第106回薬剤師国家試験(以下、国試)は、2月20日(土)、21日(日)に実施されます。106回国試からは改訂コアカリキュラムで学修した薬学生が受験する「新出題基準対応の国試」になります。
また、「薬剤師国家試験の在り方に関する基本方針」では、合格基準について「当面の間、全問題への配点の65%以上であって他の基準を満たしている場合は合格となるよう設定する」としていましたが、106回国試からは、この基準を適用しないことが発表されたため、改めて、合格基準が「相対基準」になりました。
求められる薬剤師像に沿って変化している国試に合格するため、106回国試に向けた「最終チェックポイント」を、薬学ゼミナールの全9領域の科目責任者が「科目ごとの国試対策」を紹介します。
【合格基準】※発表:2018年8月31日付
以下のすべてを満たすことを合格基準とする。なお、禁忌肢の選択状況を加味する。
[1]問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること。
[2]必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれの配点の30%以上であること。
【禁忌肢】※発表:2016年2月4日薬剤師国家試験制度改善検討部会
薬ゼミの統一模擬試験を使用した分析結果によると「禁忌肢を選択しないため」には、[1]時間配分をしっかり行って、余裕を持って問題を読むこと[2]「1つ選べ」が続いた後の「2つ選べ」などでマークミスをしないこと[3]「適切でないのはどれか。」などの否定形のリード文で選択ミスをしないこと等が重要です。
物理
近年の物理の傾向として、各範囲から満遍なく、基本的な内容の問題、グラフ・図・表などを用いてその場で考える問題、計算問題などが幅広く出題されています。他科目と比較し、総合正答率が低い傾向が続いていますが、その中でも正答率の高い問題を取りこぼさないようにするためには、[1]既出問題を解く際に登場する専門用語の意味を調べて理解し、説明できるレベルになる[2]「グラフ・図・表」に関して、どんな現象を表しているのかを考える[3]計算問題に関して、「公式」がどんな時に使えるのか、確認しておくことをお勧めします。
出題頻度の高い範囲は、物理化学では「熱力学、反応速度論、分子間相互作用、酸・塩基」、分析化学では「クロマトグラフィー、分光分析、画像診断」です。
化学
化学は基礎的な内容に加え、考える力を必要とする問題の出題が予想されます。いずれも構造式を見て判断する必要があるため、定義や用語の理解に加え、それを構造式に適用する力が求められます。
まずは基礎事項、立体化学、酸塩基の定義の理解、化学反応では各主生成物を与える経緯なども把握できるようにしましょう。また、近年増加傾向の糖やアミノ酸などの「生体成分の構造と質、関連する生体反応」「医薬品の化学」も構造を見て判断できるよう既出問題を中心に復習しましょう。
そして「局方生薬」「生合成経路」も忘れずに!「代表的な漢方処方」も確認しましょう。
生物
生物は、基本的な内容の問題から、図・表やグラフ、実験など考える力を必要とする問題まで幅広く出題されています。近年は、機能形態学の範囲からの出題が多い傾向ですが、他の範囲からも満遍なく出題されますので、出題頻度が高い範囲を中心に、既出問題の正誤の暗記だけでなく周辺知識全体の理解を意識して復習しましょう!
機能形態学は「臓器・組織の構造や機能」を幅広く、微生物学は「細菌・ウイルスの特徴」を見直しましょう。生化学・分子生物学は「生体成分(脂質・アミノ酸、ヌクレオチドなど)の構造や代謝」、免疫学は「免疫担当細胞・抗体の構造や機能」が頻出ですので、全体像を意識した復習が大切です!また、薬の作用機序、病態形成、感染症は医療系科目をつなげて学修しましょう!
