める必要があることなどを法律上明確に定義するよう求めたが、複数の委員から、敢えて法律に明記する必要はないと反対意見が出た。医薬分業の是非が問われているところ、薬局に関する詳細な機能を法律に明記するよう意見書を出したものの、理解が得られなかった格好。医薬分業のメリットについても議論を押し戻せなかった。

 その後、7月25日に開かれた部会では、積み残しの課題であった「地域で医薬品提供体制を確保するための薬局の体制整備」、「薬局の組織ガバナンスの確保」などについて議論。薬局の体制整備について、委員から、薬局の規模や備えている機能によって対応できる業務が異なるため、「薬局として備えるべき最低限必要な機能がどの程度なのか実態を把握すべき」「それぞれの薬局が有する機能や規模に応じて分類する方向での議論も必要」などの意見が出て、概ね前向きな議論が進んだ。

 ただ、花井十伍委員(NPOネットワーク医療と人権理事)は、「全ての薬局が医薬分業で最低限期待されるような仕事をしていないことが問題」と指摘。薬局の最低限の機能についてコンセンサスがないとして、実態把握した上で機能分化の議論をすべきとの考えを示した。

CKDの知識持つ薬剤師育成‐かかりつけ医と連携推進

 最近、さまざまな疾患対策に薬剤師が専門性を発揮するよう役割が求められている中、国がまとめた慢性腎臓病(CKD)対策の報告書でも、不足している人材育成に言及。CKDの基本的知識を持った薬剤師等のメディカルスタッフを育成し、かかりつけ医と腎臓病療養指導士の連携を推進することが目標に打ち出された。国は2028年までに新規透析導入患者数を年間3万5000人以下に減少させる目標を示し、CKDの重症化予防に向けた一つの施策として人材育成の重要性を盛り込んでいる。その中にCKDの基本的知識を持った薬剤師が求められている意味は重い。

 報告書では、かかりつけ医やメディカルスタッフ、腎臓専門の医療機関等が連携し、地域におけるCKD診療体制を充実させること、年間の新規透析導入患者数を16年の約3万9000人から28年までに3万5000人以下に減少させることなどを成果目標に打ち出している。これら目標を達成するため、▽普及啓発▽地域における医療提供体制の整備▽診療水準の向上▽人材育成▽研究開発の推進――の5本柱の個別対策を明記した。

 その中で、人材育成については、腎臓病医の不足や偏在の中、CKD診療を担うメディカルスタッフの数が不足している課題を指摘。CKDに関する基本的知識を持つ薬剤師、看護師等の人材を育成し、専門医以外のかかりつけ医とも連携することにより、CKDに関わる医療従事者の増加を図るとした。関連学会等に対し、腎臓病療養指導士等の基本的知識を持つ薬剤師などのメディカルスタッフの育成、かかりつけ医と腎臓病療養指導士などとの連携を促した。

 診療水準を向上させるためには、各種ガイドラインで一部推奨内容の不一致が見られるとし、関連学会が合同で協議して推奨内容が一致したガイドラインを作成し、関連団体と連携して普及することを掲げたほか、CKDの研究開発の推進に向けては、国の医療分野研究開発推進計画などの中長期的な目標を踏まえた研究に産官学で取り組むとし、効果的な新規治療薬開発などの推進を盛り込んだ。


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