【これから『薬』の話をしよう】副作用と薬物有害事象

2020年11月1日 (日)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 薬には程度の差はあれ、必ず有害な作用があります。過量に摂取すれば、たとえ食塩であっても健康を害することは明らかでしょう。したがって、「安全な薬」というものは厳密には存在しないのです。薬の安全性は、得られる恩恵(ベネフィット)と有害な作用(リスク)のバランスが、患者さんにとって、また社会にとって受け入れ可能かどうか、という視点で論じられなければなりません。

 薬の有害な作用について、副作用や有害事象という言葉を用いる機会は多いと思います。しかし、前者の副作用は主作用の対義語であり、必ずしも有害な作用だけを意味する言葉ではありません。

 例えば胃の調子が悪く、なおかつ味覚の障害を感じている患者さんがいたとしましょう。この患者さんにポラプレジンク(製品名:プロマック)を投与した場合、期待される消化器症状の改善は主作用ですが、味覚障害の改善は副作用です。この場合の副作用は決してネガティブな意味を持ちませんよね。副作用はまた、薬が直接的な原因で引き起こされる結果のことであり、薬と副作用の間には明確な因果関係が成立します。

 他方で、有害事象とは患者さんに生じた好ましくない医療上の出来事の全てを意味する言葉です。このうち医薬品の使用に関連するものを薬物有害事象(Adverse Drug Event:以下ADE)と呼びます。また、副作用との大きな違いとして、薬と有害事象の間に直接的な因果関係が成立しないものも含まれます。

 例えば、ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)による「ふらつき」は副作用かつADEと言えますが、同薬によってもたらされ得る「転倒」や「骨折」は、ADEであっても副作用ではありません。BZDの鎮静作用によって姿勢制御が失われることは、転倒や骨折リスクの増加につながりますが、薬が直接的に転倒や骨折を引き起こしているわけではありませんよね。身体機能の低下や足場の悪さ、血圧の低下なども転倒を引き起こす原因になりますし、骨折は骨密度や転倒の仕方にも大きな影響を受けるはずです。

 このことはまた、薬とADEの関連性評価が極めて難しいことを意味しています。服薬によってADEのリスクは高まるかもしれませんが、薬だけがADEの唯一の原因ではないからです。前回もお話をしたように、薬の有効性が、患者さんの社会・心理的な影響を受けているのだとしたら、ADEもまた同じように考えなくてはならないのです。



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