【厚労省】デジタル化関連で新事業‐電子処方箋システムに38億円
厚生労働省医薬・生活衛生局の2021年度予算概算要求は、前年度比47.2%増の130億1000万円を計上した。新型コロナウイルス感染症への対応で緊急要望として別途事項要求するものを除いても、前年からの増加幅は近年で最も大きかった。新型コロナウイルス感染症の流行から収束後を見据え、電子処方箋の仕組み構築やオンライン技術を用いた治験、薬剤師のICTを活用した業務の資質向上に関する調査など、デジタル化に関連した事業が目立った。
新型コロナウイルス感染症への対応では、22年度の運用開始を予定する電子処方箋のシステム構築に38億0300万円を新たに計上した。オンライン資格確認等システムを基盤とした電子処方箋の仕組みを構築する。
要求額が明示されていない緊急要望事項では、医療情報データベース「MID―NET」を用いて新型コロナウイルス感染症治療薬「レムデシビル」や候補薬の処方実態と安全性に関する調査、感染予防のため来院を不要とするオンライン技術を用いた治験を盛り込んだ。
感染予防対策として、ICTを活用した薬剤師業務の資質向上を図るための調査検討事業費用も要求。9月に改正医薬品医療機器等法のオンライン継続服薬指導に関連した省令が施行されたのを受け、ICTを活用した業務について必要となる薬剤師の知識、技能、研修のあり方を調査する。
一方、スイッチOTC化の推進に向けては、諸外国の医薬品承認制度や薬局・薬剤師の販売体制などを調査するための費用として、前年の1000万円から4000万円に増額した。医薬品・医療機器の安全対策推進には9億9500万円を計上。安全対策に用いる医療情報データベースの活用推進に向けた環境整備には、2億1100万円を充てた。
薬剤師・薬局の機能強化には1億9500万円を計上。免許取得後の薬剤師を対象に、医療機関などで卒後研修を行うモデル事業などに4000万円、薬剤師の地域偏在における課題把握の調査に2400万円を新たに盛り込んだ。全国薬局機能情報提供制度に対応し、全国統一的な検索サイトの構築に3100万円を充て、前年度より大幅に増額した。
(2020年9月28日掲載)
【健保連】「かかりつけ」持つ患者増加‐薬剤師の対人業務に期待も
健康保険組合連合会が8月に実施した調査で、かかりつけ薬局・薬剤師を持つ患者が増え、約2割に上ることが分かった。依然として地理的な理由で薬局を選択している患者が大半を占めていたものの、副作用の説明など薬局・薬剤師の対人業務に期待する声が全体の3分の1を占めた。地域の患者ニーズへの対応力が薬局経営で重要な要素になりそうだ。
同調査は、新型コロナウイルスの影響で患者の受療行動や意識変化を把握する目的で実施したもの。札幌市内で開かれた日本薬剤師会学術大会の分科会で、健保連理事の幸野庄司氏から薬局・薬剤師に関連した調査結果が紹介された。
病院や診療所を受診した際にどこで薬を受け取っているかを聞いたところ、「受診した医療機関の近くの薬局」が61%、「受診した医療機関」が19%となった一方、「いつも決まった薬局(ただし、薬剤師は決まっていない)」が11%、「いつも決まった薬剤師、薬局」が7%となった。2割近くがかかりつけ薬局を持つようになるなど、増加傾向がうかがえる結果となった。
薬局をいつも利用している主な理由について、患者が依然として「立地」を重視して薬局を選んでいたが、「薬剤師が副作用や注意事項などをきちんと説明してくれる」「ジェネリック医薬品など薬代が安くなることを説明してくれる」など、薬剤師の対人業務を挙げる回答も多かった。少数ではあるものの、「オンライン服薬指導を実施しているから」との回答も見られた。
(2020年10月14日掲載)
【厚労省検討会】臨床研修求める声強まる‐薬剤師業務の理解進まず
厚生労働省の「薬剤師の養成および資質向上に関する検討会」は9月11日、薬剤師業務や薬学教育など現状の課題について意見交換した。構成員からは、医師など他職種の薬剤師の業務内容に対する理解が進んでいないことや連携不足を厳しく指摘する声、大学のカリキュラムを削減してでも臨床研修の充実を求める意見などが上がった。
この日の検討会では、7月の初会合に続き、薬剤師業務、薬学教育、薬剤師の確保などにおける課題について意見交換した。薬剤師業務の課題として、政田幹夫構成員(大阪薬科大学学長)は「病棟薬剤師が服薬指導しているだけで、医師と関わっているかが問題だ。医師と話さないと処方箋は変わらないし、重大な責任がある」とし、「そのような職能であると考え直さないといけないが、現在の薬剤師の職能はかけ離れている」と厳しく指摘した。
山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)も、特定機能病院への立入検査でヒアリングを行った経験を踏まえ「他職種が薬剤部で何を行っているか分からないとの意見がかなり出た。医療者が薬剤師の仕事を理解していないのが問題」とした。
薬学教育の面では、初会合でも医師と比べて薬剤師の臨床研修の不十分さを指摘する声が上がったが、この日も山口氏が「現場へのシームレスな教育で抜けているのが臨床研修だ。医師と同様に薬剤師も実施すれば、お互いの業務が分かると思う」と訴えた。
(2020年9月14日掲載)
【厚労省】薬局認定制度の基準示す‐薬機法規則改正で省令案
厚生労働省は10月8日、医薬品医療機器等法の施行規則を一部改正する省令案を公表した。都道府県による地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の認定制度について、地域連携薬局では地域包括ケアシステムの研修を修了した常勤薬剤師を一定数以上配置すること、専門医療機関連携薬局では癌に関する専門性の認定を受けた薬剤師の配置などを認定基準とした。11月6日まで一般からの意見募集を行っている。
改正薬機法では、患者が地域で療養環境を移行する場合でも安全で有効な薬物療法を切れ目なく受けられることを目指し、都道府県知事の認定によって地域連携薬局、専門医療機関連携薬局の名称を表示することが可能となる。
省令案では、各薬局の具体的な認定基準を示した。入退院時の医療機関との情報連携や在宅医療に一元的・継続的に対応できる地域連携薬局は、他の医療機関と情報共有する体制として、地域の医療機関に勤務する薬剤師などに利用者の薬剤の使用情報を随時報告、連絡できる体制の整備、他の薬局に薬剤の使用情報を連絡できることなどを求めた。
利用者に安定的に薬剤を提供するため、開店時間外の相談応需体制、他の薬局に医薬品を提供する体制などを整備するとしたほか、地域包括ケアシステムに関する研修を修了した常勤薬剤師を一定数以上配置すること、在宅医療に関する一定程度の取り組み実績なども必要とした。
癌に関する専門的な薬学管理について、他の医療機関と連携して対応できる専門医療機関連携薬局では、癌に関する薬剤の使用情報を専門的な医療を提供する医療機関の薬剤師等に随時連絡できること、厚労省の基準に適合する団体が専門性を認定した薬剤師を配置するよう求めた。
これら認定を受けた薬局の開設者に対しては、地域連携薬局等であることや薬局の機能に関する説明を掲示するほか、薬局開設者の氏名などを変更した場合は30日以内に認定証を交付した都道府県知事に届出を提出するよう求めている。
(2020年10月12日掲載)