保険薬局業界は、昨年4月に実施された調剤報酬改定が大きな影響を与えた。特に新設された「地域支援体制加算」については、調剤基本料1を算定していないと同加算の取得が難しく、現場からは「達成へのハードルは非常に高い」といった声も出ている。また今年は医薬品医療機器法の改正が予定され、昨年末に厚生科学審議会の部会がまとめた報告書では、薬剤師・薬局に関する改正の目玉として「服用期間中の継続的な薬学管理」を義務づけることや、患者が薬局を主体的に選択できるようにするため特定の機能を持つ薬局を標榜できるようにすることが盛り込まれた。国家戦略特区で行われていたオンライン服薬指導の実現も法改正によって認められることになった。保険薬局業界は、かつてない大きな変革の時期にある。
昨年4月の調剤報酬改定では、基準調剤加算の廃止に伴い、「地域支援体制加算」が新設された。調剤基本料1以外の薬局では、具体的な施設基準として、1年間の常勤薬剤師1人あたり、▽夜間・休日等の対応400回▽重複投薬・相互作用等防止加算等40回▽服用薬剤調整支援料1回▽単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理12回▽服薬情報提供料60回▽麻薬指導管理加算10回▽かかりつけ薬剤師指導料等40回▽外来服薬支援料12回――の実績を全てクリアする必要がある。
調剤薬局チェーンなどで構成する日本保険薬局協会(NPhA)が実施した調査によると、「地域支援体制加算」について、基本料1以外の薬局で取得要件の8項目のうちクリアできたのは、重複投薬・相互作用等防止加算等、単一建物診療患者が1人の在宅薬剤師管理▽かかりつけ薬剤師指導料等の3項目だけだった。一方、要件をクリアできなかったの5項目のうち、特に外来服薬支援料や服用薬剤調整支援料の算定は厳しいことが明らかになった。
もう一つ、大きな動きとして薬機法改正が控えている。薬機法改正に向けた報告書がまとまった。薬剤師・薬局に関する改正の目玉は、「服用期間中の継続的な薬学管理」を義務づけること。服薬指導して終わりではなく、服薬指導後のフォローを考えることが重要とのメッセージを打ち出すことで、薬剤師職能の底上げを図る。
患者が薬局を主体的に選択できるようにするため、特定の機能を持っている薬局を標榜できるようにする。具体的に、「在宅などにも対応し、地域でかかりつけ機能を発揮」「医療機関と連携して癌などの薬物療法を受けている患者の薬学管理を行う」といった機能が挙がっており、いずれの機能も持たない薬局は標榜できない。厚生労働省は、今通常国会に薬機法や薬剤師法の改正案を提出する予定。
さらに、大きなトピックに国家戦略特区を活用したオンライン服薬指導が挙げられよう。国家戦略特区で実証実験が進められる一方、薬機法改正の取りまとめでは、対面服薬指導義務の例外を検討するよう促し、オンライン服薬指導が解禁される方向だ。
例外の具体的内容については、「専門家によって適切なルールを検討すべき」としたほか、「服薬指導および調剤の一部を行う場所について、一定の条件の下で、職場など、医療が提供可能な場を含めるような取り扱いとすべき」との方向性も示した。