【これから『薬』の話をしよう】補助薬と治療薬は別物!

2020年5月1日 (金)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 受動喫煙を防止するための取り組みが、マナーからルールへと変わっていく今日、このタイミングで禁煙を考える人も多いことでしょう。今回は禁煙補助薬についてのお話です。

 2006年に販売が開始されたバレニクリン(商品名:チャンピックス)は、従来のニコチン製剤と異なる作用機序が注目を集めました。その効果について06年に報告されたランダム化比較試験(PMID:16820546)をご紹介します。

 18~75歳の喫煙者1025人がブプロピオン(本邦未承認薬)投与群を含めた3群にランダム化され、12週間にわたる治療が行われました。その結果、治療開始から9~12週の禁煙達成割合は、バレニクリン投与群で44.0%、プラセボ投与群で17.7%と、バレニクリン投与群で3.85倍、統計的にも有意に多いという結果でした。

 ところで、禁煙をする目的ってなんでしょうか。もちろん健康で長生きするためですよね。喫煙による余命損失は10年といわれていますので、喫煙者の健康維持・増進に禁煙が重要なのは確かでしょう(PMID:23100333)。しかし、そのためには生涯にわたり禁煙を持続させる必要があります。

 先ほどの試験では12週の治療終了から、さらに40週にわたり継続的に観察を行っています(全追跡期間は52週)。禁煙割合の推移を見ていくと、24週目でバレニクリン群33.5%、プラセボ群14.5%、52週目でバレニクリン群28.1%、プラセボ群14.0%でした。12~52週における禁煙達成割合はバレニクリン群で大きく低下する一方、プラセボ群では微減にとどまっています。

 つまり、バレニクリンによる治療で禁煙成功率は高まるかもしれませんが、その後の喫煙再開も多いこと、プラセボで禁煙できた人では、その後も持続的に維持できる可能性が示されているのです。

 禁煙の達成に影響している原因は、バレニクリンの純粋な薬理学的効果よりも、むしろ本人の禁煙に対する関心や、本人を取り巻く環境の方が強いのかもしれません。バレニクリンはあくまで補助薬であり治療薬ではないということがよくお分かりいただけるかと思います。



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