【これから『薬』の話をしよう】薬の主作用を考える

2021年1月1日 (金)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 前回のコラムでは、薬の副作用は主作用の対義語であり、必ずしも有害な作用だけを意味する言葉ではないというお話をしました。では、薬の主作用とはいったい何でしょうか。あらためて考えると、その意味するところを的確に表現することは難しいように思います。強いて言えば、「薬の本来の目的に沿った作用」ということになるでしょうか。糖尿病の薬であれば、その開発目的や薬理学的な作用機序から考えても、高い血糖値を下げることが主作用であり、それに伴い生じてしまう低血糖は副作用と考えることができます。

 とはいえ、「薬の本来の目的」とは言っても、その本来性を決定づける客観的な基準があるわけではありません。薬に限らず、物の存在価値は時と場所、あるいは状況によって変わることは経験的にも明らかでしょう。例えば、スタチン系薬剤の本来の目的に沿った作用は、コレステロール値の低下ですよね。しかし、同薬による心血管リスクの低下は主作用なのでしょうか。それとも副作用なのでしょうか。「本来性」をどうとらえるかで、どちらにでも取れるように思います。

 同じように、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬について考えてみましょう。心不全患者3730人を対象としたランダム化比較試験(PMID:32865377)では、エンパグリフロジンの投与で心血管死亡、心不全増悪による入院の複合アウトカムが25%低下しました(ハザード比0.75[95%信頼区間0.65~0.86])

 また、慢性腎臓病患者4304人を対象としたランダム化比較試験(PMID:32970396)では、ダパグリフロジンの投与で推算糸球体濾過量50%以上の低下、末期腎疾患、腎・心血管疾患による死亡の複合アウトカムが39%低下しました(ハザード比0.61[95%信頼区間0.51~0.72])

 興味深いことに、どちらの研究においても、糖尿病の有無とは関係なく心不全や腎臓病の予後改善が示されており、さらには低血糖リスクの増加も認められませんでした。糖尿病の治療薬として開発された薬ではありますが、臨床で期待されつつあるのは、血糖降下作用というよりはむしろ、心不全や腎臓病予後の改善効果なのです。

 薬の本来の目的をあらためて問い直してみることで、薬の作用機序や薬効分類にとらわれることなく、薬の効果に対する視野を広げられるような気がしています。薬の目的の本来性を考えていくことは、人の生活と薬との直接的な関係性を考えることに他ならないからです。



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