衛生
衛生で特に出題頻度が高い次の範囲は、必ず見直しをしましょう。「人口統計」はグラフ・表での出題が多いため、経年推移の理由を理解しましょう。「予防接種」はワクチンの種類と接種時期・回数を確認してください。「感染症」は母子感染、性感染症を見直しておきましょう。「ビタミン」「食品成分由来の発がん物質」「食品添加物」は構造式での出題が多いため、構造式を見て物質名が分かるようにしましょう。「異物代謝(I相、II相)」「発がん物質の代謝的活性化」は構造式での出題が多い範囲です。既出問題の完全理解を目指しましょう。「水環境(上水、下水)」では水道水質試験法の原理を簡潔に説明できるよう勉強しましょう。
薬理
薬理では、例年出題基準の中から満遍なく出題されています。更に106回国試では新出題基準が導入され、感覚器系や生殖器系に作用する薬などが追加されているため、学修範囲にムラを作らないようにしましょう。
また、近年の国試では、「構造式」を用いた問題が増加しており、構造式と作用機序をつなげて考える力が求められています。実践問題では、検査値や症状から患者の状態を考察する問題が中心となって出題されており、薬理だけでなく病態ともつなげて学修する必要があります。これらは、既出問題をベースとして、更に周辺知識までしっかりと理解することで対応できるようになりますので、継続して既出問題の内容理解を進めていきましょう。
薬剤
薬剤は、既出問題の内容を中心に出題されますが、グラフや図を用いた出題が多く、計算問題も理論問題を中心に5~7題程度の出題が見込まれます。また、実践問題では処方意図や変更に関係する内容が多く出題される傾向が強いため、加齢時や疾患時の薬物動態の変化を踏まえた治療方針を意識しましょう。
薬物動態学は「吸収・分布・代謝・排泄(ADME)、薬物速度論」について偏りなく出題されます。理論では「担体や遺伝的多型に関する内容」、実践では「TDMや投与計画」が頻出です。物理薬剤学は必須・理論を中心に図や表を読み取る出題が多いです。製剤学は必須・理論では「剤形や容器の規定」に関する内容、実践では「DDS(放出制御製剤、ターゲティング製剤)」が頻出です。
病態・薬物治療
本領域は、病態・薬物治療と情報・検定の二つの範囲より出題されます。病態・薬物治療では一部、過去に出題されていない疾患からの出題もありますが、多くは過去に出題されている疾患からの出題となります。そのため、まずは既出問題を確認することにより基本的な内容を確認しましょう。また、近年では「症候・臨床検査」に関する内容の出題も多いため、各疾患の勉強の際には「代表的な症状や検査の詳細」についても確認しましょう。
情報・検定は、既出問題の知識で対応できる部分もありますが、論文の判読などやや難易度の高いものも出題されますので、それらに関しては薬ゼミの模試などを通して、解法を理解しましょう。
法規・制度・倫理
近年、法規では、出題基準からバランスよく出題され、新傾向の内容も出題されています。また、106回国試からの出題基準では、倫理の範囲がプロフェッショナリズムとして拡大されています。国試の既出問題が少ないので青問や薬ゼミの模試を活用して学修しましょう。
なお、以下の項目(法規・制度)は出題頻度が高い範囲ですが、既出問題の内容を理解していることで得点できる設問が多いです。既出問題中心に確認しておきましょう。
[1]・[3]は19年末~20年9月にかけて改正法が段階的に施行されていますので、青本の追補も併せて参照してください。
追補はコチラ:https://www.yakuzemi.ac.jp/textbook_correction/
実務
実務は、実務単問だけでなく、実践問題も含めると、出題数の多い領域です。出題が多く見込まれる下記の範囲を目安に再確認し、実務で得点を伸ばしましょう。
【医薬品関連(副作用、相互作用等)】近年、用法用量に関する問題よりも出題が多く、副作用は初期症状まで確認が必要です。相互作用は実務、薬剤の必須から実践まで幅広く出題される重要範囲です!
【チーム医療(PCT、PUT等)】PCT(緩和ケアチーム)は必須から実践まで幅広く、高頻度で出題されています。PUT(褥瘡対策チーム)は実務、治療と2科目で出題の可能性があり、難易度の高くない問題が多いため、最終確認を怠らないようにしましょう!
【管理(麻薬の廃棄、血液製剤の管理等)】実務、法規と2科目に絡む範囲です。両科目のポイントをおさえておきましょう!
【計算(散剤、消毒薬、mEq等)】実務の計算は平均4~5問出題されます。既出問題を反復練習しましょう!