【各業界の動向と展望をチェック!】活躍の場広がり、業務の質も変化~病院薬剤師の動向~

2019年3月1日 (金)

薬学生新聞

 病院薬剤師の業務や役割は年々広がっている。各診療科の病棟に薬剤師が常駐し、そこで業務を行う姿はもはや日常のものとなった。現在は、手術室や集中治療室など院内の各部門にも幅広く関わるようになり、外来患者の診療を支援する場合もある。活躍の場が広がるだけでなく、業務の質も変化した。患者への服薬指導や副作用のチェックにとどまらず、医師への処方提案などを通じて、目の前の患者に応じた最適な薬物治療の設計に関わる機会が増えている。

 病院薬剤師の仕事といえば、以前は、地下の薬剤部にこもって入院患者や外来患者の調剤業務に明け暮れる姿が一般的だった。1990年代に本格化した医薬分業の進展に伴い、外来患者の調剤業務が病院薬剤師の手から離れたことによって、その役割や仕事の内容は劇的に変化を遂げた。薬剤管理指導料の新設という診療報酬上の後押しもあり、各病院で、浮いた薬剤師のマンパワーを病棟業務に費やせるようになった。

 当初はベッドサイドでの患者への服薬指導が業務の中心だったが、病棟での役割は次第に広がった。病棟に出入りする中で、医師や看護師から薬の質問を受けて答えたりするうちに、顔の見える関係に発展。12年に病棟薬剤業務実施加算が新設され、病棟で業務を行う時間が長くなると、各病棟単位でチーム医療の一員として活躍する機会が増えた。

 それまでは感染対策チームなど院内横断型のチーム医療に加わることは多かったが、病棟単位のチーム医療でも存在感を発揮し始めた。さらに現在は、一般病棟だけでなく、手術室や集中治療室、救急救命室などにも薬剤師が幅広く関わるようになっている。

 外来診療でも薬剤師は、外来がん化学療法室で患者の服薬指導や副作用チェックを行ったり、医師の診察前に“薬剤師外来”で患者に面談したりするようになった。手術予定患者に外来で面談して、事前に中止すべき薬剤を把握したり、各診療科外来の医師の診察に同席したりするなど、外来にも薬剤師が進出している。

 活動エリアの拡大と併行して、業務内容も深くなった。医師が処方をオーダした後だけでなく、処方の前段階で薬剤師が医師に適切な薬物療法を提案する機会が増加。それが発展し、メインの疾患ではない様々な症状への対応については、医師から処方設計をまかされるケースも多くなっている。

 近年は、プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)という仕組みを活用し、医師など他職種と薬剤師が連携する事例も目立つようになった。これは、関係者の合意のもと、対象患者への具体的な薬物療法や必要な検査などをプロトコールとして事前に作成し、それに沿って各職種が役割を果たすことで、より良い医療の実践を目指すもの。プロトコールで定められた範囲内であれば、薬剤師も薬物療法の調整や検査の実施指示などを行えるため、職能拡大につながっている。

 このような薬剤師の介入によって、医師や看護師はその職種にしかできない業務に専念できる。例えば手術が多い整形外科では、細かい薬物療法の調整を薬剤師が担当してくれれば、手術に注力できるとして、薬剤師の処方設計への関与を歓迎する医師は多い。



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